ちょっとしたサプライズ6

sideコレット


「うむ。私の服なら少し大きいだけだな」


「ですねー」


「ありがとうリンお姉ちゃん」


「なに気にするな」


お風呂に入る前に、着替えが無い事に気が付いて、それならばとルーお姉ちゃんとリンお姉ちゃんが、私物の服を見繕ってくれたが、やっぱりルーお姉ちゃんの服は私には少し小さかったので、リンお姉ちゃんが服を貸してくれた。


よく分からない遺物に巻き込まれて、過去の自分に会ったり家族に会ったりと、トンデモ体験をしたが、自分の家族は今も昔も変わらないらしい。急に表れた私達を温かく迎えてくれた。ママは私の世話を焼きたがり、パパもとにかく私達を構おうとするのは全く変わらない。


「クリス。女性陣が風呂に入ったら、男同士で入ろう」


「一人で入るよ」


「え!?」


「寮も部屋にお風呂ついてるから、そっちの方が慣れてるし」


「ちょ!? でも一緒のベッドでは寝るんだよね!?」


「え!?」


今もパパは、男同士ということで、クリスと一緒にお風呂に入ろうと考えていたみたいだけど、照れ屋さんなクリスに拒否されていた。ついでに一緒に寝るのものだ。


「コレット!?」


「私はママと寝るから」


「え!?」


おっと、こっちに飛び火してきたが、もうママと一緒に寝る事が決まってる。


「ジネット!? リリアーナ!? 子供達が反抗期に!?」


「あなた、子供達も年頃ですから」


「あらあらうふふ」


「そ、そんな……」


目に見えて狼狽しているパパが、ママ達に助けを求めているが、残念ながらお年頃なので提案は却下だ。でも暫く家に帰ってなかったので、過去ではあるがママと一緒には寝よう。別に寂しかったわけでは無いが。


「パパ!クーと!」


「コーと!」


「ううう……クリスううう、コレットおおおお!」


「やー!えへへ!」


「やなのー!えっへえっへ!」


「そんなああああああああああああああ!?」


そんなパパを憐れに思ったのか、過去の自分達がパパのズボンを引っ張ってアピールしていたが、どうやらフェイクだったようだ。嬉しなき寸前のパパがしゃがむと、そのまま逃げ去ってしまい、パパは崩れ落ちてしまった。

未来の我が家でも弟妹たちがよくする光景を目にして、思わず笑ってしまいそうになる。どうやら自分達も昔はやっていた様だ。


⦅クリス!それじゃあボクと一緒に寝よう!⦆


⦅私はコレットと⦆


「え? うーん、いいよ」


「うん」


⦅わーい!⦆


⦅歓喜⦆


ポチのお願いに、仕方ないなあといった風に言っているクリスだが、寮ではよく2人で寝ていることを、タマから聞いている。恥ずかしがり屋さんだから、一人で寝てないことを知られたくないのだろう。まあ私もタマと一緒に寝ているが。

タマもポチも、未来の寮に置いてきてしまった。急いで帰らないと、2人だけでなく、周りの皆も心配しだすだろう。


「そう気にしないでいいさ。戻ってもそう時間は経ってないはずだからね」


「そうなのお婆ちゃん?」


「ああ。時神自身がそうだったらしい。2日くらい過去に滞在しても、戻ってきたらほんの数秒だったみたいだね」


「へえ」


よかった。どうやら皆に心配かける事はない様だ。


「おばあちゃん。その神様は未来へ行けなかったの?」


「いんや、過去だけだったみたいだね」


「そっかあ。おっきくなったわたしを見てみたかったなあ」


「フェッフェッ。まあ10年なんてあっという間さ」


お婆ちゃんとソフィアお姉ちゃんが、一時期ウチにいたのは写真で知っていたけど、丁度その時期だったようで、2人がいたのは驚いた。

お婆ちゃんは、朝初めてあった時はなんだか元気が無さそうだったけど、今は普段通り、優しい目で私達を見てくれている。クリスも心配していたから、よかったよかった。


「こっちへおいでコレット、クリス」


「うん」


「どうしたの?」


「優しい子達だ」


ソファに座っているお婆ちゃんのところへクリスと行くと、お婆ちゃんに頭を撫でられた。私たちの好きな、お婆ちゃんの暖かい手だ。照れ屋なクリスも黙って撫でられている。


パシャパシャパシャ


パパが静かになったと思ったら、写真を撮りまくっていた。昔から写真魔の様だ。今でも私達が何かする度に写真を撮ってはアルバムを作っている。もう、部屋一つがアルバム部屋として埋まってる。それに小さい時は、パパの仕事は写真家と彫刻家の両方だと思っていたくらいだ。


「全く……撮るんじゃないよ」


「まあまあいいじゃないか」


お婆ちゃんも呆れ顔でパパを見ているが、そのまま窓を向いて頭痛を感じているような顔になった。何か外にあるのだろうか。


「おばあちゃんわたしも!」


「クーも!」


「コーも!」


「はいよ」


頭を撫でられている私達を羨ましく思ったソフィアお姉ちゃんたちが、お婆ちゃんの周りに集まり始めた。それを優しい目で見ている私達の家族。


例え過去でも、私の家族は皆温かかった。


「さてクリス。パパとお風呂に」


「入らないってば」


「じゃあママと」


「絶対嫌だからね!」


「さあコレット。ちゃんと髪を手入れするわよ」


ちょっと温かすぎるかもだけど。

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