恐怖の心霊写真集 (テーマ:本)
最近の子供はそうでもないと聞くが、私が子供の頃には一度ならず、クラスでオカルトがブームになる時期というのがあった。そんな時には今で言う都市伝説や七不思議、UFOの話で持ちきりになったものだが、中でも最も盛り上がったのが心霊写真だった。きっといつ、どこででも撮れる可能性のある不思議な写真こそが、当時の私たちにとって最も身近に感じ取れる怪異だったのだろう。
ある日、同級生の香苗が学校に一冊の本を持ってきた。古本屋で偶然見つけたというそれは一般の人が撮った心霊写真を集めたもので、表紙の扇情的な煽り文句と全ての写真に付された超常現象研究家を名乗る著者の冷静なコメントに私たちは惹きつけられた。早速その日の放課後、誰もいなくなった教室で私と香苗、美幸と千佳の四人は机を囲み、頁をめくる度に現れる戦慄すべき写真に夢中になった。あれやこれやと、感想や素人分析を繰り広げながら私たちが本の半ば程まで読み進んだ時、開いたページに挟まっていた写真が机の上にハラリと舞い落ちた。写真の白い裏面を見つめる私たちの間に、長い沈黙が訪れる。
「……私、知らないよ。写真なんて、挟んだ覚えない」
香苗が震える声で言った。その緊張した表情が、彼女が真実を語っているのだということを雄弁に物語っている……ということは前の持ち主が挟んだものだろうか? それにしても心霊写真集に挟まった素性の知れない写真とはタイミングが良すぎる。何が写ってるのか興味はあるが、もし途轍もなく恐ろしいものが写っていたら……そう思うと手が出せず、私たちは顔を見合わせながら、誰かが勇気を奮い起こしてその写真を裏返すのを互いに待っていた。
やがて、思い切ってその写真を手に取ったのは千佳だった。裏返し、じっくりと眺め……ふっと、緊張していたその表情が緩んだ。
「大丈夫、心霊写真じゃなさそうだから」
言いながら千佳が机に置いた写真を私もじっくり見てみたが、確かに怪しいものは何も写っていないようだ。
「なーんだ、怖がって損しちゃったね」とホッとした空気が流れる中、美幸だけが厳しい表情を崩していなかった。
「ねぇ、これ……誰が撮ったの?」
その言葉に全員がハッとした。顔さえ写ってはいないが、よく見ると教室に集まる女の子たちの姿はまさしく今の私たちに他ならなかった。いったい誰が、いつの間に撮影したのか……ガランとした教室を見渡し、青褪めた顔を見合わせた私たちは次の瞬間、悲鳴を上げながら教室をダッシュで逃げ出した。しばらくして全員が落ち着いてから、四人でしっかり手をつないで教室に本を取りに戻ったのだが、どういうわけかあの写真は何処にも見当たらなかった。
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