最終節、どんな時も、同じ時も

第83話 俺はもう大丈夫だ

夏風邪は穂高のお陰で取り敢えずは治った。

穂高のお陰といえるが.....俺は何だか穂高に迷惑を掛けてしまったな、とつくづく思ってしまう。


それから俺と穂高と智明と鞠さんのその4人で近所の平原までやって来た。

俺達は目の前をはしゃいで行く穂高と鞠さんを見る。

そして苦笑いを浮かべながら穂高に向く。


「はしゃぎすぎるなよ。穂高」


「はい。大丈夫ですよ!アハハ」


「.....」


そんな口角を上げてから見つめている中で俺に向いて、治って良かったなお前、と口角を上げて笑みを浮かべる智明。

俺は、まあそうだな、と肩をすくめる。

それから智明を見る。

そして笑みを浮かべた。


「お前も来てくれて有難うな」


「おう。兄弟がそんな感じだったら何時だって飛んで来るぜ」


「お前は相変わらずだな。ハハハ」


そんな感じで他愛無く話してから。

俺は、じゃあ取り敢えずお墓参りに行って来る、とみんなに向いた。

みんなは顔を見合わせてから、私達も行くよ、と笑みを浮かべてくる。

俺は驚愕しながら目を丸くする。

そして慌てた。


「いや.....でも」


「行きましょう。大博さん。貴方の事は私の事ですから。みんなにとってもみんなの事です」


「.....有難うな。.....それじゃ一緒に行こうか」


そして俺は感謝の言葉を言葉を発しながら一緒にその草原から移動する。

ちょっとした所にやって来る。

そこに.....墓が在った。

俺はその墓を見ながら.....膝を曲げて手を合わせる。


そして.....祈りを込めたりする。

持って来た飲料水をかける。

桶などがこの場所には無いのでどうしようもないので.....こうしている。

そしてこの墓の傍には慰霊碑がある。

俺はそれを見ながら.....少しだけ神妙な顔をした。


「.....ここに大博さんのおじい様とおばあ様が眠っている訳ですね」


「.....そうだな。つまりはそういう事になる」


「.....水害か。俺としては.....あまり経験したくないな。大切な人を残して死にたくはない」


「まあそりゃ俺もそうだ。だけど現に亡くなっちまったからな」


爺さんと婆さんには心からどの様に愛されていたんだ?

と手を合わせる穂高と鞠さんの代わりに聞いてくる様な智明。

俺はその事に顎に手を添えてから、そうだな、という。

愛されていたというよりかは守られていた。

その様な答えになるだろうな。


「.....前にも話したと思うけど俺は.....爺ちゃんと婆ちゃんには.....親父から守ってもらった恩義がある」


「.....そうか。確かにその様に言ってたもんな」


「だから居なくなっちまって結構ショックだよ。今でも」


「.....そうか」


智明は、俺の爺さん婆さんももしこの先居なくなったら悲しくなるだろうな、と少しだけ悲しげに笑みを浮かべる。

そうだな。

人には必ず死が来るから。

悲しくても.....乗り越えなくてはいけない。


「.....大博さん」


「.....何だ。穂高」


「.....これから先も一緒に来ましょうね絶対に。この場所に」


「そうだな。たまにで良いから来てやらないとな」


穂高は、はい、と笑顔を見せる。

俺はその姿を確認しながら、少しだけ柔和になる。

そして立ち上がった。

俺は手を合わせていた穂高と鞠さんを見る。


「.....みんな。有難うな」


「全然構いません」


「そうだな」


「ですね」


俺達は手を合わせるのをやめてから。

また爺ちゃんと婆ちゃんに手を振る様にしてその場を後にした。

取り敢えずは仕事が終わったのでこれからどうするか。

考えないといけないが.....うん。

取り敢えずは遊ぶか。


「大博」


「.....何だ。智明」


「取り敢えずは.....落ち込むなよ」


「.....ああ。もう大丈夫だよ俺は。有難うな」


「.....なら良いが」


智明は、笑みを浮かべる。

そして俺達は墓地から出た。

それから草原に戻って来てから。

俺は伸びをした。


「.....よし。遊ぶか」


「そうですね」


「だな。うん」


そして俺達は草原を駆け出す。

それから互いに笑顔を浮かべつつ空を見上げる。

手を繋いだりし合った。

楽しいと思える時間が過ぎていく。


「.....兄弟」


「大博さん」


「大博くん」


その声を聞いてから顔を上げて。

それから穏やかな笑みを浮かべた俺。

平和な日が過ぎる。


俺は.....もう怖くないんだ、と思う。



それからというもの。

時が流れて6年が経過してから。

俺と穂高は.....結婚した。


新婚生活を送っているのだが.....。

ああ、因みに律子、仲の親父、そして俺の親父。

その他の奴らだが.....幸とか。


律子は少年院から出てからかなり大人しい。

何が彼女を変えたのか知らないが。

俺の親父だが俺に全く関わらず今はのうのうと暮らしている。

仲の親父は.....反省の中で生きている。

幸に至ってはまた不良になっている。


今、俺はその事を考えながら。

目の前の全てを見ている。

時間経つの早いなとか思いながら、だ。


詳しい事は後に記そうと思う。

みんな幸せになっているから、だ。

今ここで記しても良いが.....すべてを描き切れないから。

だから書かないつもりだ。

その中でマンションに住みながら横に居る妊娠している妻を見る。


「穂高」


「はい。何ですか。大博さん」


「.....有難うな。妻になってくれて」


「え?何ですか?いきなり。.....出会った頃から婚約を約束していたじゃ無いですか。アハハ」


幸せそうな笑顔を見せる穂高。

そして.....俺は穂高のおなかを摩る。

それから.....外を見てから。

俺は確かな笑みを浮かべた。

また.....日が昇りそして沈んでいく事を.....想いながら、だ。


「大博さん」


「.....何だ?穂高」


「結婚してくれて.....本当に有難うです」


「.....ああ。幸せだな。俺達」


ただそんな日々を送る。

それだけが.....どれだけ待ち望んだ事か。

思いながら俺達は笑み合った。

そして.....キスを交わす。

それから幸せを噛みしめた。

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