クリスマス会 (テーマ:プレゼント)
クリスマス会もそろそろクライマックスね。子供たちがいちばん楽しみにしているプレゼント交換の時間。先生のオルガンに合わせて、プレゼントの周りをフォークダンスのようにグルグルと回る子供たちの、期待に満ちた顔を見ていると思わずこっちまで微笑みがこぼれそうになる。
このリトミック教室のプレゼント交換は少し変わっていて、それぞれがプレゼントを持ち寄るのではなく、クジで当りを引いた人がプレゼント係として全員分のプレゼントを用意するという独特のシステム。私はまだ当ったことはないのだけれど、噂ではなかなか大変なのだとか。年度代わりで入れ替わりがあるとはいえ、常に二十人からの子供たちがいる計算だものね。
オルガンの演奏が止まり、わぁっと歓声を上げて子供たちがそれぞれの箱に飛びついた。あらあら、そんなに慌てなくてもちゃんと人数分用意してあるのよ。瞬く間にリボンが解かれ、包装紙がビリビリに破かれる。せっかくの綺麗なラッピングに誰も目を留めてくれないので、プレゼント係のダイキくんのママもちょっと苦笑い。
綺麗に頭髪の残った頭の皮を、早速ケンちゃんがカツラのようにかぶって遊び始めた。エッちゃんは左手首。棒がついていて砂場用の熊手になるわ。ハズレを引いちゃったノリくんは両手にそれぞれ左右の耳をつまみあげてガッカリしている。あらあら、ドロリと白濁した眼球をチュパチュパしゃぶってるのは食いしん坊のカナちゃんね。サナエちゃんは小さな腎臓のお手玉、セイジくんは小腸の縄跳び……それぞれに当たり外れはあるけれど、みんなもう夢中。あれ、リンちゃんのお母さんが慌ててプレゼントを箱に戻している。あぁ、睾丸付きのペニスが当たっちゃったんだ。あれって、当った子供よりお母さんの方が恥ずかしいのよねぇ。
あれ?まだ箱を抱えてモジモジしているのはミユキちゃんね。無理もないか、去年はタバコのヤニで黄色く染まった歯のフルセットなんて、ハズレ中の大ハズレを引き当てちゃったものね。大丈夫、今年はきっといいものが入っているわよ。さぁ、開けてみて。
おそるおそる開けたプレゼントの中身は心臓だった。箱からドクドクと脈打つピンク色の肉塊を取り出すと、周囲からわぁっと羨ましげな歓声が上がった。やったねミユキちゃん、大当たり!。
「かわいい……」
まだ温もりを残しているであろう心臓をギュッと抱きしめるミユキちゃんを、ダイキくんのママがちょっと寂しげな眼差しで眺めている。気持ちは分かるわ、だって他でもない、夫と呼んだ人の心臓(ハート)なんだものね……でも、これがここのルールなんだから仕方ないわよ。今日はみんなのためにありがとう。ごくろうさま……そして、Merry Christmas。
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