暗躍2
祈りの国 sideリリアーナ
この数日、悪魔達の襲撃は無く、変わったことと言えば、ルーちゃんと随分仲良くなったことだ。護衛で長く隣で居るため、すっかり話し相手だ。今まで、そういう相手は居なかったからとても新鮮に感じる。
「それで旦那様は、リリアーナ様の服を、もう少しどうにかしてあげたらいいんじゃないかって、ドナート枢機卿に言ってました。会議でも肩身が狭そうだって。ルーもそう思います。」
「この服は聖女の伝統の服ですからね」
やはり最初の、この服への視線はそういう…。自分も思う所がないわけでは無いが仕方ない。
ユーゴ様は護衛の時に、自分が嫌な視線を感じると、そっと前に出てくれる。気を使わせてしまっているが、そう言う所が、彼女達が惹かれた一因だろうか。
「それと、リリアーナ様。体調の方は悪かったりしません?旦那様が、随分心配してました。時折苦しそうだって」
「ええ。大丈夫ですよ」
本当に気を使わせてしまっている…。表情に出した覚えはないのに。確かに、時々酷く辛い。神々の気を蓄え過ぎてしまっている。交代の儀が終わったら、祈りの国を離れなければ。でも、世界樹があるエルフの森にも帰れない。他国の教会を見繕ってくれてはいるみたいだが、人との縁もなく知らない土地で、ハイエルフの私一人で馴染んで生活できるだろうか…。
「そう言えば、リリアーナ様は聖女を止められたら、エルフの森に帰るんですか?」
「え、ええ少し悩んでいて」
「あ、それならルー達の住んでいる、リガの街も候補に入れといてください!近くに住んでくれれば、またお話しできます!」
縁も所縁もない土地へ行くことを思えば、酷く魅力的な提案に聞こえた。傍にいるジネットさんも何故か私の事を気に掛けているみたいだし…。神々よ…。私は一体どうすれば…。
◆ ◆ ◆
sideジネット
ルーの奴め、一体何を企んでいる?やたらと聖女に、あの人の事を押していく。
あの人がドナート枢機卿に大体の事情を聞いたことで分かったが、交代の後、孤独になるかもしれない聖女に、昔の自分達を重ねたのだろうが…。
まさかルーの奴、増やそうとしてないか?
あの人に助けられて、そのまま恋に落ちた自分が言うのもあれだが、普段は気取っているエルフやハイエルフは、あれで結構惚れっぽい。植物のような生活をしているせいか、大きな衝撃を受ければ、そのまま一直線という事になりやすいのだ。エルフの昔話にも、何かで助けられて人間種に惚れたエルフが、障害を蹴散らして結婚したという話があったはず。
自分も聖女に、昔の自分を重ねてしまう時もあるが…。
まあ、いい。今は午後からの、聖女から広場にいる兵士への声掛けだ。
最近、悪魔からの襲撃が無いことと、大体の悪魔が弱まる日中とは言え、広場まで出すとは何を考えているのか。どうやら、負傷した守護騎士達の代わりに補充した、若い兵や司祭の間にその望みがあったようだが。枢機卿達も抑えきれなかったようだな。それほど声が大きかったか、あるいは…。
◆ ◆ ◆
sideリリアーナ
ユーゴ様と合流して、広場に行く。
危険があるのは分かっているが、本殿と自分を守っている兵士の皆に、声を掛けてあげて欲しいと言われれば、断るわけにもいかない。気がかりなのが、話を持ってきた枢機卿達の中に、自分を特に嫌な目で見てくるバルナバ枢機卿がいたことだが…。いくら何でも、それだけではいいがかりだろう…。
広場に着くと大勢の兵と、台まで用意されていた。
台に上ると、やはりというか、あの視線を感じる。でも自分を守るために、命を懸けてくれているのだ、どうということはない。
「皆様、リリアーナです。まず最初に、お礼を申し上げます。本殿と私を守るために、日夜!!?」
悪魔!?そんな!予兆も無しにこれほどの悪魔が!皆を守らねば!
【せパンッ
え?あれ?悪魔は?それにこの格好?え?
「緊急事態に付き失礼します」
ここは本殿の入口?それにこの格好!?抱きかかえられて!??
「少々お待ちを。すぐに片づけますので」
降ろされて、ユーゴ様が何か仰ってたがよく聞こえない…。
悪魔だ!!
総員抜剣!!
周りから出て来るぞ!
そうだ!?悪魔が!!
悪魔が、出て来た瞬間消え去ってく。一体これは…。
「はっはっはっ、物量に切り替えても足りんよ。もう10万倍くらいは頑張ってくれ」
前に立っているユーゴ様の腕がぶれて居る。まさか全部ユーゴ様が?
悪魔があれだけ出て来ているのに立ったままで。…大きな背中…。
「終わったようです。立てますか聖女様?」
はっ!?私いつのまに座って!だめだ立てない!?どうして!?
「おっと…。ではすいません。また失礼します」
きゃっ!?また!??
"聖女様!?ご無事で!?"
"聖女様!?"
「このまま部屋までお連れします」
周りの声がよく聞こえない。…こんなに力強いなんて。
◆
「降ろしますよ」
いつの間に部屋のベッドに。あっ…。
「大丈夫ですか」
だめだ、本当に聞こえない。
「不安かと思いますが、私達が守って見せます。どうかご安心ください。ジネットとルーも隣の部屋にいますので。では私はこれで」
あっ、……ユーゴ様…。
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