6人衆誕生!

ユーゴ邸 sideユーゴ


はっ!?顔に感じるこの重さと息苦しさは!?


「むにゃ。旦那様ぁ」


やはりリリアーナか。

久しぶりに、寝ぼけて俺の顔に胸を押し付けている。起きなかったら、危うく窒息死するところだった…。


「よしよし」


おっと、今度は頭を抱えられて撫でられた。

多分、クリスと夢の中で遊んでいるな。


「旦那様は頑張り屋さん過ぎます。よしよし。すう」


…違った。

どうやら甘やかされているのは俺らしい。

寝てるのに、凄い慈しみの感情が感じ取れる。気恥ずかしいような、嬉しいような。何とも言えない暖かさが心から溢れて来る。


「ママ。パパ。えへへ」


む。クリスがベビーベッドからこっちを見て、笑っているのが気配で分かるぞ!

ママとパパが仲良しで笑っているのか、自分と同じように甘やかされているのを可笑しがってるのか…。

息子にばっちり見られてるのは、流石に恥ずかしいな!


「ん?あ!?こらおっぱいお化け!最近無くなったと思えばすぐこれだ!離れんか!」


「はれ?あら。おはようございます旦那様、ジネットさん」


「いいから離れろ!」


「えへへ」


「えっへ」


起きたジネットが、窒息寸前だった俺の状態に気がつき、リリアーナを引き剥がそうとする。


どうやらコレットも起きたようで、それを見てクリスと一緒に笑っていた。

うむ。今日もママ達とパパは仲良しだよ!



「がちゃこん。次はー…。何処行こうか?」


「おにわ!」


「にあ!」


「おいあ!」


ソフィアちゃんを肩車して、両腕にそれぞれ子供達を乗せた、いつものスタイルで屋敷を歩き回っている。


婆さんは、ソフィアちゃんがこの屋敷に慣れたと判断して、エルフの森と海の国へ行ったりと、小大陸への帰還事業に関わっているらしい。

小大陸から逃げてきた人々にとっては悲願と言っていいが、そうなるとソフィアちゃんともお別れか…。寂しくなるし、子供達も泣いてしまうだろう…。


「えーそれでは、お庭ー。お庭へ参りまーす。がしゃこん。ん?」


おっと。この気配は3人衆だな。

ちょうどいい。このまま迎えに行こう。


「えー。このまま、3人衆の皆様を迎えに行きます。がしゃこん」


「おにいちゃんたち!?」


「にーに!」


「にー!」


何度かソフィアちゃんと商店街に行っているから、3人衆全員と面識のあるソフィアちゃんと、家に来ては遊んでくれるから、コレットとクリスも大喜びだ。


「あ、おっさんだ」


「俺らが来るたんび、出て来てくれるよな」


「なにか感知魔法?」


鋭いな3人衆。だが、流石に気配を感知しているとは思うまい。


「いつもの完全装備だな」


「3人も抱えてふらついてないからな、意外とあのおっさん逞しいよな」


「昔のボク達にもああやってた」


「そういやそうだったな!」


「ははは!」


懐かしいな。確かにまだがきんちょ達が幼かった時も、今の様に肩と腕にそれぞれ乗せて歩き回ったもんだ。


「おっす。3人衆よ」


「よっ!」


「おっす!」


「こんにちわ」


そんな会話を聞きながら、門の前にいる3人衆に声をかける。


「おにいちゃんたち、こんにちわ!」


「にーに!」


「にー!」


俺の上にいる子供達も、手を振りながら興奮して挨拶している。

あ、こらクリス。身を乗り出すのは危ないから止めなさい。


「えーそれでは、次はリビングー。リビングへ参りまーす。がしゃこん」


「リビングー!」


「りーぐ!」


「ぐー!」


「今すげえ記憶が刺激された!」


「俺も俺も」


「懐かしい」


なんだか懐かしそうな3人衆だが。

そうか。昔3人衆を乗せてた時も、同じような口上だったな。



「うわすげえ。滑り台だ」


「家の中にあるとかどんだけだよ」


「流石だね」


ふっふっふ。家が広くてよかったと今でも思ってるぞ。


「えーご乗車ありがとうございます。今後ともパパ馬車を、どうぞご利用ください」


「おにいちゃん!」


「にーに!」


「にー!」


子供達を降ろすと、皆3人衆の所へ走っていく。

パパはちょっと寂しいぞ。


「おっすソフィア!それ回転だ!」


「おお!また重くなったなクリス!」


「成長の証。でもコレットには身長だけ言及」


「わーい!」


「えへへ!」


「えっへ!」


抱きついて来た子供達を、3人衆がそれぞれ抱え上げて回転し始めるが、店の手伝いで重いものを運んでいるのか、体幹もしっかりしていて危な気が無い。

それにしても子供達の、あの楽しみ様…。やっぱり、小さな子供には回転なんだな!今夜俺もやるぞ!


それはそれとして、机の上に置いてあった写真でパシャリ。

うむ。笑顔の子供6人が回転している写真だ。

タイトルは…。6人衆の笑顔でいいか。後でアルバムに入れなければ。


「それ着地だ!」


「上手く立てるかなあ?」


「頭を打たないようにね」


「あはは!めがまわるー!」


「えっへ!えっへ!」


「えへへへ!」


回された側のソフィアちゃん達がカーペットに足を付けたが、やはり目が回っているため、コテンとしゃがみ込んだ。しかし、それが楽しくて仕方ないらしく、笑いながらもう一度立とうとしている。


「おにいちゃん!もういっかい!」


「にーに!」


「にー!」


「よし!あと何回かしたら、次はかけっこだ!」


「あんまりやりすぎは良くないからな。多分」


「次は体を横にして回ってみよう」


もう一度写真をパシャリ。

うん。本当にいい画が撮れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る