パパの威厳
ユーゴ邸 sideジネット
「わあ。すごいね、コレットちゃん、クリスくん」
「えっへ」
「えへへ」
積み木を高く積み上げている娘達が、ソフィアに褒められると嬉しげに笑っている。
最近笑い方に個性が出てきて、コレットはえっへ、クリスはえへへと笑っているが、2人とも、夫が興奮して来た時の笑い方にそっくりだ。
まあ、夫は子供達といるときは、常に興奮して来た時の笑い方になるので、真似しているのかもしれないが。
「ぱぱ!?」
「ぱぱ!」
「どうしたの?」
やはりコレットもクリスも、感覚が鋭い。
確かに夫の気配は作業室から、こちらに向かって来ているが、この歳で気配を感知するなど、尋常ではない。
「クリス、コレットちゃん。パパがこっち来てるのかしら?」
「まま!ぱぱ!」
「そう。来てるのねクリス」
「ん!」
「くー!」
「ん!」
リリアーナに頷いていたクリスが、コレットに呼ばれると同じように頷いてカーペットから立ち上がる。
「まま!」
「まま!」
「坊ちゃま?お嬢様?」
立ち上がった娘たちは何を思ったのか、お茶を入れ終わったアレクシアの元まで走り出した。
しかし、アレクシアよ!最初にママと呼ばれたのは私だったな!はっはっは!
コレット達の世話を、夜中にしてくれていたお前には、心底感謝しているが、私にもプライドがあったのでな!
「あ、ちょ、坊ちゃま?お嬢様?」
「コレット…一体何を」
「あらあら」
「懐かしいのう…。わしも子供の時はよくああしたもんじゃ」
「そうなのセラおねえちゃん?」
「うむ。流石にもう大人のレディじゃからしてないがの」
「セラおねえちゃんはレディなんだ!」
「そうじゃとも」
何故か娘達はアレクシアの足に抱き着く…、訳でなく、そのまま彼女のスカートを捲り上げて、その中へと入ってしまった。
それを懐かしげに見て、ソフィアと話しているセラだが…。この屋敷に初めて来たときにやってたからな!さては怖がってアレクシアのスカートに隠れた事など、無かったことにしたな!?
「へっへっへっへ。あれえ?おかしいなあ。コレットとクリスはどこ行ったのかなあ?」
子供達と遊ぶからか、もう心底楽しい時の笑い方をしている夫が、わざとらしい声を出しながら辺りを見回している。
「ソフィアちゃん。クリスとコレットがどこにいるか知らないかい?」
「ううん。しらない!」
「そっかー」
アレクシアのスカートから、笑いをかみ殺しているような気配を2つ感じる。
どうやら夫とかくれんぼがしたくて、スカートの中に隠れたらしい。
「ジネットとリリアーナも知らない?」
「ふふ。いいえ」
「さっきまで積み木で遊んでたんですけど?どこ行っちゃたのかしら?」
「うーん。机の下にもいないなあ」
そう言いながら、夫はリビングを回り始めた。
「あ、そうだ!ひょっとして」
夫はそう言いながらアレクシアに近づいているが、スカートの中の気配が緊張しているのが分かる。
「うーん。アリーの後ろにも居ないかあ」
「はい」
夫がアレクシアの後ろに行くと、今度は安堵の気配が伝わってくる。
「どこに行ったのかなあ…。なんてね!」
「きゃ!ユーゴ様!?」
「まま!?ぱぱ!?」
「まま!?」
「見つけたぞおお!」
「きゃあ!」
「きゃああ!」
夫が突然アレクシアを横抱きにすると、当然スカートの中の子供達は隠れていた物が無くなり、その姿を夫の前に晒してしまう。
というか羨ましいぞアレクシア!私と変われ!
「まま!」
「まま!」
「ふふ。もう」
「はいクリス。いらっしゃい」
どうやら今度の逃げ先は私達の所らしい。そのままソファに座っている、私達の足に抱き着いた。
「なんてことだ…。ママ達にしがみ付くとは、やるな子供達よ」
「えっへ!」
「えへへへ!」
夫が立ち止まったのを見て、子供達は勝ち誇った様な笑みを浮かべている。よく分からないが、親子の間で何かルールがあるのだろう。
しかし、アレクシアめ…。顔が赤いぞ!
「ソフィアちゃん。積み木で遊んでくれてたのかい?」
「うん!」
「ありがとうねソフィアちゃん。よっこいせ」
「えへへ」
夫がソフィアに感謝しながら頭を撫で、そのままカーペットに腰を落とす。
この子にも感謝している。コレット達はいつもべったりだ。
「それでは叔父さんが、積み木で一つ作ってみよう。そりゃ!」
「え!?え!?おじさんどうやったの!?まほう!?」
夫が一瞬の内に、カーペットに散乱していた積み木を一つづつ積み上げて、高い塔の様な物を作り上げた。
「ぱぱ!?」
「ぱぱ!」
それを見たコレット達も、私達の足から離れて、積み木と夫の所へ向かう。
もう少し抱き着いていてもよかったんだが…。
「ふっ。子供達から初めて尊敬された気がする。やったぜ」
「ぱぱ!?こえ!?つーき!?」
「ぱぱ!?」
「おじさんすごい!」
「よーし。じゃあ次はおうちだ!」
興奮して積み木を見る子供達に、夫もとても楽しそうに次の形に変えている。
「ぱぱ!?」
「ぱぱ!?」
「わあ!」
「今、俺凄くパパやってる。へっへっへっへ。へっへっへっへ」
またしても一瞬の内に出来上がった積み木に、子供達も目を白黒させながら喜ぶ。
「ふふ」
「うふふ」
夫も子供達も、あまりに可愛らしい姿だったため、ついリリアーナと一緒に笑みを溢してしまうのだった。
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