じゅもんをとなえた?かいぶつたちと親馬鹿達

ユーゴ邸 sideユーゴ


「うふふ。クリス。ママの所へおいで」


「あー!」


「ほらクリス。軍曹も待ってるぞ」


押し車を押しながらこちらへ歩いてくる我が息子。足元にはポチ、タマと並ぶもう一人の親友、軍曹がクマのぬいぐるみに宿って浮いていた。どうやら浴室で仲良くなったらしく、クリスの目は軍曹に釘付けでこちらへ歩いてくる。


そういえば餅を背負わせるのはいつだったかな?というか餅だったか?親戚の小さな子が、歩けるようになった頃に、背負わされてギャン泣きしていたことを思い出す。まあ、こちらにそんな習慣は無いが。


「おークリス!偉いぞ!」


「凄いわクリス」


「あ!あー!」


こちらへやって来たクリスを抱き上げるが、本当に大きくなった。

クリスの手元には既に軍曹が収まっていたが…。ダメだよクリス。軍曹は食べ物じゃないぞ。まあ、口で確認を取っているのだろうが、軍曹が涎まみれだ。すまん軍曹。

え?別に本体じゃないからいい?ありがとう軍曹、いや曹長。君の様な士官を持てて名誉に思う。


「ふふ。甘えんぼさんね」


「あう」


コレットの方は…。

ジネットの首元に抱き着いて甘えてるな。


「ダメよコレット。ママの髪は食べちゃダメ」


「まんま」


「ん!?」


「コレット今!?」


「あらあらまあまあ」


間違いない!今ママって言ったぞ!絶対そうだ!

ジネットも驚いたように、顔の前にコレットを移動させた。


「コレットもう一度言ってみて。ママよ。マーマー」


「んまあ」


「おお凄いぞ!コレット凄い!もうママって言えるのか!」


「ふふ。コレット」


うちの子は天才だな!

さて…


「コレットー。パパだよ。ぱーぱー」


「あー!」


「ははは!可愛いなあ!」


ま、最初はママだとも。いづれだ、いづれ。


「クリスー。ママですよー。ママー」


リリアーナもクリスがママと言わないか試している。クリスのくりくりした目がリリアーナをじっと見ているが…。


「ママですよー」


「まー」


クリスも言ったあああ!

うちの子達は天才だあああああ!


「まあクリス!今ママって!」


俺が抱き上げていたクリスを、リリアーナに渡す。

彼女は満面の笑みでクリスに頬擦りしており、クリスも嬉しそうだ。


さて…。


「クリスー。パパですよー」


「あー!」


残念。


「皆様お茶をどうぞ」


「まーま」


「まーまー」


「ク、クリスお坊ちゃま、コレットお嬢様。今私の事をママと」


アリーがお茶を運んでくると、子供達がアリーに視線を向けてママと呼んだ。

流石はアリーだ。彼女も感動している様で、珍しく顔が赤い。


「ぬう。流石だなアレクシア。しかし、最初にママと呼ばれたのは私だ」


「危なかったです」


ジネットとリリアーナは最初にママと呼ばれて一安心しているが、まさに間一髪だった。

ところで俺の方は…。


「コレットー、クリスー。パパだよパーパ」


「ぱー」


「ぱ!」


「おおおおおお!」


今確かに2人でパパって言ってくれたああああああ!


ジネットとリリアーナから子供達を受け取って抱き上げ、そのままぐるぐる回ってしまう。


「もう一回言って!パパってもう一回!」


「ぱ」


「ぱ」


「パパ嬉しいい!」


まさに我が世の春!へっへっへっへ!


「貴方。子供達の目が回ってしまいますよ」


「おっとごめんね。クリス、コレット。あとクリスよ、パパの髪は食べ物じゃないぞー。はっはっはっは」


抱き上げたクリスに髪を食べられて涎だらけにされようが、コレットに顔をペシペシ叩かれようが全く些細な事だ。


「このまま散歩に行こう。そうしよう」


「ふふ」


「あらあら」


この湧き上がる衝動を抑えて座る事が出来ない。2人を抱っこしたまま、そのまま庭の方に向かう。思わずスキップしそうになるが、抑えろ、抑えるんだ俺。


⦅あ、ご主人だ!2人とも抱っこしてお散歩珍しいね⦆


⦅散歩日和⦆


玄関を開けると、タマとポチが座っていたが、そうだ!


「クリスー、コレットー。ポチとタマだよ。ぽーちー。たーまー」


「ぽーいー」


「たあー」


やっぱり天才だ!


⦅今クリスボクの事呼んだ!⦆


⦅歓喜⦆


ぴょんぴょん跳ねている2人に、子供達の視線を合わせるためしゃがむと、途端に顔を舐め始めた。


「きゃー!ぽー!」


「へへへ。たー」


くすぐったそうに身を捩る子供達に、お構いなく顔を舐めまくっている。どうやら余程嬉しかったようだ。


「よしポチ、タマ。お散歩だ!背中に乗るのだ」


⦅うん!⦆


⦅了解⦆


腕にクリスとコレット。背中にポチとタマという完全装備で庭を散歩したが、いやあ楽しかった。



「ルーですよコレットちゃん。ルー」


「うー」


「きゃあお姉ちゃん!今私の名前呼んだよ!」


「そうか?単に声が出ただけだと思うが」


「そんな事ないよ。ねーコレットちゃん」


「うー」


「ほらまた呼んだ!」


「変わらんぞ。ちゃんと名前で呼ぶ所を見せよう。コレット、ママよ。ママ」


「まあ」


「ほらな。こういう事だ」


「いや、お姉ちゃんの方こそ言葉になって無いじゃん」


「何を言うか、ちゃんとママと呼んでただろう」


ジネットとルーが麗しい姉妹愛を見せているが、心配しなくても2人ともちゃんと呼んでたぞ。大丈夫だ。


「コレットお嬢様の離乳食は今日どうします?」


おやアリー。


「まーまー」


あれ?


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