妻の日常 ルー編

はっ!? 完全に寝過ごした! アレクシアさんどころか、ご主人様とお姉ちゃん、リリアーナお姉ちゃんまでいない!


あ、今日は凜ちゃんの手を握って寝ていたようだ。いやあ、この前はなぜかお姉ちゃんの足首を掴んでたから、ある意味一安心だ。幾ら寝ていても足首を掴むのはない。久しぶりに恥ずかしいという感情になってしまったくらいだ。


「すぴぴぴぴ」


「すうすう」


セラちゃんと凜ちゃんの服に異常なし。多分、先に起きた誰かが服を直したのだろう。セラちゃんはお腹を出して寝るし、凜ちゃんに至っては脱ぎ癖という凄い癖を持っている。いつも服を直している私とアレクシアさんに感謝してもらいたい。もし自分がそんな癖を持っていると知ったら、凜ちゃんは顔をトマトの様にして布団の中に閉じこもるだろう。


さて、早くキッチンに行かないと。


「ぷらーん」


「全くこの子は……」


「お姉ちゃん、コレットちゃんおはよう!」


「おはようルー」


「おはー」


部屋を出て浴室に向かうと、ぐったりしたコレットちゃんと、そんなコレットちゃんを抱えているお姉ちゃんの姿があった。私と一緒で、コレットちゃんは朝が弱いからだと思ったが、よく見ると髪が濡れている。そう言えば昨日、髪は明日から頑張ると言っていたからそのせいだろう。


「アレクシアさんもうキッチンにいた?」


「見てないからその筈だ。多分リリアーナもいる」


「あちゃ」


大分寝坊してしまったらしい。急いでキッチンへ向かわないと。アレクシアさんに侍女のプライドがあるように、私もメイドとしてのプライドがある。


「ごめんなさい遅れちゃいました!」


「おはようございますルー様」


「おはようルーちゃん」


「お野菜切りますね!」


キッチンには既にアレクシアさんと、リリアーナお姉ちゃんがいた。出来ればメイドとして仕事をするため起こしてほしいのだけれど、アレクシアさんは、侍女としての仕事は全部自分で行うという考え方だし、リリアーナお姉ちゃんは、寝ている私をそのまま寝かしてあげようという考え方のようで、たまに寝坊する私は、朝食を作るのに遅れる事がある。でもよかった、まだ仕事は残っているみたいだ。


「おはようルー!」


「おはよう!」


「おはようございますご主人様、クリスくん!」


「クーおっはー」


「コーおっはー」


野菜を切っていると、お風呂上がりらしいご主人様とクリスくんがやって来た。そしてクリスくんは、癖のあるコレットちゃんの挨拶にはノリよく答えている。この2人は本当に仲がいい。やはり家族はみんな仲良くないと。


「あなた、コレットをお願いします」


「勿論勿論!」


「ぷらーん」


「コー、もうかみかわいてるよ」


「クーはわかってない。それはそれこれはこれ。もうきょうはぐったり。なにもできない」


「じゃあコーのおやつもらうね」


「だめ。それはそれこれはこれ」


まだぐったりしているコレットちゃんを渡したお姉ちゃんも台所に立つ。昔のお姉ちゃんに、短剣よりも台所で包丁を持つ方が多いだなんて言っても信じないだろう。それに本当に笑顔が増えた。これもご主人様のお陰だなあ。父も母もいない、お姉ちゃんと私だけの時に比べたらまるで夢のようだ。



「ユーゴ様もルーも、私を起こして欲しかった」


「はっはっは。気持ちよさそうに寝てたからね。それに寝る子は育つって言うし」


「もう、それは子供の話です。まだ産まれてもいません」


ご主人様と私、それと今にも頬を膨らましそうな大親友凜ちゃんとで洗濯物を干している。


どうやら凜ちゃんは、ウチ一番のお寝坊さんであるセラちゃんと一緒に起きてしまったのが恥ずかしいらしい。


「凜ちゃん気分悪くなったりしてないですか?」


「大丈夫だ心配するな」


それにしても凜ちゃんが妊娠してよかったよかった。前から赤ちゃんが欲しかった凜ちゃんは、長く子供が出来ない事を気に病んでいた。それは同時に、私が家族の中で唯一心配していた事でもあり、それが解決してほっとしている。後は凜ちゃんの体調に気を付けるだけだ。セラちゃんの方は……何と言うか特に心配しなくてもスポンと産んでしまいそうだ。良くも悪くも普段の行いのせいかもしれない。


後はアレクシアさんだけだけど、そのうち自然に出来たらいいって考えだから、私も無理に勧めていない。でもアレクシアさんの赤ちゃんも可愛いだろうなあ。出来ればそのうちじゃなくて早く会いたいなあ。


む!? これはお姉ちゃんの下着! 神様は不公平だ。出来れば私も、もう少しだけ身長と胸が欲しかった。まあ、ご主人様がルーはルーでいいじゃないかって言ってくれたから、昔ほど気にしてはいないけれど。でも、もう少し、ほんのちょっとだけでいいから……。


むむ!? これはリリアーナお姉ちゃんの下着!? ひょっとして神に仕えていたから、リリアーナお姉ちゃんはこれほどの下着が必要な体になったのでは!?


むむむ!? これはセラちゃんのだ! 大人の姿になれるなんて反則だよセラちゃん! 会った最初は、私達ずっとこの体形の同士だと思っていたのに!


ごほん。ちょっと興奮してしまった。とにかく今日も家族が一緒で幸せだ!

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