正夢の日と名前

リガの街 ユーゴ


「今日は正夢の日ですね」


「おお。今日がそうじゃったか」


朝食の時にアリーがそう言ったが、そうか今日が正夢の日か。


「正夢の日…ですか?」


「なんじゃ東方にはないのか。正夢の日とはの、その日の夜に見た夢が正夢になると言われておるのじゃ。まあ、滅多に聞かんがの」


凜が不思議そうにしているが、東方には無いのか。

この日は普段よく夢を見ている者も見なくなるそうだ。そして、見る事ができると正夢になる。問題は、いい夢だけじゃないという点か。本当かどうかは知らないが、自分の死ぬ夢を見てその通りになった人もいるとか。

まあ、俺に関しては予言とか予知とかは効果が無いから見ることは無いだろう。後、俺とかかわりの深い皆もだ。

試しに一度くらい見てみたいもんだ。


まあ今は子供達の名前だ。悩むなあ



??? リリアーナ ???


「おいでクリス」


可愛らしい息子がハイハイをしている。

そうそう足と手を動かすの。上手上手。このままママの所へおいで。よくできました。あら、抱っこされたいの?うふふ。


「あー!うー!」


抱っこしていると、犬のぬいぐるみにわざわざ宿ってくれたブラウニーがクリスの所へやってくる。クリスは大喜びだが、ぬいぐるみが好きと言うより、宿っているブラウニーが好きらしい。どうやら判別出来ているらしく、本来のブラシに宿ったブラウニーを浴室で見た時も大喜びだった。


「クリスは今日も元気だな」


「あら、旦那様。クリスがいつものをやって欲しいみたいです」


小さな手が旦那様の方へ伸びて動き出す。


「ははは。ほら高い高い」


「きゃー!」


旦那様の方へ移ったクリスが高い高いをしてもらうと嬉しそうな声を上げた。どうやら私がするよりも背の高い旦那様にしてもらう方が嬉しい様だ。

旦那様が降ろすと抗議するように体を動かす。


「うー」


「それもう一回」


何度か繰り返しているとクリスがあくびをした。

あら、お眠かしらママが子守唄歌ってあげましょうね。

うふふ。


??? ジネット ???


「ママ」


「どうしたのコレット?」


料理をしていると幼い娘が声を掛けてきた。


「お手伝いしたい」


「ふふ。そう、じゃあ野菜を洗ってもらおうかしら」


「分かった」


どうやら手伝いたかったらしい。普段はあまり表情を表に出さないが、結構甘えん坊で人と一緒に作業をしたがる。


「お、コレットはママのお手伝いか。偉いぞ」


「えっへん」


キッチンに来た夫が娘に話すと、娘は誇らしそうに胸を反らす。


「クリスはどこ?」


「浴室からブラシ大佐を引っ張り出して庭で遊んでるよ」


「じゃあコレットは後で箒再訓練兵を連れていく」


リリアーナの息子とは仲が良くてよかった。よく庭でブラウニー達と一緒に遊んでいる。


「そういえば3人衆が女の人と付き合ってた。それぞれ違う所でデート」


「コ、コレットにはまだ早いかなあ」


夫は出来るだけこの手の話題を避けようとするが、男親とはこういうものだろう。


「そんな事はない」


「そ、そうかな…」


「うん」


泣きそうになっている。後で慰めてあげよう。


「野菜洗うね」


「ええ。お願い」


「じゃあパパは洗ってくれたのを切ろうかな」


親子で料理。ふふ。幸せだ



??? ユーゴ ???


「お父さん。僕、この人と結婚します」


「よろしくお願いします義父様」


少し長めの金髪に所々に黒の色が混じった、目尻の柔らかいどこか天然そうな青年が目の前にいた。

隣には長い金の髪を巻き髪にした、どこかいい所のお嬢さんがいた。エルフかな?

しかし、よかったよかった。優しい子に成長してこうやってお嫁さんも連れてきたんだ。

しっかりやるんだぞクリス。


「孫が生まれたらすぐ連れてきてくださいね」


流石リリアーナだ。全く考えが変わらん。

しかし孫か。という事は俺はお爺ちゃん?じいじ?へっへっへっへっ。


ん?もう1人…。

ショートカットの銀髪の中にこれまた黒が若干混ざった頭と、若干鋭い目。それと褐色の肌と起伏のある体の女性が…。


「お父さん。私、結婚する」


「達者でやりなさい」


あまり抑揚のない声だが、内心では思いやりに満ちていることを知っている。

というかちょっとジネット!?

お父さん何も聞いてないんだけど!?誰と結婚するの!?


「近くに住むから大丈夫。孫も楽しみにしてて」


ちょっと待って!!

あ!?酒場の店主!?足を引っ張るなこら!?墓穴に埋まってろ!

なに?お前もこっち来い?うるせえ!


「じゃあお父さん。お世話になりました。アレクシアお母さんに花嫁修業してもらってる途中だから、また明日来る」


なんだ、本当に近所なのか。また明日。あとちゃんと戸締りはしなさい。殺虫剤振りまいたけどまだいるかもしれんから。


「分かった。じゃあお休み」


はい、おやすみ…じゃねえ!待って!いかないでええ!!


「バイバイ」


コレット!?

のおおおおおおおお!?



お父さん、結婚はまだ早いと思います!


んん?


左、ジネットとお腹の女の子よし。

右、リリアーナとお腹の男の子よし。


何だ夢か。

ここ数十年で一番焦ったかもしれん。

ん?夢?

んんんん?


「おはようございます。あなた」


「おはようございます。旦那様」


「おはよう」


ジネットとリリアーナの両方が同時に起きたが、なんだか嬉しそうだ。


「あなた、子供の名前で思いついたのが」


「あ、私もです!」


「ちょっと当てていい?」


まず間違いないだろう。


「え?はい」


「どうしました?」


「----とーーー。じゃない?」


名前を言うと、2人とも驚きつつも満面の笑顔で抱き着いて来た。


が。


誰と結婚するの!?パパにちゃんと教えなさい!

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