陰謀終わらず


バルナバめ、使えん奴だ…。力が減るからあまりしたくなかったが、機を見て無理やり聖女を"招く"としよう。そのあと、結界が完全に消えるまで聖女を弄るもよし、そのまま殺して、あの神共の加護を広める要を早めに壊すもよしだ。その時決めよう。


◆   ◆   ◆

祈りの国 ユーゴ


ようやく通知のベルが動き出す予兆があったらしい。このまま、何もなければそれがいいんだがねえ。


リリアーナ様が、ドナート枢機卿にリガの街に行けないか尋ねたらしい。ルーも喜ぶだろう。件のドナート枢機卿は俺の方にすっ飛んできたが。


いや、確かにとんでもない美人だし、最近部屋に行くと、何故か頬を染めてるから、見てるとドキドキしちゃうけど。やっぱ、あれだね、使命を背負って引き締まった表情より、今の柔らかい表情している方が何倍も可愛い。言ったらセクハラだから黙ってるけど。


ルーで思い出した。リリアーナ様に懐きまくってるから、一緒に住むのはどうかと聞かれた。いや、確かにああいう優しい女性と一緒に居られるなら、こっちは幸せだろうけど、向こうは結婚している男の所に来る羽目になるのだ。それなら教会の方がよっぽど住みやすいだろう。そこらへんが分からんとは、ルーもまだまだお子様だな。多分俺より年上だけど。


いかん考えがずれた。

リガの街でも、リリアーナ様が望んでいるなら特に問題ないらしい。街も大きいから教会もそれなりだ。話を持ってきただけに、リリアーナ様がかなり乗り気の様だ。そのことを話しているときのドナート枢機卿め。なにかやりやがったなという目だった。誘惑なんぞしとらんぞ!!本気でやるぞコラ!最近のリリアーナ様はマジで魅力的なんだからな!


いかん、大陸の価値観に馴染み過ぎている。故郷じゃ重婚した上で浮気しようとしている糞野郎だ。といっても、こっちで生きてる時間の方が長くなったからなあ…。


◆   ◆   ◆

sideリリアーナ


「夫も、前の緊張してた顔より、最近の柔らかいお顔の方が何倍も可愛いって言ってました!ルーもそう思います!」


そんな…私が可愛いだなんて…。こちらへきてそんなこと一度も言われたことが…。

可愛いって…。


「そのお顔です!」


「も、もう、ルーちゃん」


いま、一体どんな顔を…。


「あ、それとルー達と一緒に生活すること、考えてくれました?お姉ちゃんは、孤独の悲しみは分からんでもないって言ってくれましたし、夫も、あんな優しい人が来てくれたら、そりゃあ幸せだよって言ってました!」


いっしょ…。せいかつ…。おっと…。しあわせ…。


「で、でもユーゴ様も急に私が来たらご迷惑でしょ?」


「そんなことないです!そもそも、ルーは夫の嫌がることは絶対にしません!最近の可愛いリリアーナお姉ちゃんに夫もメロメロになってます!」


そ、そんな…。ユーゴ様私のことを…。


「皆で一緒に幸せになりましょう!」


みんな…。いっしょ…。しあわせ…。

わ、わたし…。わたし…。


◆   ◆   ◆

「んん…」

ねむれない…。

マント…あった、つけなきゃ…。

あったかい…。どうしてしわができないんだろう…。

あっ、このかたいのゆびわだ…。

うちがわにゆーごさまのおなまえ…。

つけていいよね…。るーちゃんとじねっとさんもつけてるんだもの…。

つけちゃえ。

つけちゃった。

ゆーごさま。

てぶくろ…。そうだ、ひじまでながい、しろいてぶくろがあった。

あれをしたら、ゆびわつけてていいよね。

えへへ、ゆーごさま。


◆   ◆   ◆

sideユーゴ


なんか、一晩会わないうちに、リリアーナ様が滅茶苦茶可愛いうえに、色っぽいんだけどどういう事?そのうえ、妙に夢現なんだけど。

ていうか指輪付けてません?綺麗な純白の手袋してるなと思ったけど。あのマントなら、内側に入れてるだけで効果は発揮しますよ?

よく分からんけど合意と取ってよろしいか?お嫁に来てくれるの?愛しちゃっていい?貴女みたいな優しい人大歓迎だよ?


変なことを考えるな。


「今日のリリアーナお姉ちゃんすっごく可愛らしいですよね!」


「そうだね!」


いかん!思ってたことを当てられて返事してしまった!


「も、申し訳ありませんリリアーナ様!」


「………」

あれ?リリアーナ様大丈夫?ポーっとしてこっち見てるけど、色っぽいよ?そんな顔されると狼さんになっちゃうよ?


「あ、わたしはだいじょうぶです」


微妙に会話が噛み合ってなくない?どうしよう。



本当にどうしよう。勇者と交代するまでずっと見られてたぞ。勇者は恐れ多いからと、扉の外で警備しているらしい。

ほんとのほんとに大丈夫?また抱っこしようか?


◆   ◆   ◆

sideリリアーナ


「やっぱりユーゴ様も、リリアーナお姉ちゃんのこと可愛いと思ってましたね!」


「はいぃ」


あんなにうなずいてくれるなんて…。ゆーごさま。


「それに指輪を着けている事も嬉しそうでした!」


きづかれてたのにうれしがってくれたんだ…。

わたしもうれしい。


「きっと、お嫁さんに来てくれないかなって思ってました!」

およめさん…。ゆーごさまのおよめさん。


「ほんとうるーちゃん?」


うれしいな。


「はい間違いないです!愛してもいいよねとも思ってました!リリアーナお姉ちゃんはもうユーゴ様のこと愛してますもんね!」


「うん。ゆーごさまのことあいしてます」


あいしてます。だいすきぃ。


「きっと、また抱っこしてお家に連れ帰ろうって思ってます!幸せにされちゃいます!夫妻です!奥さんです!お嫁さんです!ユーゴ様は旦那様になっちゃいます!リリアーナお姉ちゃんもそうされたいですよね?」


「はいぃ」


だっこ。まただっこしてくれるんだ。ゆーごさまのおうちにつれていかれちゃうんだ。しあわせになっちゃうんだ。ふうふになっちゃうんだ。わたし、おくさんでおよめさんなんだ。ゆーごさまはだんなさまになっちゃうんだ


「そうなったら、狼さんになっちゃった旦那様に、ベッドで襲われちゃうんです。そしたらそのうち旦那様とリリアーナお姉ちゃんとの可愛い赤ちゃんも生まれちゃいます!」

だんなさまとわたしのあかちゃん。あかちゃんほしいな。いまなんでおなかのなかにいないんだろう。


「皆で一緒に幸せになりましょう!」


「うん!」


しあわせ…。なりたい。みんなでしあわせ。いっしょにしあわせ。

だんなさまとわたしとあかちゃんとるーちゃんとじねっとさん。みんなで。


ー機と見たら徹底的に叩けー

冒険者の格言


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