場外乱闘 (テーマ:スポーツ)

 聞けば、現場はなかなか凄惨な光景だったらしい。関西に拠点を置き、球界一熱狂的なファンを持つ某球団と、関東が拠点の「球界の盟主」と呼ばれる某球団。長年ライバル関係にあった両球団のファン同士が路上で激突、最後には機動隊まで投入され、ナイター終了後の球場周辺は一時騒然とした空気に包まれた。

 発端はペナントレース1位を争う両チームの試合中に散見された、審判のジャッジがホームチームである関東チームに対し明らかに有利に働いているのではという、関西チームファンの不満だった。当然試合は関東チームの勝利に終わったのだが、納得のいかない関西チームのファンはいつまでも球場周辺で彼らの愛する応援歌を歌い続けていたそうだ。

 だが関東チームのファンにすれば、そのしつこさが癇に障ったらしい。関西チームのファンに野次を飛ばす者が現れ始め、一部において口論が開始。口論はやがて底レベルな悪口合戦へと変わって行き、かつて国民的英雄とよばれた往年の名選手までが罵倒されるに至ってついに関東チームのファンが逆上、一般通行人の見守る中で騒ぎは集団での乱闘にまで発展した……ということらしい。暴徒と化すことで有名な欧州の熱狂的サッカーファン「フーリガン」もかくやといった次第である。

 数十分後、警察、そして機動隊の介入によって自体は沈静化された。流血して路上に倒れ、呻き声を上げていた両チームのファンが多数病院に搬送され、逃げ遅れた無傷な者は警察へと連行された。取調べによって明らかにされた騒動の経緯には呆れる他ないが、中でも馬鹿げているのは乱闘の中にユニフォームを着用した「頭部が虎の獣人」や「耳の長い赤ら顔の怪人」が混ざり、激しい戦いを繰り広げていたという複数の証言である。証言者の多くが多量のアルコールを摂取していたため警察もまともに取り合わなかったこの件に対し、両軍のマスコットキャラクターの着ぐるみとの相関関係を主張するものもいるが、それこそ子供じみた妄想としか思えないもので、今回の騒動のくだらなさを強調するものでしかあり得なかった。今回の件で、またもや一般のファンが肩身の狭い思いをしなければならないかと思うと同情を禁じえないが、同じ大人としてさらなるファンのモラル向上を期待したい。

 なお、負傷者の中に確認された大型の猛獣や齧歯類の歯型に酷似した傷については、どのような凶器が使用されたかを現在調査中である。


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