日々
剣の国 sideルー
リリアーナお姉ちゃんも、段々街に慣れてきたようだ。
お勤めの教会での活動も順調らしい。たまに、お年寄り達から拝まれているけど。流石は元聖女。
でも、朝早くからは全く活動できない。まず、現実に引き戻さないといけないからだ。
寝室では、今でも母性が爆発している。
ご主人様は、ダメ男として位階が上がってしまう、と危機感を持っているみたいだけど、別にいいんですよ?
今度、3人で甘やかしてあげよう。
「ご主人様。この野菜はあまり小さく切らなくても大丈夫です」
「う、うん」
ほんとはご主人様に手料理を食べ続けて貰いたいけど、どうしても教えてほしいと言われて、押し切られた。
気にしなくていいのに。
◆ ◆ ◆
sideジネット
うーむ、あの色ボケ聖女め。
寝室がとんでもない事になってるな。
断じて私達姉妹のせいではない。そうとも、途中から記憶は無いが全部リリアーナが悪い。
しかし、奴め。途中まであんなにベタベタと甘えて抱っこまでせがんでおきながら、急に母の様にあの人を甘やかそうとするとは…。
私だって!!
いや、それよりも掃除だ。
ん?なぜまた私の下着が!?
◆
最近、視線が気にならなくなってきた。
ようやく街の男共も、私を見るのは懲りたらしい。思いっきり殺意を込めて睨んでやったからな。
「お待ちをジネット様!私です!"蒼い空の美声"アランでございます!」
この吟遊詩人まだいたのか!!
「消えろ」
「今日こそは、貴女のために作った歌を聞いてください!」
股間を蹴り飛ばしてやろう。
「吟遊詩人殿、以前にも言いましたが、彼女は私の妻でして」
「む!?破廉恥男!」
「殺すぞ貴様」
「おお、やはり美しい御声。お待ちください、今歌いますので」
きゃっ、あなた!?わ、私を抱っこ!?
顔が近づいて!
んっ。
「な、な、な!?お姫様抱っこをしてキスだと!?この、日の高い時間に!?」
「愛してるよジネット。ジネットがいなきゃ俺はダメなんだ」
「ああ!あなたぁ!私も!私もあなたが!!愛しています!」
今日のお夕飯、私が食べさせてあげます。
◆ ◆ ◆
sideリリアーナ
「リリアーナ様、今日もありがとうございました」
「いえ、私に出来る事なら喜んで」
リガの街の教会の司祭は、歳を取った女性の方だった。ジロジロ見られることが無くてよかった。
「おお、リリアーナ様」
「ありがたや、ありがたや」
この街に来て、一番困ってしまうのは、お年寄りの方々が私を拝んでくることだ。
礼拝に来ている方達だけだが、それでも結構多い。どうしましょう…。
あっ旦那様だ。
「お疲れ様リリアーナ。帰ろうか」
「はい!」
お勤めの行きと帰りは、旦那様が一緒に来てくれる。しあわせ。
◆
「あ、おっさんだ!」
「久しぶり!」
「おっさんおっさん」
まあ、子供達が。
「おお、がきんちょ達よ。そこを退くのです」
「聖女様をかどわかした罪で荷物を没収する!!」
「没収だ!」
「お菓子お菓子」
あらあら。
「ええい!どこでそんな言葉を覚えた!それにかどわかしとらんわ!ラブラブじゃい!!」
だんなさまぁ。
「ほれ、クッキーじゃ。どけどけい!」
「よっしゃ!」
「やったぜ!」
「おいしい」
わたしもこどもほしいです。
「じゃあな!」
「またな!」
「ばいばい」
「おう気を付けて帰れよ!ん?」
あっ、だっこしてくれたぁ。
「やっぱ、かどわかしてんじゃん!」
「見たぞ!」
「次はなにかな」
「ラブラブだっつーの!!」
あぁ。
「誤解を解くためにもこのまま帰ろうか?」
「はいぃ」
みなさん、わたしたちらぶらぶですぅ。
◆ ◆ ◆
sideユーゴ
いやあ、お姫様抱っこしたまま、大通りを帰って来たのはやりすぎだったかな。
リリアーナが離してくれない。
食事の時もだ。しかも、なぜか甘えん坊モードじゃなくて、甘やかしモードでだ。食べさせてもらった。ジネットからもだ。ルーはニッコニコ。
マジでヒモに一直線だ。これはいけない。
「ご主人様、お風呂はどうします?」
「あ、入る入る」
しかし。
「きゃっ、ご主人様!?」
「今日は、ジネットとリリアーナは抱っこしたから、最後はルーだよ。お姫様」
「ご、ご主人様!!」
よしよし。
さて、ルーと引っ付き虫になってる二人を連れて入浴だ。
◆ ◆ ◆
はあはあはあ
やばかった。危うく幼児退行するところだった。
3人とも俺を甘やかしまくって来た。
とんでもない扉を開いてしまった気がする。
いかん。いかんぞ。
気を引き締めなくては…。
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