再び待ち望んだ日1
sideユーゴ
どっこいしょ。日当たりのいい場所で、光を反射している親父とお袋の墓の前にしゃがみ込む。歳を取るとこんな動作にも掛け声がいるな。
えー。拝啓、国際基準万歳、頼むからそれ以外は全部撤廃してください派だったお父様と、タイムセールの時だけ今の俺より強かったと思わしきお母様。元気でやっているでしょうか。いや、お袋も含めてマジでタイムセールのオバハン達のパワーってヤバかったわ。ありゃあ戦場だったね。ちょっとトラウマになってるぞ。
ってそれはどうでもいいな。
いつアンドレアと樹が生まれてもおかしくないけど、いきなり外には連れて行けないので予め報告しておくな。
未練だと分かってるけど生きてたらなあ……クリスもコレットも抱き上げて欲しかった。
それにコレットとクリスもそうだけど、樹とアンドレアもお爺ちゃんお婆ちゃん言いながら甘えて引っ付きまくる気がする。ま! いつかは俺も孫に囲まれる立場だろうけどな! わはははは!
よし。そんじゃあ新しい孫のこと、楽しみにしとけよな。
◆
「生まれてすぐにお誕生日会はしないの?」
「じゃあ来年する」
リビングに戻ると家族全員がいたが、クリスとコレットは生まれてすぐの赤ちゃんはそのまま誕生日会に参加すると思っていたらしい。前も婆さんに、樹とアンドレアがケーキを食べれるか聞いたようで、とても微笑ましかった。
「にょほほほ。そうじゃの。来年の誕生日会には、ついにお兄ちゃんとお姉ちゃんとしてお誕生日おめでとうと言う立場になるのう」
「うん!」
「超楽しみ」
セラの言葉にクリスとコレットが喜ぶ。
今までソフィアちゃんに誕生日おめでとうと言っていた子供達だが、次はお兄ちゃんとお姉ちゃんとして弟と妹の誕生日を祝う立場になる。
「抱っこの仕方も教えてあげないとな」
「どうやったらいいの?」
「ママに実演してもらう。よっこいしょ」
「あら。ふふ」
微笑んでいた凜が子供達に赤ちゃんの抱き上げ方について話すと、最近のコレットにしては珍しく、ソファに座っていたジネットの膝に座って抱っこを要求した。
「うん?」
「どうされましたおひい様?」
突然セラが首を傾げて、アリーが心配そうにしている。はて、セラの体を見たところ特に異常はないが……!? 一気に体の様子が!?
「陣痛きたかもしれん」
「え!?」
家族全員が驚いているが、中でもアリーは普段からは想像もできない程大声を出して驚愕している。
「私も!?」
しかも驚いた拍子に凜も陣痛が始まった!
「ベッドに行こう!」
慌てずゆっくりセラと凜をベッドまで運ぶ。
「セラと凜をお願い! 婆さん連れてくる!」
一刻も早く婆さんを連れてこないと!
◆
「グルルル」
「グウ」
「暫く頼むぞポチ! タマ!」
婆さんを背負い直ぐに家に戻ってくると、家の中にはクリスとコレットが生まれた日と同じように、精霊体として炎の狼になっているポチと、氷の虎になっているタマがいた。これから手が離せなくなるから、二人に家の警備を任せて俺は部屋に足を踏み入れる。
「セラ! 凛! 大丈、ぶ?」
部屋にはアリーとジネット、ルーがいた。リリアーナはリビングで子供達と一緒にいる。
そしてベッドには。
「ドロテア殿、お世話になるのじゃ」
「お願いします」
かなり平気そうなセラと凜がいた。
あれ? リリアーナとジネットの時はかなり大変そうだったんだけど……そう言えば婆さんが……。
「焦って忘れてただろう。吸血鬼と鬼は戦闘種族だからお産は大抵軽いのさ」
言ってたな。なんか神に若干含みがある感じで。
「ふと思ったんじゃが、アンドレアはいきなり立ち上がったりして」
「いや、それはないと思いますが」
セラと凜が全く困った様子もなく話してる。でも流石にいきなりアンドレアが立つことはないだろう。だよな婆さん?
「いくら吸血鬼が血によって成り立って、アンドレアが坊やの血を引いてようとそこまでじゃないよ。多分ね」
「なんで多分なんだよ」
「多分は多分さ」
いや、そこは断言できるだろうに。
「ちょっとクリスとコレットに顔見せに行ってあげな。ドタバタしてるから不安になってるだろう。そのくらいの余裕はある」
「そうか。セラ、凜。すぐ戻るから」
「うむ。随分不安そうじゃったからの」
「分かりました」
婆さんの言う通り、コレットとクリスの様子を確認しに行こう。俺だって焦ってるくらいなんだから、子供達はさぞかし不安だろう。
「ママ、セラ姉とリン姉は大丈夫なの?」
「ええ。きっと大丈夫よ」
「コーとクーの時もこんな感じだった?」
「そうね。皆そうなの」
リビングへ向かうと、不安そうなクリスとコレットの声が聞こえ、それにリリアーナがゆっくり答えている。
「戻ったよ」
「パパ! リン姉とセラ姉は!?」
「大丈夫?」
「大丈夫。多分、クリスとコレットが思ってるよりずっと大丈夫だから」
「本当?」
「本当の本当?」
「本当の本当」
リビングに入るなり子供達が駆け寄ってきた。セラと凜が急に寝室に行ったから、様子が気になった仕方ないらしい。だが、実際本当に大丈夫そうだから、自信をもって答えることができる。
「もうすぐだから、樹とアンドレアにどんな風に挨拶するか考えててね」
「考えてる!」
「ばっちり」
「おっと。準備万端とは流石はお兄ちゃんとお姉ちゃんだ。それじゃあもう少しリリアーナと待っててね。リリアーナお願いね」
「うん」
「りょ」
「はい」
よし一応子供達は落ち着いたから、後は待つだけだ。
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