性別

sideセラ


「はい貴方どうぞ」


「ありがとう」


夕飯の時間じゃが、ジネットがえらいだんな様に甘えておるのじゃ。皆の前でなければ「はい、あーん」とか言い出すのではなかろうか。

それくらいべったりと甘えておる。

アレクシアの話では、昼頃にダークエルフの一行が帰ってから、ずっとあの調子らしい。

隣ではリリアーナが羨ましそうにしておるが、あ、だんな様に椅子ごと寄せられた。これでリリアーナもニコニコじゃ。

だんな様は「妊婦さんに対する精神ケアは大事。とっても」と言っていたが、これがそうなのじゃな。…なんか違うような。


しかし、2人のお腹に赤ちゃんがいるとはのう。なんだか不思議な気分じゃ。わしも欲しいようなもう少し新婚気分でいたいような、複雑な気持ちじゃ。

2人の子供が生まれたらちょうどいいかの?


というか父上に新しい子が出来なかったら、実家のナスターセを継ぐのはわしの子になるのかの?駆け落ちしたとはいえ、お爺様の家でもある。愛着は当然ある。まあ父上も若いし、養子とか選択肢はあるから先の話じゃ。


食卓じゃが、妊娠した2人が肉の匂いがダメになってしまったから魚と野菜中心じゃが、わしはだんな様の血があればいいし、凜は元々そういう食生活、アレクシアとルーは特にこだわりは無いらしい。問題はよく肉を食べていただんな様じゃがどうしておるのじゃろう?


私は知っている…。ユーゴ様がこっそりと肉を食べているのを。

口封じのキスはステーキの味がした。


sideユーゴ


朝か。

昨日はジネットが随分と甘えてきた。寝ている今も俺の腕に抱き着いている。可愛い。

さて今日の赤ちゃん達は…んんん!?

リリアーナの赤ちゃんの方ひょっとして!?ジネットの方は…ない!?という事は!

婆さん助けて!


おっと。流石に学習している。駆け出したい気分だが今はぐっと我慢だ。皆が起きて身だしなみを整えてからにしよう。


「んん…だんなさまぁ」


「おはようリリアーナ」


動揺が伝わったのかリリアーナが起きだす。


「ぼうやがおなまえって…すう…」


また寝たが流石リリアーナだ。もう赤ちゃんと会話できるとは。というか前から性別を言い当ててたな…。



「婆さん助けて!」


「性別だね」


朝食も終わって婆さんとこに駆け込んだが、会うなり言い当てられた。超能力者か!


「そろそろの時期に坊やが駆け込んできたんだ。分かりやすいとも」


まだ一言しか言ってねえよ!


「ほら背負いな。急ぎなんだろう?」


はい、失礼します。

婆さんの足腰はしっかりしてるが、特急便が必要なのだ。

いや?魔法を使えば普通に走れるんじゃないか?


「そんな疲れる事はせんよ」


さいですか。


「お邪魔するよ」


どうぞこちらでございやす。


リビングに待っていてもらったジネットとリリアーナだが、リリアーナは普段以上のニコニコ具合で、そんな彼女をジネットが不審そうに見ていた。


「お待ちしておりましたドロテア様」


「あなた、定期検診にはまだ少し早いですよ?」


「いや、今日はちょっと別かな。婆さんお願い」


「はいよ」


妊娠が分かってから婆さんには定期検診をお願いしていたが、確かにちょっと早い。しかし今回は別件だ。

婆さんが2人のお腹に手を当てて魔力を通す。素人がやると子供に影響が出ると言われているが、そこは百戦錬磨の婆さんだ。全く問題ないだろう。実は魔法を"8"つ使えるんじゃないかと睨んでいる。


「ふむ」


結論が出た様だ。2人のお腹から手を放す。焦らさんでくれ。


「リリアーナの方は男の子、ジネットの方は女の子だね」


「おお!」


ははははははは!!!

男の子と女の子両方かあ!!

名前も考えなきゃいけないし、服も両方必要だ!忙しくなるぞお!


「うふふ」


「女の子か…ふふ。ん?」


気づいてしまったかジネット…。両方の性別がリリアーナの言った通りだ…。


「お前…言っておくが私の子供だからな?」


「でも家族なんですから皆の子供ですよ」


「む。そう言われるとそうかもしれん」


「ね?」


どうやら全員の子供の面倒も見る様だ。流石だ。


「ついでに検診してから帰るとするよ」


「ありがとう婆さん」


どうぞよろしくお願いしやす



「わあ、女の子と男の子ですか!私の姪っ子!…あれ?」


ルー…。リリアーナの予言のことを驚いているのか、それとも、自分が叔母さんと呼ばれる立場になってしまった事に愕然としているのか、少し難しい、あれ?だ。


「勇吾様の子供。私もいつか!」


リリアーナとジネットが落ち着いたから、今我が家で一番子供を望んでいるのは凜だ。しかし、一番若いんだからそんなに気合入れなくてもいいんじゃなかろうか。

ルー、セラ、アリーはそのうち出来たらという感じだ。


「楽しみじゃのう」


「侍女として腕が鳴ります」


アリーさんどうかよろしくお願いします。うちの育児は貴女に掛かっています。でも放っておくと執事、侍女教育になりそう。


子供の将来…。娘の結婚相手は最低限俺より強くないと。譲歩しても俺並みで。

問題はジネットの子であるという事だ。いや、魔の国次第か。ジネットを利用しようとした暗部や、安否を確認しに来たダークエルフ達の事を考えると、かなり注意が必要だ。思った以上に魔の国ではジネットの存在が重い。必要なら直接行くかもしれん。


産まれる前に婆さんに子供の守りについて相談しよう。


「あなた。子供の名前を考えなければいけませんね」


「うふふ。そうですね」


「そうだね!」


そっちはまだ先の話だな。

今は子供の名前を考えなければ!

パパとママが一生懸命考えるから待っててね!

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