新しい一日の始まり

ギリギリですが、本日投稿2話目です。ご注意ください。


ユーゴ邸 早朝 ユーゴ


「コレット。おはよう」


「クリスー。ママですよー」


最近の一日の始まりは、浴室から出たジネットとリリアーナが、子供達のいるリビングに来ることから始まる。

2人ともずっと一緒にいたがったが、子供の夜泣きを考えると睡眠時間が2時間とかになるので、俺とアリーが押し切って寝て貰っている。体調を崩したら元も子もない。

そのため離れていた時間を取り戻そうと、朝は子供達に一直線だ。


子供達もママだと分かったのか、近づいた母親達の顔に焦点を合わせて、嬉しそうに手をぱたぱたさせている。可愛い。


「アレクシア感謝している」


「ありがとうございます」


「いえ。お気になさらず」


深夜眠っている彼女達の代わりに、子供達の母親をしているのはアリーだ。そのため、アリーが子供達を抱いても嬉しそうに手足を動かす。


「旦那様クリスを抱っこしてあげてください」


「う、うん。お、クリスパパだぞー」


問題は俺だ。子供達は俺が抱っこしても問題ないが、俺の方は緊張でガチガチになっている。まだ首が座ってないから、抱っこの方法は合ってるのかと心配になるのだ。あ、クリスが俺にも目を合わせて手足を動かしている。可愛い。


「あなた。コレットも」


「うん。うん?」


恐る恐るクリスをリリアーナに渡し、次にコレットを抱っこする。さっきまで元気に手足を動かしていた娘だが、途端に目を閉じて眠ってしまった。パパの腕は安心したかなあ?可愛い。


「ふふ。寝てしまいましたね」


「いやあ、可愛らしい」


子供は寝るのが仕事なら実に勤勉だ。将来は賢くなるだろう。

あ、そうだ。子供が大きくなったら、一度魔法の国の学校へ下見に行こう。唯一の懸念は寮生活になることだが…。まあ先の話だ。その時はどんなものか確認するだけでいいだろう。


「それでは私は朝食の準備に取り掛かります」


「手伝うよ」


子供の方はジネットととリリアーナに任せて、こっちは朝食を作るとしよう。



⦅クリスー。コレットー。ポチだよー⦆


⦅タマです⦆


朝食の準備が出来たとジネット達に知らせようとリビングに戻ると、巡回を終えたポチが後ろ足で立ち、タマはその背に引っ付いて、ベビーベッドの隙間から子供達を覗き込んでいる。

暇があればこうして子供達に語り掛けている2人なため、もし思念が届いているなら、子供達がママパパの次に名前を言うのはポチ、タマではないかと思っている。それか、わんわん、にゃーにゃーかな。


しかし、ポチがタマを背負って子供達を見ながら、尻尾を振っている姿はいいな。こないだ買って来た写真を撮ろう。


パシャリ


うむ。

真っ黒い四角の箱から、取ったばかりの写真が現像される。

中々値の張る遺物だが、そんな事これっぽちも関係ないね!子供のアルバムを作るのは俺の至上命題だ!

東方でならもっと安くて色々あるみたいだから、いつか行ってみたいな。そういえば故郷も写真ならウチの国!って聞いた事あるような無いような。

しかし、東方の写真で参考になったのが、凜の仇の業魔の写真と言うのがあれだが…。


む。クリスがポチたちの方を見て手を動かしている。

婆さんの言う通り成長が早いのか、もうポチとタマを認識しているようだ。昨日、警備に戻ろうとしたポチ達が部屋を出ようとすると、クリスもコレットも大泣きし始めた。最初は急に大泣きした原因がわからず右往左往していたが、慌てて戻って来たポチ達の姿を見ると泣き止んだのだ。愛されてるなあポチ、タマよ。

その推測を話した時は、2人とも大はしゃぎでベビーベッドの周りを駆け回っていた。

そのため、ポチ達が構いまくりたいこともあり、ほぼずっと部屋にいる。


「ジネット、リリアーナ。ご飯の準備が出来たよ」


「はい。行きましょうコレット」


「分かりました。さあクリス」


子供達は乳母車に寝かせられて移動だ。出来れば家族みんなで食事したい俺の我儘だ。


「コレットちゃん!クリスちゃん!今日も元気ですねー!」


「セラお姉ちゃんじゃぞー」


「今日も愛らしい」


食堂に行くと、ルー、セラ、凜がニコニコしながら乳母車を覗き込んだ。子供達も慣れたもので腕を動かしている。産まれた時から人が多いからな。


「さて、それじゃあ朝食にしようか」


今日も一日頑張りましょう。



うむ。オムツを洗っているが、2人分の布おむつだから数が多い。しかし、子供達の仕事結果と成長の証だ。洗うのに何の苦労があろうか。

流石に吸水オムツなんてものがあるはずも無かったから、綺麗な布おむつをして利用しているが、干すと壮観だな。晴れていてよかった。


⦅ご主人乾かす?⦆


「うーん。お日様で殺菌しないとだからねえ」


足元にいたポチが首を傾げながら提案するが、精霊体になっても流石に紫外線は出せんだろう。出せたらヤバい。


「勇吾様。干し終わりました」


「ありがとう凜」


こうやって子育てに家族みんなが協力してくれている。有難い限りだ。


⦅凜!これ骨!骨!⦆


「分かった分かった」


洗濯物の向こうから姿を現した凜にポチのテンションが上がり、近くの犬小屋から亀の骨を持って戻って来る。

そのまま引っ張り合いっこが開始されるが、ポチは可愛がってくれる凜に特に懐いており、遊んで貰おうとする。

凜は凜で仕方ないなと言った口調だが、実は満更でもないことを知っている。本人も楽しそうに笑顔だ。


うむ。やはり家の中は笑顔じゃないとな。

今日もいい日だ。




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