日常編

子供達と遊ぼう!

ユーゴ邸 sideユーゴ


やあ少尉。


カッ!


うむ。この一月大変ご苦労だった。グレン君たちがいたから、仕事の量も多かっただろう。その勤務を称えて、君を今日から中尉に任命する。はいリボンに星のシールをぺたりと。

うむ。似合っているぞ。


カッ!


本題なんだが聞いてくれ…。

昨日は本当に参った…。コレットとクリスが、中々泣き止まなかったんだ。お兄ちゃんとお姉ちゃんはって…。ソフィアちゃんも悲しそうだったし…。


実はソフィアちゃんが港の国に帰るときは、絶対子供達も泣くから、月に一回くらいの頻度で婆さんを連れて、向こうに様子見がてら、遊びに行こうかと考えてたんだけど、グレン君とジェナちゃんは王族だからなあ…。


気軽に会える立場じゃないし、周りも困るだろう。俺だって、国王様とウチの子供を遊ばせてくださいって言われたら困るしな…。

何か催しものがあって、招待でもされない限りなかなか難しいよなあ。こればっかりは我慢してもらうしかないか…。


出会いがあれば別れもある。それも人生だろう。乗り越えなければ。


だから子供達と全力で遊ぶのだ!協力してくれ中尉!


カッ!



「えっへえっへ!」


「えへへ!」


「わあすっごーい!」


流石中尉だ。

屋敷の一番大きいカーペットに憑りついた中尉が、俺と子供達を乗せて、庭でふよふよと浮いており、子供達は柔らかい感触にゴロゴロと転がりながら、空中での散歩に笑い転げていた。


「ほらクリス。空中飛行だ」


「えへへへ!」


「パパ!コーも!コーも!」


「わたしも!」


「よーし順番だ」


その転がっているクリスを腕で持ち上げると、体と地面が水平になるよう横にして、空中で飛行しているような体勢にする。

すると、それに興奮しているクリスが羨ましくなったようで、コレットとソフィアちゃんも次は私と言って来たので、順番に疑似的な空中飛行を楽しんでもらった。


「あらあらうふふ。クリスはお空を飛んでるの?」


「ママ!」


「それクリス。ママのとこまで飛んでくんだ」


「えへへへ!」


コレットとソフィアちゃんにもやって、またクリスの番になった時、リリアーナが様子を見に来たので、そのまま中尉に向かって貰うと、クリスは手足をパタパタさせて、加速しているような動作をする。


「まあクリス。飛ぶのが上手ね」


「えへへ!」


そのままリリアーナにクリスを渡すと、クリスは笑顔のまましっかりと母に抱き着きついた。


「ママも!」


「あらあら。それじゃあお邪魔しましょうか」


するとクリスは、ママもカーペットに乗ってとお願いし、リリアーナも一緒に庭巡りに参加する事となった。


あ、そうだ。中尉、一部だけ柔らかくできる?飛んでも大丈夫?よし、じゃあ頼む!


「それ、トランポリンだ」


「わ、わ、わ!?」


「えっへえっへ!」


中央だけ柔らかくなった部分に、優しくコレットとソフィアちゃんを投げると、まるでトランポリンの様に中尉が動いてくれて、子供達は驚きながらもぴょんぴょんと跳ねまわる。


「クーも!」


「うふふ」


2人が羨ましくなったのだろう、リリアーナに甘えて抱きついていたクリスも、母から離れて一緒にジャンプしだす。


「皆上手ね。ほら、私の所へ来て」


「リーママ!」


「うふふ、最初はコレットちゃんね。それ!」


「えっへえっへ!」


「わたしも!」


「うふふ、それ!」


「あはは!」


「ママ!クーも!クーも!」


「行くわねクリス。それ!」


「えへへ!」


トランポリンの反動で、リリアーナにジャンプして抱きついたコレットを、彼女はそのまま抱きしめると、柔らかくコレットを放って、次にやって来たソフィアちゃんも同じようにする。


口が裂けても言えないが、種族的に恐らく大陸の頂点に位置する、ハイエルフの生まれのリリアーナは、その位階の高さも相まって、細腕なのにそこらの高位冒険者よりも筋力が高い。


「わん!」

(ボクも!)


「にゃー」

(私も)


どうやら笑い声を聞きつけたポチとタマが、屋敷の裏手から走ってやって来る。


「ぽち!」


「たま!」


おお!今ハッキリとポチとタマの事を呼んだぞ!


(今クリス、ボクの事はっきり言った!)


(コレットも)


「きゃあ!」


「えっへ!」


ポチとタマも嬉しかったのだろう。

それぞれクリスとコレットの事を舐め回し、悲鳴なのか笑い声なのか分からない声を出させている。


「タマもぴょんぴょん!」


「ポチも!」


(うん!)


(了解)


「わあ。タマちゃんポチちゃんすごい!」


犬と猫がモデルだけあってか、タマとポチはソフィアちゃんよりも高く飛び上がり、子供達を笑わせている。


「よかったですね旦那様。皆あんな笑顔に」


「うん。そうだね」


ポチとタマがやって来たことにより、絨毯が狭くなってしまったので、静かに地面に降りてリリアーナと共に、後ろで子供達が落ちない様に見守りながら歩いていると、彼女がそう話しかけて来る。

リリアーナも子供達が泣いていた事を気にしていたので、今の笑いながら飛び回っている姿を見て安心したのだろう。笑顔で見つめていた。


「でもそろそろ、お水を飲まないといけませんね。ついでにおやつにしましょう」


「だね。あれだけ汗もかいてるし」


はしゃぎすぎて、子供達が水分不足になるといけない。


準備をしに行くリリアーナを見送って、また子供達を見守る。

そうとも、子供は笑顔が一番だ。

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