穏やか  ジネット

剣の国 ユーゴ邸 ジネット


ん…朝か。

あの人は…。

ちう~~~~~~

あ!?こらセラ!血を吸い過ぎだ!離れんか!あなた!?


「ああ、ありがとうジネット。いやあ血は止まってたけど離すのも可哀そうかと」


「いえ」


首筋を見るが血は止まっている。相変わらず凄まじい肉体だ…。いかん!朝起きたばかりだ!


「お風呂ためてきますね!」


「ありがとー」


ちうーーー


セラめ!さては起きているな!?


キュッ


む?ブラシか。あの人はどうもこいつを気に入っている様だが…。

んん?何を持って…。そ、それは!?あの人が結局着て欲しいと頼んできた水着!?確か競泳水着とかなんとか!?確かに昨夜2人で入った時にあの人が、やっぱり水のあるとこじゃないとね。と言って着たが置いたままだったのか!?盛り上がってしまって存在を忘れていた…。

ええい返してくれ!後でこっそり干しておく!また使うかもしれんからな!


よし魔石を起動した。あの人と一緒に入ろうか…。いや、長風呂じゃすまなくなる。夜まで待とう。

しかしこの魔石、すごい放水量だ。特別性か?


「あ、ジネットさんおはようございます」


「おはようリリ…?」


脱衣所にリリアーナがいたが、お前その乳に挟んでいるのルーじゃないか!?


「うっぷ。助けてお姉ちゃんー」


「お前何をしとるんだ!」


「?いえ、ルーちゃんと一緒に入ろうかと」


「窒息死させる気か!お前そのうち、その乳で人を殺すぞ!」


「そんなまさか」


まさかもあるか!あの人をしょっちゅうその乳に埋めているんだぞ!


「それではー」


「お姉ちゃんもはやくー」


ルーを持ったまま浴室に消えていった。意外と筋力あるなあの色ボケ聖女。ルーを抱きかかえたままとは。

私も入るか…。

ん?

待てお前ら!着る服は!?まさかそのまま寝室から来たのか!?おい!?


「いいお湯ですねー」


「そうだな」


「すーい」


こらルー、風呂場で泳ぐな。

いや、水着を着てた私が言っても説得力が…。


「皆さんおはようございます」


「ああ、おはようアレクシア」


相変わらずの無表情だ。寝室ではかなり違うが。

腕に抱えてるのはセラか…。


「おひい様、着きました」


「洗ってくれアレクシアー。わし吸血鬼じゃから…すう」


「はいはい」


嘘つけ!始祖直系の王族は朝夜関係ないのは知っとるぞ!


「髪をお流ししますね」


「はーいなのじゃ…すう」


嘘寝ではないか!甘やかされたいだけだな!?



「やあ、ジネットさん!今日も美人だね!」


魚屋の主人がそう言ってくるが、ふん、当然だな。あの人といつも愛し合ってるのだ、妥協はない。


んん?小僧共か。


「おっさん聞いたぞ!今度は誘拐したんだってな!」


「流石だな!」


「そろそろお昼ご飯」


「しとらんわ!あ、いや、そう捉える事も…」


よく話しかけてくる小僧共に反論するが、まあ確かに花嫁泥棒は誘拐と言えるかもしれん。


「マジでしたのかよ!?」


「やべえぞ!」


「ビスケット希望」


「ええい!ちゃんとした同意のもとだ!」


普段傍にいて思ったが、夫はリリアーナと同じように、少し父性を持て余してるように感じる。まあ、リリアーナは持て余してるというか垂れ流しているが。


「同意の誘拐ってわけわかんねえよ!」


「そんなもんねえよ!?」


「チョコでも可」


「ええい!痛い所を突きよってからに!ほら!チョコとビスケット両方やるから言いふらすんじゃないぞ!」


「ありがとおっさん!でも結構噂になってるぞ!」


「まあ仕方ないんじゃないか?」


「言ってみるもの」


「なんだと!?どんな!?」


「じゃあなおっさん!」


「またな!」


「またね」


「あ!?おい!?」


どんな噂でも私は気にしませんよ、あなた。



「やあ婆さん」


「いらっしゃい坊や。フェッフェッ」


何度か夫ときているが、相変わらず得体のしれないエルフの老婆だ。これほど年老いたエルフなど他に存在するのか?エルフも我々ダークエルフも、余程でなければ死ぬまで若いままだが…。


「今日は何の用だい?精力剤かね?」


「ちげえよ婆!?」


「まあ実はまだまだ余裕だものねえ」


「そこから離れろ糞婆!!」


なに…。夫はまだ余裕を持っていたのか…。

しかし、この老婆の前だと、夫はなんというか…若返るようだ。口調も少し普段と違う、荒い言葉使いになる。

羨ましいのか、なんというかもやもやする。寝室で普段と違い荒々しく夫に…。いや、まて落ち着け。今度買ってきていた兎の耳を着けて狼になって貰おう。また意識が別に。


「はあはあ。指輪を送ったから補充しようかと思ったんだよ」


「フェッフェッ。ようやく女運が向いて来たようだね」


「うっせえ」


まあ、変な老婆だが、この指輪を夫に売ってくれたのは感謝してもしきれない。


「ところで、その気にさせるお香があるが買ってくかい?」


「いらねえっつてんだろ!?」


「坊やに言っとらんわ」


「…え?」


わ、私か!?

まて、今の持ち合わせは…。頂こう。


「ジネット!?」


ごめんなさい。でもちょっと襲われてみたいというか…。


「フェッフェッ」


夕食も終わり、のんびりしている夫の隣に座る。


「きゃっ。もう仕方ない人」


「こんないい匂いさせてるジネットが悪い」


持ち上げられて正面向きに膝の上に乗せられ、顔を私の首のあたりに埋める。

何処からか出した櫛で髪を梳かれ始める。


「あなた。実は指でされたほうが嬉しいです」


「あら。これでよろしいですかな王女様?」


「ええ。苦しうないです」


「はは」


「ふふ」


そのまま、夫を抱きしめながら体を寄せる。

なんて幸せな。


「あー!?お姉ちゃんだけずるいです!」


ルーか。悪いが暫く譲らん。

ふふ。


兎の耳よし。よく分からん網目のタイツと服よし。お香よし。

いざ!!



ふふ。昨夜ははすごかったな。ふふふふふ。

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