もう一つの計画
ユーゴ邸 アレクシア
ちうちうちう
おひい様、私はユーゴ様ではありませんよ。しかし、歯は立てずに単に私の首筋に吸い付いている事を考えると、無意識に私と判断している様だ。
おひい様がまだ子供だった頃を思い出す。寂しがるとよく私の首筋を吸おうとしていたものだ。痛いから歯は立てないように教えたが、無意識でも覚えているものですね。きっと教育係の者がよかったのだろう。
昔を懐かしく思って、思わずおひい様の頭を撫でてしまう。だがおひい様だって成長はしている。昨日はこっそりとトマトを食べているのを目撃した。どうやら克服しようとしていた様だが、白目を向いていたのは黙っていよう。おひい様の名誉を守らねば。
「おはようアリー」
「おはようございます」
どうやらユーゴ様も起きられたようだ。私とおひい様を微笑ましい顔で眺めている。しかし、そろそろ起きなければ。
「失礼しますねー」
「あう」
私の上にいるおひい様ごと一緒に持ち上げられるが、おひい様の重さが加わり普段よりもユーゴ様の腕が強く感じられる。出来ればもう少し私の体を強く引き寄せて欲しい。あ、うれしい…。
「それじゃあお風呂に行きますねー」
「…はい」
「ちうーーーー」
ひょっとしておひい様…起きてらっしゃる?
◆
「あの、アレクシア殿。ちょっといいですか?」
「お願いがあります!」
「あら、リン様にルー様。どうなさいました?」
ブラウニーと一緒にぞうきんを操って屋敷の清掃をしているときだった。ルー様とリン様が話しかけてきた。
どうもこの2人、色々と話を聞きまわっているようですが、はて?
「そのう…私、本格的な家事の訓練がしたくて」
ほほう?
「それでですね…暇な時でいいので色々と教えて欲しくて…」
どうやら私に師事したいみたいようですね。よろしい。
「分かりました。私があなたを一人前の侍女として教育しましょう」
そう。私の様な完璧な侍女に。
「え?侍女?えっと、ありがとうございます?」
「アレクシアさん、ありがとうございます!行こう凜ちゃん!」
「あ、ああ」
ルー様がリン様の手を引いてい去って行った。
しかし弟子になったなら、この前2人でユーゴ様の脱いだシャツを回収していたことは黙っていよう。弟子の名誉も守らねば。
「良かったね凜ちゃん!これで花嫁修業もばっちりだよ!」
「あ、ああ。いやしかし侍女?」
「旦那様と結婚したら誤解も解けるから大丈夫!」
「そ、そうだな!」
なにやら2人が言っているが、随分仲がいい様だ。
◆
ユーゴ邸 ユーゴ
「ご主人様、隣失礼しますね!」
「隣と言わずに膝の上へどうぞお姫様」
「えへへ。じゃあ失礼して」
ソファに座っていると、ルーがやって来たので膝の上をにご案内する。最近は常に凜ちゃんと一緒だから珍しい。
「凜ちゃんどうしたの?」
「いまアレクシアさんの所で花嫁修業してます!」
?
??
「凜ちゃん結婚するの?」
地元に婚約者でもいたのかな?いや、それだと地元の事を聞いたときにつらそうな顔はしないはず。こっちきていい人と出会ったのかな?
「はい!ご主人様に!」
え!?俺!?
「なんでまた俺に!?」
歳の差どんだけあると思ってるの!?
「凜ちゃん、優しいご主人様にメロメロで首っ丈なのです!」
すごく力説されてるけど、表現古くない?
「いやあ、でも凜ちゃんならどんな男でも選び放題だよ?それにあんなに優しいんだ男もほっとかないよ」
この数週間で分かったことだが、彼女は本当に優しい娘だ。出来る限り家事も手伝い、この家に馴染もうともしている。。普通の家族に憧れもあるためかもしれない。
「でも凜ちゃんはご主人様がいいみたいですよ。このまま妻になるんだって。ご主人様は嫌ですか?」
「いや、凜ちゃんみたいな子に嫌っていう奴はいないとおもうけど」
そりゃあこんな男を好きって言ってくれるのは嬉しいが。
「よかったです!じゃあ凜ちゃんが決断したら受け入れてあげて欲しいです!皆で幸せになりましょう!じゃあルーはこれで!」
「あ、うん」
行っちゃった。
どうすんべ。
◆
夜 ユーゴ邸 ユーゴ
今日は収穫なしか。まあ、総長によると2、3日くらいで誰か割れそうな感じだったが。
「ただいまー」
「お、お帰りなさいませ」
「旦那様お帰りなさい!」
夜の我が家の扉を開けると、凜ちゃんとルーが迎えてくれたがちょっと様子が普段と違う。凜ちゃんちょっとお化粧してる?ちょっと顔赤いし。
「今日も私のためにありがとうございます」
「いや、気にしないでね」
毎日のやり取りだが普段と違う感じの凜ちゃんにちょっとドキッとしてしまう。
「そうもいきません。それに…ユーゴ殿の無事もちゃんと確かめねば。だ、だ、大事な人なのですから」
「あ、ありがとう」
優しい娘だ。ところで最後の小声もばっちり聞こえたんだけど、お嫁さんにくる?
!?
いかん。朝にルーが変なこと言うから。
「じゃ、じゃあ入ろうか」
「は、はい」
「ね?もう凜ちゃんはその気なのです」
屋敷に入るとルーがそっと寄って来て小声で話してくる。
俺もドキッとしたけど。
◆
夕食も終わって1人で浴室に入っているが、凜ちゃんの事どうしたら…。とりあえず髪洗うか!
ん?脱衣所にルーと凜ちゃん?
なぬ!?
「そ、そ、その!今まで何もお返しをしていないので、わ、わ、私がその!」
「私も一緒にお体お流ししますね!」
バスタオル巻いた2人が突撃してきた!?
しかも凜ちゃんは今にも倒れそうなくらい顔が真っ赤だ!
あ、ちょっと2人ともダメです!
いけません!ああ!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます