ちょっとしたサプライズ8

sideユーゴ


「パパ!」


「パパ!」


「はいパパですよ!」


自分で作った特製の2人用ベビーベッドから、コレットとクリスの声が聞こえて飛び起きる。早寝早起きとは、健康的でいいとパパは思います。まだ皆寝てるから、ちょっと早すぎる様な気もするけど。


「ん……。あなた?」


「あらあら」


「ジネット、リリアーナ。そのまま寝てていいよ」


「いえ。どうしたのコレット、クリス」


「ママですよー」


皆を起こさないようにベッドから抜け出したが、気配に敏感なジネットが子供達の声に、リリアーナは母性で呼びかけを察知したのだろう。目を覚ましてベビーベッドに近づく。


「クー!クー!」


「コー!」


「あら。会いたいのね」


「うふふ。でもまだ寝てると思うわよ」


は!? そうだ!未来のコレットとクリスが泊ってるんだった!ベビーベッドから子供達を抱き上げ、未来の我が子達の気配を探るが……やっぱ寝てるな。急に過去にタイムスリップしたんだ。疲れて寝ているのも無理はない。それにまだ時間も早いし、こんな時間に起きてるなんて…。居た、婆さん起きてやがる。年寄りの朝は早いと聞くが、例外じゃないらしい。


「ちょっと早いけど、朝ごはんの準備をしようか」


「そうですね」


「よしじゃあ、お着換えしようか」


「やあ!」


「やだー!」


もう一回寝るという雰囲気ではない、興奮している子供達を床に降ろして、着替えをタンスから取り出そうとすると、案の定コレットとクリスは逃げだしてしまった。しかし、ジャンプしてドアノブを掴むとは、我が子だけあってとんでもない運動能力だ。


「ちょっと子供達と遊んでくるね」


「はい」


「朝食は私達で準備しておきますね」


「お願いね」


さて……


「待て待てー!」


「やだー!えへへ!」


「やだやだー!えっへ!」


コレットとクリスから、一定の距離を維持したまま追いかける。最近子供達はイヤイヤ期を脱しつつあり、今もどちらかというと朝一番に遊んで貰いたくて逃げ回っている様だ。しかも積んでいるエンジンの馬力が桁違いな上、エネルギーが尽きるまで止まる事がない暴走車両だ。こうなると暫く走らせてあげないと落ち着かなくなる。


「捕まえちゃうぞー!」


「やだあ!」


「えっへ!」


屋敷中をドタドタと走り回っているが、一定距離の音を外に漏らさない遺物を使っているため、迷惑も掛からないはずだ。ってあら?


「ばあ」


「コー!?」


「コーだ!」


「おはよう」


⦅おはようございます⦆


コレットが寝ている部屋の前を通る直前、いきなり扉が開かれて、タマを首に巻き付けているコレットが通せんぼしたのだ。


「おはようコレット、タマ。音が聞こえた?」


壊れたかな……魔の国ではちゃんと機能してたのに。


「ううん。気配が走り回ってたから」


「おお!? 凄いぞコレット!」


「それほどでも」


流石はジネットの娘と言うか。どうやら走り回っている気配に気が付いたらしい。俺も普段は気配を消してないしな。しかし、起こしたなら悪い事をした。


「ごめんね。起こしちゃったか」


「だっこ!」


「クーだっこ!」


⦅私も⦆


「家にいるときは、いつも誰か走り回ってこんなもんだから大丈夫。それ高い高い」


どうやら未来の我が家はずっとこんな感じらしい。つまり子沢山!へっへっへっへ。


「えへへ!」


「えっへ!」


⦅恐悦⦆


内心で喜んでいると、コレットに高い高いされている子供達も喜んでいる。

さて、結構時間も経ったし汗もかいている。お着換えだな。



「パーパ」


「なーに?」


「パーパ」


「なーに?」


「パパパパパパパ」


「ななななにににに」


着替えた子供達を抱き上げて、言葉遊びしながらキッチンへ向かう。


「あらコレットちゃん。お料理上手ねー」


「えっへん」


辿り着くと、そこにはリリアーナとジネットに挟まれて、料理の仕上げをしているコレットの姿があった。どうやらリリアーナに褒められるほど料理が上手い様だ。いいおよあっ!?


「素敵なお嫁さんになれるわね」


「あっ、リリアーナママ」


「え?」


ああああああああああああああああああああ!!!!???


「あなた!? 蹲ってどうされました!?」


「パパが膝から崩れ落ちてああなる」


「あらあらまあまあ」


コレットがお嫁に行っちゃうううううううう!!!


「あなた……」


「つんつん」


「つんつん」


正夢の日の悪夢を思い出して蹲ってしまい、リリアーナとジネットに呆れられてしまった上、幼い我が子につんつんされるも、心の中は絶望でいっぱいだ。動悸に目眩までしてくる。心臓まで止まりそうだ。そういやこの前止まったな。いやあ、見ただけで心臓止める能力でも恐ろしいのに、婆さんに聞いたら、多分死因を押し付けるとかなんとか。ヤバすぎだろ。ああ、それであの時心臓が止まったのか。だって今にも止まりそうだもの。でも動かせるんだなこれが。そういや朝ごはんなんだろう。いい匂いがする。


「ふわ。おはようー。あれ? パパどうしたの?」


⦅ご主人倒れてる!⦆


「いつもの発作と現実逃避」


「ああ……」


はっ!? この声は!?


「クリス!ポチ!おはよう!」


「立ち直りも早い」


立ち直り? なんかあったのか?


「あらあらクリス。早いのね」


「家にいるときは弟妹が朝から走り回って、いつもこれくらいに起きるからね」


「あらあらまあまあ。まあまあ」


やっぱり子沢山なんだ!リリアーナもニッコリ顔だ。


「パパ。お皿よろしく」


「任せてコレット!」


「クーもする!」


「コーも!」


⦅ボクも!⦆


⦅私も⦆


その可愛らしい肉球で、どうやって食器を並べるのだ警備隊長達よ……。

しかし何か忘れてるような……。まあいっか!

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