ちょっとしたサプライズ5

sideユーゴ


「昔からアレクシアママのご飯は美味しい」


「ありがとうございます。ぐす」


「やっぱり泣いておるのじゃ……」


夕食になり、皆で食卓を囲んでいるが、コレットに食事の味を褒められたアリーが、鼻をすすって感激していた。というか、未来から子供達が来てからずっとそうだ。特にママと呼ばれたことが嬉しいらしく、今も普段の無表情を貫いているが、目が少し潤んでいる。


「そう言えばパパ。今のブラシ大佐の階級は?」


「中尉だねコレット」


「へえ。じゃあ次は大尉?」


「そうなるけど、大佐ってことは昇進止まってるね。なにかあったの?」


多分、小さい頃からの遊び相手が気になったのだろう。コレットがブラシ中尉の事を聞いて来るが、次に大尉ってことを考えると、10年近く経ってるのに大佐ということは、昇進が止まってるな。なにかあったのかね。


「パパが大佐は特別だからって、暫く勲章だけになってる」


「ははあ」


なるほどな。確かに大佐は色々と特別だ。何でかとは言うまいが。


「特別といえば、大尉の次は特むがむが」


「それ以上いけない。大尉の次は少佐だよ」


何故か分からないが、コレットが危険な発言しようとしていると感じて口を押える。大尉から派生階級なんて存在しないのだ。何でかタコを食いたくなくなりそうだ。


「はいクリス、あーん」


「一人で食べられるよ!」


「あらあら。ごめんなさいね、いつもこうやってるから」


一方クリスは、リリアーナにスプーンを向けられ、食べさせようと準備万端な母に、抗議の声を上げていた。流石に10歳を過ぎたら恥ずかしいのは分かる。だがリリアーナもさるもので、口では謝っているものの、スプーンは下がっておらず全く諦めてない。


「ママ!クーも!」


「はいクリス。あーん」


「あーん」


「うふふ」


「えへへ」


「じゃああなたも」


「しないってば!」


それならばと、今のクリスがリリアーナに食べさせてとお願いし、子供用のご飯を口に含んだクリスを微笑ましそうに見ていたリリアーナは、そのまま未来の我が子に、流れで食べさせようとしている。


「今じゃ照れ屋さんなのに、昔のクリスはこんなに素直なんだね」


「コレットもね」


「えっへん」


「褒めてないよ……」


俺を挟んで、コレットがクリスをからかっているが、この年頃の男の子はこんなもんだろう。というより、コレットが成熟しているだけかな。精神の成長は女の子の方が早いと聞くしな。そうだったような…。


「あ、コレットは私とお風呂に入りなさい。髪をちゃんと洗わないと」


「……ママ、流石に一人でできる」


「出来てないから言ってるんでしょうが」


「ママ!コーも!コーにもして!」


「ええ」


「コレットも人のこと言えないじゃん」


「……クリスうるさい」


男の俺にはあまり分からないが、ジネットからすれば娘の髪はまだまだ手入れが足りないらしい。だが流石のコレットも、この歳で母親に髪を洗われるのは抵抗があるらしく、ジネットに抗議していたが、それを見たクリスが、ここぞとばかりにコレットに反撃していた。


いやしかし、本当に仲がいい子供達だ。よかったよかった。


「あはは。2人とも仲がいいですね凜ちゃん」


「ああ。やはり家族とはこうでないとな」


「クリスのせいでからかわれてる」


「僕のせいにしないでよ」


「からかってなんかいませんよ。ルーもお姉ちゃんとして嬉しいんですから」


「うむうむ。そうだぞ2人とも」


ルーと凜もそう思ったのだろう。殊更家族に対して思いが強い2人だけあって、嬉しそうにコレットとクリスを見ている。


「ありがとう。でも最近、ルーお姉ちゃんは私の妹と間違われことが多い」


「うぐっ!?」


ほんのりと頬を染めて照れているコレットが、照れ隠しに放った言葉は、ルーを的確に抉り込んでしまったようだ。コレットはハーフだが見た目的に区別は難しいし、ルーより若干背が高いため、もし、いや、未来でもルーの背は伸びなかったのだろう、妹と間違われるのも仕方ないかもしれない。


「やっぱり私は……なんとか背を……でもこれはこれでアドバンテージ……」


「しっかりせんかルー」


「ひょっとしてわしも……いやでも血を吸ったら大人になるし、まだ可能性は……」


「おひい様はまだまだこれからですとも」


「じゃよな!な!」


ショックを受けてしまいブツブツと呟き始めたルーを凜が励ましているが、傷はどうやらかなり深いらしく目から光が消えている。しかもセラに飛び火したようで、彼女も呟き始めたが、アリーの言葉に元気に頷いていた。復活が早い。


「ねえねえクリスくん。わたしは?」


「え? お姉ちゃんは結構背が高くなるよ。あ、言えたよお婆ちゃん」


「まあ、身長程度なら言えるだろうね」


「わたしせがたかくなるんだ!」


「実は私達よりも高い」


「わあ!」


「フェッフェッフェッ」


ほほう。ソフィアちゃんは背が高くなるのか。そういや今じゃヨボヨボだから少し小さいが、若返った婆さんも割と背が高かったな。婆さんの妹さんも背が高かったら遺伝かね?婆さんもそれを思ってか笑っているし、多分そうだろう。


「コレット、料理が冷めちゃうわよ」


「うんママ」


「クリスも」


「うん」


いやあしかし、婆さんはボロクソに言ってたが、時神のお陰で成長した子供達と一緒に食事できたんだ。感謝してるぞ!


パシャパシャパシャ


ちょっと外がうるさいが……

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