骸骨
本日2話めです ご注意ください
ユーゴ邸 凜
昨夜はなんてことを…。しかし、ユーゴ殿の体は一見すると普通だが、触ってみるととてつもなく鍛え上げられたからだと分かった。もう少し押せばそのまま褥に…。
いや!?何を考えているのだ!しっかりしろ凜!
だがあの後、そのままお風呂にまで一緒に……。
「凜ちゃん顔が真っ赤ですよ」
「い、いやこれはだな!?」
同室のルーが声を掛けてくる。
彼女には本当に感謝している。この家に慣れない私と出来るだけ一緒にいてくれたおかげで、今では馴染むことができた。ひょっとして親友とはこういうことを言うのだろうか?
「それじゃあお風呂に行くのです!」
「ああ」
贅沢なことをさせて貰っているが、この家では朝と夜にお風呂に入れる。特に昨日は昨夜の浴室の事を思い出して寝苦しかったからありがたい。
既にルーは着替えを準備している。私もそうしなければ。
◆
祈りの国 総長執務室 ユーゴ
いやあ昨日は危なかった。そのまま寝室に連れていかれるかと思った。凜ちゃん意外と大胆ね。
「聞いているか?」
「勿論です。骸骨も詰めが甘い」
「ああ」
甘いな総長。うわの空でもきちんと聞いているとも。
どうやら祈りの国に、骸骨と同じ魔力の波長を持つ使い魔が忍び込んでいたらしい。この間の暴れっぷりで残した魔力の波長と同じ奴が祈りの国にいると、極々一部ではあるが大騒ぎになったらしい。よく見つけたな。
ネズミであったが、そいつを気づいていないふりをして逆探知を仕掛け、今俺に場所を総長が教えてくれているという分けだ。
しかし、使い魔から逆探知ねえ。骸骨の詰めが甘いというべきか、守護騎士団おそるべしというべきか。なかなかできる事じゃない。
「それで奴はどこに?」
「山腹の洞窟だ。送る」
骸骨死霊術師が山の中の洞窟か。お似合いだな。それとも墓地じゃないのかよ言うべきかな?
◆
騎士の国 山の麓 昼
守護騎士団に送ってもらったし、さて、お仕事しますか。
しかし、骸骨野郎に一言いいたい。もっと魔法使いらしく、山全体を魔法の感知とか罠だらけにするとかしろや!一つも感じねえぞ!こんなの普通に探しても分かるわけないだろバカ!
まさかまさかの防御魔法ゼロに、転移で着いた瞬間ポカンとしたわ。どんなに感覚を研ぎ澄ましても、感じるのは山の中の奥にいるうっすらした気配だけだ。多分こいつが骸骨だろうが、会ったら一言言ってやる。もう少し目立て!
さて、転移封じの遺物よし。まあここまで近づいて気配も掴んだんだ。普通の転移なら追えるけど念のためだ。リリアーナの時みたいに、枯れた荒野を経由されると流石に分からんがまず無理だ。異世界だし。
ん?げ!?落とし穴とかあるぞ!?あっちは鳴子だ!よく見ると原始的な罠ばっかりじゃねえか!
あいつまさか軍人上がりか!?死霊術師のくせに!?
しかもゲリラ屋みたいなブービートラップばっかり仕掛けやがって!アナログ派か!?
いや、普通に仕掛けられてる罠は分かるけど、だめだ、ここら一体のイメージがベトナムの山の中になってしまった。俺のイメージ返せよ!
いや、集中だ集中しろ。
ふう。なんとか洞窟まで辿り着いたけど、死体が3つ。多分洞窟の警備兵代わりだろうが、人が近づいたら起動するタイプだな。しかし、察知できなければ起動もできまい。
洞窟の中にも死体がいくつもある。中には装備を見るに、勇者や特級じゃないかと思われるのも。もうすぐ終わるから少し待っててくれ。
洞窟を進んでいるとようやく扉を発見したが、ここにすら魔法の防御無しと来た。徹底してやがる…。銃器とか持ってないだろうな…。
さて、骸骨に薬を消化する胃があるわけじゃないから、交渉といこう。喋っても喋らなくても結果は同じだが。
お邪魔しまーす。
扉を開けると、豪華な金ぴかの衣装を着た骨格標本がなにやら書いていた。よかった迷彩服じゃなかった。変に反撃されると嫌なので、とりあえず手足を飛ばしてしまおう。あと杖も。
シュボッ
「な、なに!?」
自分の拳で骸骨の手足を吹き飛ばすが、椅子から転げ落ちても痛がる様子はない。まあ、そもそも全身骨格標本が動いてるなら痛覚どうなってんだよ?って話になるが。
「どうもお邪魔します骸骨大佐殿」
「な、なんじゃ貴様!?」
さっきまで骸骨が座っていた椅子に腰かけて、床に転がるしゃれこうべに話しかける。よかった、貴様の階級は!?とか聞かれないで。
この骨、一応俺の事を聞いてくるが実際は魔力を集めて反撃しようとしているので、集まっている魔力を手で払いながら霧散させる。お前はもう理科室に飾られるしかないのだよ。
「名乗るほどの者ではありません。ただ質問がありまして、"7つ"と"蜘蛛"の場所を教えて欲しくて」
「何故魔法が使えん!?」
「おいこら、話を聞け」
「ぐむ!?」
話を円滑に進めるために頭を踏んで押さえる。どうやら聞く態勢になってくれたようだ。
「誰が貴様なんぞに!」
「なんだ聞いてくれてたんですね。でも言ってくれないんじゃ死んじゃいますよ?」
「馬鹿め!死を超えた儂を殺す?どうやって!?ははは!」
まあ、死霊術を極めて生ある肉の体から抜け出たんだ。そういうだろう。
だがねえ。
「お前さんおかしいと思わんかい?吹っ飛んだ手足に感覚は?」
「な?なに?」
サンプルが少なすぎるから断定しにくいが、大抵の骨になった不死者の体はバラけても感覚があるようだ。しかもすぐに元に戻る。
しかし、目の前の骨の手足は砕けたまま元に戻らない。
「な、なぜ元に戻らない!?何をした!?」
「お前さんの存在そのものを削ったんだよ」
「どういうことじゃ!?」
面倒だから説明はしない。学者肌の魔法使いにこんな話をしたらそれこそ日が暮れる。
「まあいいじゃないか。大事なことは俺はお前さんを殺せて、ちょっとお話がしたい。それだけ」
「貴様!?」
「じゃあ骨盤いきますねー」
バキッ
「ああ!?なぜ感覚がない!?治らない!?」
頭から骨盤までは無事だったので、まずは下から踏み砕く。
床に砕けた骨の欠片が散らばっていく。
「話す気になった?」
「何をしたんじゃ!?」
「じゃあ次はお腰の骨が逝きますねー」
骸骨が絶叫を上げるが無視して砕く。体が半分になってしまった…。
「あああああああ!?待て話す!何が聞きたい!?」
「ようやくその気になってくれましたか。"蜘蛛"と"7つ"の場所が知りたくてですね」
お互いパパっと済まそうじゃないか。
「言えば助けてくれるんじゃな?」
バキッ
「あああああ!?体が!?体がない!?」
胸骨も砕いたが、これで名前通り骸骨になった。あれ?頭だけは髑髏?どっちでもいいか。
「く、く"蜘蛛"と"7つ"は川の傍で離れて居る!3つ目川の奥じゃ!」
おや?
おやおや?
それは都合がいいのでは?
「言うたぞ!足を離してくれ!」
おっとそうだった。
「ありがとうございました」
バキッ
凜ちゃんにいい報告ができそうだ。
◆
人物事典
グレゴリー:最優先抹殺対象 【特別国家脅威】 個人戦闘力最大評価【死霊術で死体を操った場合特別評価】
不死者であり骨だけである。
"骸骨"のグレゴリーを発見または、それに準ずる有力な情報を入手した場合、即座に帰還し総長に報告すること。万が一戦闘に発展した場合、すぐさま撤退。不可能な場合情報を残す事。できる限り自分の遺体を発見されないように努めること。爆発による自爆等は死霊術で相手に魔力を奪われる恐れあり。
"骸骨"のグレゴリーの来歴はよく分かっておらず、"杯"盟主のリュドヴィックの師匠、あるいは兄弟弟子であるとも言われている。
グレゴリーは魔の国の国家大墓地において死霊術を用い、蘇った死者を使役し魔の国首都を襲撃。多数の犠牲者を出すも死者の制圧自体は成功。しかし、犠牲者の魂を吸収して位階を大きく上げたものと思われている。
死霊術の特性上、抹殺に大量の兵士を用いるとグレゴリーに利するだけになってしまうため、発見した場合は少数精鋭での奇襲を予定。また、殺害した勇者や特級冒険者の遺体をグレゴリーが扱う場合、生前の戦闘力を幾らか保持しているため、特に注意が必要。
現在は、"7つ"、"蜘蛛"、【死亡済み】、【死亡済み】、と行動を共にしており、最優先での対処が必要である。
総長の追記
殺害済み
守護騎士団からの報告
ー出来るだけ骨をかき集めたが原形を保っているのはほぼ無く、ほとんど砕けてしまっているー
ーご自慢の死者の軍勢はどうした?まあ結果は変わらんがなー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます