妻の日常 リリアーナ編
だんなさまぁ
クリスもおおきくなりましたし
そろそろあかちゃん
「……こら!」
はえ?
「寝息を立てて場合か! 起きろ!」
この声はジネットさん?
「はれ? ジネットさんおはようございます」
目が覚めると、なぜかジネットさんに体を引っ張られていた。一体どうしたんだろう?
「言っとる場合か! 今すぐその胸を退けろ!」
「え? あらあらまあまあ、今退きますね旦那様」
そう言われて、ようやくいつもの癖で、旦那様の顔に抱き着いていた事に気が付く。
「ぷはっ。おはようジネット、リリアーナ」
「おはようございます旦那様あうっ」
「何を暢気にしとるんだ! あなた大丈夫ですか?」
「平気平気。なんなら2,3日息しなくても大丈夫だし」
胸を旦那様の頭から退けると、ジネットさんにチョップされてしまった。私が悪かったですけど痛いです……。
「きゃっ!?」
「あらあら」
「ちょっと奥さん成分吸収中ー」
突然旦那様が、私とジネットさんを引っ張って、その両腕で抱きしめてきた。甘えん坊なところもこの人の可愛らしいところ。うふふ。ついつい旦那様の頭を撫でてしまった。
「ああー、ダメ人間になりそうー」
「それならずっとお世話してあげますよ?」
「うっ、それは夫としてちょっと」
そしてちょっぴり見栄っ張りな所も。うふふ。
◆
「クリスー、朝ですよー」
「すうすう」
部屋をジネットさんと一緒に出て、息子のクリスの部屋を覗き込む。旦那様はクリスが一人で寝るのに反対していたけれど、私も本当は反対したかった。でも、この子が学校に通って寮で生活するのなら、今から慣れておいた方がいいと思い、泣く泣くクリスが一人で寝ると言ったことに頷いた。
その息子は白い頬を赤く染めながら、気持ちよさそうに寝息を立てて眠っている。起こすのは忍びないけれど、ちゃんとした生活リズムを身に着けさせないと。
「起きてクリス」
「んみゅ? ママ?」
「ママですよー。おはようクリス」
「ふぁー。おはようママ」
声を掛けると、クリスが眠たそうに眼をこすりながら起床した。あくびが可愛らしい。
「さあお顔を洗いに行きましょうか」
「はーい」
「待ちなさいコレット! 髪を洗うのよ!」
「あしたからがんばる」
「昨日もそう言ったでしょうが!」
クリスと洗面所に向かおうとすると、部屋の外からジネットさんの叫びが聞こえてきた。どうやらコレットちゃんが、また髪を洗うのが嫌で逃げているらしい。これがジネットさんとの、コレットちゃんなりのスキンシップなのか悩むところだが、多分本当に嫌で逃げているのだろう。
「コーまたにげてるの?」
「うふふ、そうみたいね」
「コーはかみのけぬれるのきらいだから。べたってするから」
「そうなの?」
「うん」
厳密には双子でないけれど、クリスとコレットちゃんには不思議な繋がりがある。それによると、コレットちゃんは髪が濡れて、べたッと張り付くのがいやらしい。気まぐれな所も合わせてなんだか猫みたい。
「うう……コレットに弄ばれてしまった……」
「パパおはよう!」
「おはようクリス! 今日もいい天気だよ!」
部屋から出ると、何故か蹲っている旦那様がいた。でも大体想像がつく。コレットちゃんに、上手く丸め込まれてしまったのだろう。けれどクリスと私の顔を見えると、私の大好きな笑顔になった。優しい優しい旦那様の笑顔。
「パパおふろいこー!」
「さあ行こうすぐ行こう! へっへっへ!」
クリスは旦那様と、朝のお風呂に入るつもりのようだ。コレットちゃんもお風呂自体は嫌っていないが、クリスは旦那様に似てお風呂に入るのが好きだ。でも最近は寂しい事に、恥ずかしがって私と入る事はしなくなった。
「それじゃあ私は朝食を準備しておきますね」
「ありがとうリリアーナ。いつもありがとうね」
「うふふ。湯冷めしないようにねクリス」
「はーい!」
「しゅっぱーつ!」
そう言うと旦那様はクリスを抱っこして、最近作った男性用の浴室まで、スキップしながら向かっていった。
今度私もやって貰おう。あ、そう言えば昨日神殿からの帰り道にして貰っていた。でも毎日でもいいわよね?
◆
「季節のお野菜が並び始めましたね」
「そうだね。帰りに買っていこう」
「はい」
教会でのお勤めは今も続いており、今も旦那様と手を繋いで向かっている。最初は驚いていた街の方達ももう慣れたもので、相変わらず仲がいいと声を掛けて来る人もいるくらいだ。私も街に溶け込めたという事だろう。
尤も未だに街の外から来た人には声を掛けられるが、その度に旦那様はそっと間に入ってくれる。しかしそういった人達は、どうしてこんな男がと旦那様を見るが、私に言わせるとこんなに優しい人は他に居ないのだ。
「今日も普段通りに終わりそう?」
「はい多分その筈です」
「じゃあいつも通り迎えに行くね」
「はい。うふふ」
そして今までずっと、教会への行きと帰り道は旦那様と一緒で、変わる事のない習慣だが毎日が嬉しい。
「それじゃあお勤め頑張ってね」
「はい」
旦那様、私、毎日が幸せですよ。
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