の日3
「ちちうえだっこ」
「なのじゃ!」
「もちろんだよ樹! アン!」
リビングのソファで座っていると、凜との息子である樹と、セラとの娘であるアンドレアが抱っこを求めて来た。この子たちはクリスとコレットが子供の時より甘えん坊で、よく抱っこを求めて来る。そんな我が子二人を抱き上げると、子供特有の暖かさを腕に感じた。
「ぎゅう」
「あ、こらイツキずるいのじゃ! わしもぎゅうするのじゃ!」
すると樹が俺の首に手をまわし、それをアンが羨ましがって同じようにしてきた。パパ超幸せ。
「じゃあ最後に私も抱っこ」
「さあおいでコレット! すぐおいで!」
幸せを堪能していると、向かいのソファに座りながらタマを撫でていたコレットがそう言った! もう一人前の淑女だから抱っこはいいやと言っていたコレットが!
「それは嘘だ」
「のおおおおおおおおおお!」
ぐすんぐすん。娘に弄ばれてしまった……床に膝をついて項垂れてしまう。
が! パパがこんなことで諦めると思ったら大違いだよ!
「このまま抱っこだああああ!」
「ごーごーちちうえ」
「コレットあねうえもだっこなのじゃ!」
「そいつは勘弁」
「にゃあ」
(撤退)
腕に抱いている樹とアンからの応援もありコレットに突撃すると、コレットはソファの背に手を置いて支えとし、ひらりと宙返りすると、そのままタマと一緒にリビングから逃げ出してしまった。
「ぐすん」
「ちちうえ、あにうえがいる」
「そうじゃクリスあにうえなら!」
「そうだね!」
コレットは逃げてしまったが、子供達の言う通りクリスなら抱っこされてくれるに違いない! クリスの気配は庭でポチと一緒にいる!
「クリスの所へ出発!」
「おー」
「いくのじゃ!」
二人を抱き上げたまま庭に出ると、確かにクリスはポチと一緒にいた。いたのだが……。
「すうすう……」
「ふがふが……」
「お昼寝中だったかあ」
「ざんねんむねん」
「むむむむ」
クリスはポチをお腹に乗せて一緒に寝息を立てている。外はいい感じの暖かさと風だったから、ついつい眠気に負けてしまったのだろう。風邪をひくような感じでもないしそっとしておこう。しかしポチは精霊だから寝ない筈なのに……。
「じゃあママ達にしようか!」
「うんうん」
「それなのじゃ!」
「じゃあ行くぞー!」
「おー」
「なのじゃ!」
だがうちにはまだまだ抱っこする相手がいる!
「クリスー? あらあら、イツキ君もアンちゃんも抱っこされてるのね」
リリアーナがクリスを探しに外にやって来たが、まさにベストタイミング!
「リリアーナははうえはっけん」
「ちちうえごーなのじゃ!」
「了解!」
「あらあらまあまあまあうふふ」
樹とアンの言う通り、二人を腕に抱きあげたまま、リリアーナをぎゅっと抱きしめる。それと同時に、子供達も何とかリリアーナに手を伸ばして引っ付いている。これにはリリアーナもニッコリ笑顔で抱き返し、自分の頬を子供達の頬に擦り付けていた。
「それじゃあつぎなのじゃ!」
「ごーごー」
「了解!」
「行ってらっしゃーい」
手を振るリリアーナに見送られ、次のターゲットを見つけに発進する。
◆
「ジネットははうえはっけん」
「きゃっ。もう、皆甘えん坊ね」
ジネットには俺も含めて甘えん坊と評されてしまった。だが否定はしない! 俺だって甘えたい時があるのだ!
◆
「ルーあねうえはっけんなのじゃ!」
「わーい皆に抱きしめられちゃった! でもルーの事も母上って呼んでいいですよ!」
「あねうえはあねうえ」
「そうなのじゃ!」
「うーん複雑な気持ちです!」
ルーも抱き付かれて喜んでくれたが、樹とアンの二人が、自分の事を皆と同じように母上ではなく、自分だけ姉上と呼ばれている事を気にしているようだ。この前柱に身長を記してたからなあ……。
◆
「アレクシアははうえはっけんなのじゃ!」
「はっけん」
キッチンにいたアリーのところに向かう。コレットとクリスの時と同じく、樹とアンの二人はそりゃもうアリーの世話になったから、アリーに対して母親同然に懐いている。
「アンお嬢様、イツキ坊ちゃま。そろそろおやつはいかがですか?」
「いただきます」
「もちろんたべるのじゃ!」
「でもその前にアリーをぎゅう!」
「きゃっ!?」
おやつに釣られて本来の目的を忘れてしまった子供達だが、俺はそのままアリーをぎゅっと抱きしめる。
「みずくさりゅうひっつきむしのじゅつ」
「ぎゅうなのじゃ!」
「ユーゴ様、坊ちゃま、お嬢様……!」
子供達もアリーに抱き付くと、彼女は感動したのかうっすらと涙を浮かべていた。
◆
「ははうえがまたアンのまねをしているのじゃ!」
「にょほほほ! 元々のわしはこっちなんじゃよ」
大人ではなく、元の姿のセラを見つけたが、アンがまた自分の姿を真似ていると叫んだ。
実はセラはアンがまだ乳幼児の頃、大人の姿でお乳を飲ませたりおしめを替えていたので、アンにはどうやら、母親が自分の真似をして小さくなっていると捉えているらしい。
だがそれはそうと
「ぎゅう!」
「ぎゅう」
「むう! ぎゅうなのじゃ!」
「にょほほほほ!」
とにかくセラも抱きしめるが、アンは渋々と言った感じだ。だがアンがセラの事を大好きな事に変わりない。なにせ普段からセラの手が空いたら抱っこをせがんでいるのだから。
◆
「ははうえをほそく」
「リンははうえみっけなのじゃ!」
「樹とセラ、勇吾様に遊んでもらっているのか」
「ちょっとだけ違うんだ! っという訳でぎゅう!」
「ははうえぎゅう」
「ぎゅうなのじゃ!」
「はわわ!?」
子供達と遊んでいるというか、俺もしたくてやってるんだよね。そして凜に皆で抱き付くと、彼女は照れながら焦ったような声を上げる。うーん可愛らしい反応。
「では退散!」
「おー」
「てったいなのじゃ!」
「い、一体何が……」
顔を赤くした凜から即座に退却する。これが辻斬りならぬ辻ぎゅう。である。
「満足したかい?」
「あねうえとあにうえがいるのじゃ!」
「コンプリートする」
「そうだね!」
皆に抱き付いて満足したかと思ったが、言われてみればまだコレットとクリスにしていなかった。そろそろクリスも起きたみたいだし早速向かわねば!
「ふわあ」
そんな事を思っていると、丁度クリスがこっちにあくびをしながらやって来た!
「とんでひにいるなんとやら」
「ちちうえごーなのじゃ!」
「ラジャー!」
「えっちょっ!?」
「クリス待て待てー!」
「なんか子供の時と同じ事言われてる気がする!?」
クリスに迫ると逃げてしまった。そのためついクリスが子供の時の様なセリフで追いかけてしまう。
「ちょっとぎゅってするだけだから!」
「恥ずかしいからいいよ!?」
「あにうえにがさんのじゃ!」
「ちょっとだけですあにうえ」
「コレットも発見!」
「ぎょあ。クリスよろしく」
「ちょっとコレット!?」
クリスの逃げた先にコレットもいた。コレットはクリスの逃げ道を塞ぐように前を走る。しかーし! パパパワー全開のパパを舐めて貰っては困る! 必ず捕まえるからね!
◆
◆
◆
◆
あれ? 抱っこしてた樹とアンは?
「パパ」
「父上!」
んんん? コレット、アン、随分大人びたね。でもなんか気のせいか、動悸と冷や汗が止まらないんだけど……はは、娘を前にしてそんな事は無いか! なにせ子供がいるパパは最強だからね!
「結婚するんでよろ」
「お嫁に行くのじゃ!」
ああああああああああああああああああああああああああああああああ!?
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