お部屋

「お名前お名前お名前」


「男の子だろうか女の子だろうか……いや、双子で両方という事も……」


「スーパーカッコよくて可愛らしい名前はなんぞないものか。つまりわしの名前の様な」


最近の悩みはなんと言っても凛とセラの子供の名前だ。クリスとコレットの時も散々悩んだが、子供の一生ものと考えると手を抜くことは出来ない。今日も今日とて彼女達と一緒に悩んでいる。


「あかちゃんうまれた?」


「まだー?」


そんな時、クリスとコレットがリビングにやって来て、自分達の弟か妹は生まれたかと聞いて来る。どうやらママ達とのお勉強の時間が一息ついたようだ。だがまだまだお腹も大きくなっていないのに、妊婦を殆ど見たことがない子供達は、いつ頃赤ちゃんが生まれるか分かっていない様だ。


「にょほほほ。そうじゃのう、クリスとコレットがあと300回朝ごはんを食べたら生まれるかのう」


「じゃあたべてくる!」


「ママーあさごはんー」


「ぬおお、ちょっと待つのじゃー!?」


それなら今すぐ食べてくると走り去ろうとする子供達をセラが慌てて止めている。


「はやくあいたいのにー」


「そうそう」


だがお兄ちゃんとお姉ちゃんとしては、一刻も早く弟妹に会いたいのだろう。ぶーぶー言いながら凛とセラに近づいて来る。


「じゃあおはなしする」


「クーもする!」


「ふふふふ。さあおいで」


「よしよし。わしの分まで頼むのじゃ」


そう言うとコレットとクリスは、セラと凜のお腹に顔をくっ付けている。


「ねーねだよ」


「にーにですよー」


まだ子供達がお腹にいた時のポチとタマ、それと自分の事を思い出してしまった。


ちーん!


⦅呼んだ!?⦆


⦅招集⦆


そう思っているとやって来るポチとタマ。呼んでないと思うけど呼んだかもしれない。


「ポチもおはなし!」


「タマも」


⦅うん! ポチですよー!⦆


⦅タマです⦆


子供達に呼びかけられたタマとポチが、それこそ昔の様にお腹の赤ちゃんに呼びかけている。あ、また目頭と鼻が。


ちーん!


もういっちょ


「あ、パパ、クーおへやがほしい!」


「コーも」


ぶーっ!

鼻水垂れちゃった!? じゃねえ!? ど、ど、どう言う事なんだい我が子達!? そ、そうか! 一応部屋だけでも用意して欲しいって事なんだね!?


「もうそんな歳になったか。思えば私もこのくらいだったな」


「うむ。わしも大人のレディーとして当然一人で寝ておったのじゃ。勿論じゃぞ」


ああああああやめてええええええ! 違うって言ってくれええええ!


「コーはもうひとりでおねんねできる」


「クーも!」


ああああああああ!


「あなた……」


「あらあら旦那様」


「ジネット、リリアーナ助けてええええええええ! コレットとクリスがあああああああああ!」


一人でおねんねするってえ!


「子供達もそろそろ一人寝の歳ですから」


「私も寂しいですけど」


「余所は余所、ウチはウチだと思います!」


大陸の一人寝の平均はこのくらいの歳で間違いないけど、ちょっと平均から外れたところがあってもいいんじゃないかな!?

あ、ジネットもリリアーナも困った人って見つめてくる!


婆さん助けて! ってソフィアちゃんを連れてソフィアちゃんのお母さんのところだ! 肝心な時に居やがらねえ! ウチのお婆ちゃんでもあるんだろうが!


「それに学園で寮生活するなら今からの方が」


「そうですね。クリスもコレットちゃんも寂しくない?」


「だいじょうぶ!」


「もんだいなし」


「こひゅーこひゅー」


ダメだ息が上手く出来ない。心臓も止まりそうだ。うぐぐぐぐ。だがしかし! いや! 子供達の自立心の表れ! ここはな、涙を呑んで……!


「寂しくなったらいつでも戻ってくるんだよおおおお!」


「はーい!」


「さっそくおへやをかいぞう」


親として子供の自立心は嬉しいけど嬉しくないいい!


こ、こっち来て初めて具合が悪いかもしれん。それこそ一人で寝込みそうだ。


「じゃあパパ、おへやにくりすにーにってかいて。あかちゃんまちがっちゃだめだから」


「わたしはこれっとねーね」


「へっへっへ。しょうがないなあ。でもお兄ちゃんとお姉ちゃんのお名前書いとかないと、弟と妹がそのうち間違えちゃうもんね」


流石はお兄ちゃんとお姉ちゃんだ。下の子達のことまでしっかり考えているなんてパパは嬉しいよ!


致し方なし。こうなればちゃんと部屋を準備してあげねば。


「色々買いに行こうか」


「そうですねあなた」


「お勉強するための机も必要ですね」


勉強机か。ガキの頃えらく立派なのを買って貰った記憶がある。俺がそんなタイプじゃなかったのはお袋も親父も分かってただろうが、それもまた愛情だったんだろう。だが売ってるかな? 魔法で技術は歪に成長しているが、子供の教育だなんて考えや文化は極一部の階層だけだ。それを考えるとリリアーナの言っている机も普通の机の事かもしれん。となると無いなら作るか!


「じゃあ行こう」


「はい」


「クリスー、コレットちゃーん。お買い物に行きましょー」


「おかし!」


「おかし」


「ははは」


思わず笑ってしまった。成長しててもまだまだ子供だな我が子達よ。という訳で寂しくなったらいつでも言うんだよ。


パパはいつも見守ってるからね!

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