待ち望んだ日は突然に2

リガの街 ユーゴ邸


「へっへっへっへ。パパですよー」


ジネットとリリアーナは疲れて眠ってしまったが俺はこれからだ。リビングに子供達を移して、ベビーベッドの上に乗せる。

上からのぞき込むと、クリスは金の髪に所々黒が混じり、コレットは母親より少し薄い褐色の肌に、銀の髪に少し黒が混じっている。2人とも少し耳が長く、今はすやすや眠ているが、いやあ可愛いなあ!


「えへへ。コレットちゃん、クリスちゃん。ルーお姉ちゃんですよー」


ルーもニコニコしながら見ているが、お姉ちゃんで通すことが決まったようだ。叔母ちゃんはまだまだ乙女としてはダメなようだ。


「いつか私も!」


「気合が入っとるのう凜。もう少し新婚気分でもいいと思うんじゃが」


「今日から侍女兼乳母ですね」


⦅クリス!コレット!クリス!コレット!⦆


⦅私はタマです⦆


周りの皆も嬉しそうだ。凜は羨ましがってるようだが、セラの言う通り、若いんだからそう急がなくてもいいと思うんだが。

あと、ポチとタマの尻尾は今にも外れそうなくらい振られている。


「いつまでいても子供達が気にするからね。坊やとアレクシア以外は寝るんだよ」


「はい!」


「婆さんありがとう。お休み」


「はいよお休み。何かあったら呼ぶんだよ」


婆さんの言葉で皆がリビングから出て行く。今夜は、準備した客室に婆さんが泊まってくれるから、何かあっても大丈夫だろう。

ここからはお乳が欲しくて起きた子供に、アリーが対処してくれることになっている。彼女は精霊のシルキーだから、睡眠が必ず必要というわけでなく、必要とあれば屋敷に住む子供に対して母乳も出せる。まさに完璧…。


「それではお任せくださいユーゴ様」


「よろしくお願いします!」


今度像を作っておこう。拝むだけじゃ足りないな。

コレット!クリス!パパも24時間365日戦えるから夜泣きしても大丈夫だよ!


む?コレットが急に腕を動かし始めたぞ。


「授乳の時間ですね」


そういうと、アリーはコレットを抱きかかえ、コレットが満足すると抱えなおして背を少し叩き、げっぷも出してあげた。

なんという手慣れよう。


む?クリスの方も!


「お任せください」


アリーがこれまた手慣れた様子でクリスを抱える。

像は一つだけじゃ足りねえな。


む?子供達よ!これはパパにも分かるし出来るぞ!おしめだな!

えーっとこうやってっと。うむ。イメージトレーニングの成果が出ている。


ん?皆と一緒に出て行き、巡回警備に戻っていたタマとポチが、ひっそりと扉の隙間からこっちを見ている。


⦅異状なし…⦆


⦅同じく…⦆


子供に聞こえないのに、妙に弱いまるで小声の様な思念が届く。

どうも気になって仕方ないらしい。


「はは。おいで」


2人ともゆっくりと扉の隙間から入って、とてとてとやって来る。


⦅クリスとコレットはお眠?⦆


⦅睡眠中⦆


「ああ。子供は寝るのが仕事さ」


代わりにパパがずっと起きてるからね!


⦅クリスー、コレットー。ポチだよー⦆


⦅タマです⦆


「アリーです」


どうやらアリーは同じ精霊だけあって、タマとポチの思念を感じる様だ。出来ないこと無いんじゃないか?


⦅ご主人ー。クリスとコレット、いつボクの事呼んでくれるかなー?⦆


⦅呼ばれる準備万端⦆


「大体1歳半くらいからパパママと呼び始めるようです」


「ほほう」


少し先だが、なあにあっという間だ。


⦅楽しみ!⦆


⦅同じく⦆


さあて、朝になったらママ達も一緒だからなー。


ユーゴ邸 朝


ん?この気配そろそろジネットとリリアーナが起きそうだな。

迎えに行こう。


「ちょっとジネットとリリアーナを迎えに行くね」


「はい」


婆さんが魔法を掛けてたから、それほど体調は悪くないと思うが…。


「クリス、ママはここですよ!」


部屋に入るとちょうどリリアーナが起きたが、ガバリと起き上がりながら第一声がこれとは流石だ。


「あら?旦那様?クリスはどこですか?」


「おはよう。リビングにいるよ。アリーが面倒見てくれてる」


「まあ。すぐにお礼を言わないと」


その方がいい。何と言っても我が家の神様だ。


「あなた…コレットは?」


「おはようジネット」


ジネットも起きたか。皆で行くとしよう。



「クリスー。ママですよー」


「ふふ。コレット」


ベビーベッドで眠る子供達を見ているが、母親がいるからか、心なしか安心したような子供達。

うむ。まだ2人には及ばん様だ。だがパパも愛してるからね!


そう言えば、祈りの国の人達や、魔の国のダークエルフの長老達にも子供が生まれたことを報告しないとな!手紙を書こう。きっと喜んでくれるだろう。何人かぶっ倒れるかもしれんが、喜びのあまりだろう。そうに違いない。

ちょっと前に、祈りの国のベルトルド総長のとこへお邪魔して、最新の手配書を貰った時に、お手製のマクシム像があって、話をすると泡を吹いて倒れたから、総長には書かん方がいいだろう。心臓が止まっても困る。そろそろ俺に慣れてくれ。


おや?お腹もいっぱいで、さっきおしめを変えたばかりなのに、子供達が動き始めた。どうしたんだ?


「まあクリス。抱っこですねー」


「私はここよ」


リリアーナとジネットが子供達を抱き上げると、途端に子供達は動きを止めてスヤスヤと眠り始めた。どうやらママが恋しかったようだ。可愛いなあもう!


今なら、世界中で俺達は幸せですって大声で言いまわれる!



???


「うっ。休みを取ったばかりなのにまた寒気が…」


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