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「ふひ。ふひひ。ついにこのおんぶ紐と抱っこ紐を使う時だ。ふひひ」


ご主人様が不気味な笑い声をあげて、自分に抱っこ紐とおんぶ紐を付けている。


今日はついに、コレットちゃんとクリスちゃんの、商店街デビューの日だ。

今まで、庭だけでなく、ご近所も散歩していたが、そろそろ人が多い場所にも、子供達を連れて行こうという話になった。


最初は、お姉ちゃんとリリアーナお姉ちゃんが、それぞれ抱いて行くという話だったが、買い物とお金の受け渡しに、両手が空いている必要があると、ご主人様が紐を使うことを提案したのだ。

まあ、それだけなら普通の話だが、何故か紐はご主人様が両方使うと言い出し、それぞれ付けている。


どう考えても、子供達を独占するための言い訳だが、ご主人様も最近出張が多かったから、触れ合いの時間を欲しているのだろう。お姉ちゃんも苦笑しながら頷いていた。


「ふひひ。完璧だ」


後は子供達が、泣きださないかだ…。



「きゃー!ぱぱー!やー!えっへ!」


「きゃあー!ぱぱ!やー!えへへへ!」


「まてまてー」


杞憂だったみたいだ。

コレットちゃんもクリスちゃんも、大笑いで逃げ出している。


「そーれ捕まえた!最初はクリスだ!とう!」


「ぱぱ!えへへへへ!」


ご主人様が、器用におんぶ紐にクリスちゃんを通す。背中にあるのに、紐に引っ掛からなかった。

当のクリスちゃんは、大笑いで手足をじたばたさせていた。


「さあコレット!覚悟するのだ!とう!」


「ぱぱ!えっへ!えっへ!」


次に、少しでも距離を稼ごうと逃げていた、コレットちゃんを後ろから捕まえると、向きを変えて抱っこ紐に通した。

コレットちゃんの方も、大喜びだ。


「へっへっへっへ。完璧だ…。完璧すぎる。これこそパパだ。へっへっへっへ」


ご主人様もだった。

背中と胸の両方に、子供達がいる事にご満悦な様子で、今にも高笑いしそうになっている。


「よしソフィアちゃん行こうか!」


「うん!おじさん!」


「ねー!」


「ねーね!」


ご主人様がソフィアちゃんの手を握ると、掴まっている子供達が、助けを求めるように手を振っていたが、ソフィアちゃんは、よく分かってないみたいだ。


「ジネットー、リリアーナー。行こうかー」


「ええ」


「はい!」


「おばあちゃん行って来ます!」


「はいよ」


私も付いて行こう。



「まあまあ。可愛らしい子達だね」


「そうでしょうそうでしょう!」


八百屋の女将さんが、ニコニコ顔でコレットちゃん達に手を振ると、子供達も真似するように手を振っていた。

なおご主人様もニコニコだ。


「ほら。クリス、コレット。御挨拶だよ」


「くー!」


「こー!」


あ!今自分の名前を言った!


「今お名前言った!?凄いぞ!」


「凄いわコレット」


「まあクリスちゃん!」


「コレットちゃん、クリスちゃんすごい!」


「はっは。親馬鹿だねえ」


びくっと、驚いたご主人様が子供達を褒めて、お姉ちゃんたちも頭を撫でて褒めている。

女将さんはやれやれと言った様子で呆れているが、コレットちゃん達の初めての自己紹介なのだ。どうしても興奮してしまう。


「さて、ルーちゃん。何か買ってくかい?あっちは当分、帰ってきそうにないからね。ユーゴと聖女様は分るけど、ジネットさんもねえ」


あ、私も忘れてた。


ご主人様たちは、子供達を褒めるのに忙しい様だ。


えーっとどれにしようかな。



「さて、ソフィアちゃん。お菓子を買って帰ろうか。食べたいのがあったら、買ってあげるよ」


「ありがとうおじさん!」


親しいドロテアお婆ちゃんの親戚の子だから、ソフィアちゃんにもコレットちゃん達と同じように、かわいがっているご主人様。


今もお菓子を買って帰るようで、手を繋いでお菓子屋に向かっている。


「まあ、皆さんお揃いで。いらっしゃいませ」


「いらっしゃい」


「お邪魔します」


「にー!」


「にーに!」


行きつけのお菓子屋の扉を開けると、3人衆の子も店にいた。

コレットちゃん達はその声を聞くと、ご主人様の体で見えてないのに、大声を出し始めた。


「今僕の事、お兄ちゃんて言った。間違いない」


「ああ間違いない。コレットー、クリスー。お兄ちゃんだぞー」


「にー!」


「にーに!」


ご主人様が体を横に向けて見えるようにすると、コレットちゃん達はしっかりと3人衆の子を見て、手を振りながら呼びかける。


「また遊びに行くね」


「にー!」


「にーに!」


「すいませんうちの子達がいつも…」


「いえいえ。子供達も喜んでますから」


また遊びに行くという言葉に、コレットちゃん達は、嬉しそうな、もしくは、今すぐ遊びに来てくれという様な声を出している。


「コレットちゃんとクリスちゃんのおにいちゃんなら、わたしのおにいちゃん?」


「そう。お兄ちゃん。何でも買っていってね。後でボクの手作りクッキーも付けるから」


「わあ!おにいちゃんありがとう!」


初対面のソフィアちゃんに、お兄ちゃんと断言するとは。

やっぱりこの子は大物だ。


「おじさん!わたしこのケーキがたべたい!」


「よしゃよしゃ。すいませんこれ一つ」


「はい、ありがとうございます」


ソフィアちゃん、いい目の付け所だ。あのケーキは確かにおいしい。


「ありがとうおじさん!おにいちゃんバイバイ!」


「またね」


「にー!」


「にーに!」


手を振り合うソフィアちゃんと、男の子。

そして、何で一緒に来ないのと言わんばかりに、悲痛そうな声を出しているコレットちゃん達であった。


「さあ帰ろうか」


「うん!」


最初は、コレットちゃん達が、人が多い商店街で泣き出さないかと不安だったけど、そんな事はなかった。

この子達も大物だ。

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