第82話 ラブこそ風邪をぶっ飛ばす力

夏風邪になった。

馬鹿だなと思う中だが.....。

頭がクラクラする中、穂高を見る。

穂高は一生懸命に俺を心配しながら何かを作っている様だ。

俺はリビングで横になったまま.....そのまま本を読む。


流石にスマホを弄る気にはならない。

気分が悪くなるから、だ。

俺はマスクに咳き込みながら本の内容を思い浮かべたりする。

これしか出来ない。


因みに.....穂高には色々と拭いてもらった。

赤面ものだったが.....そんな気力も湧かず.....。

色々と迷惑を掛けている気がする。

申し訳ないな、穂高に。

お礼も今度考えようと思う中。


ピコン


「.....何だ?」


スマホに誰かからメッセージが入った。

俺はスマホを頭を押さえながらゆっくり取りつつ.....メッセージを読む。

そこには、オイオイ大丈夫か、と書かれている。

そして、羨ましいな穂高ちゃんとずっと一緒ってのも、と書かれていた。

このメッセージは智明だな.....いや、羨ましいって。


(あのな。羨ましいか?俺死に掛けているんだぞ。羨ましいもクソも無くね?)


(それもそうだな。冗談だ。.....でも死に掛けているか.....病院行ったらどうだ?)


(それも思ったが1日だけ様子を見てみようと思ってな。それで今に至っているんだが.....)


(そうか。.....でもお前が死に掛けているって話すとどうしても昔を思い出すな。お前.....あの頃マジに顔が死に掛けていたしな.....)


確かにな。

あの頃の俺は死に掛けていたな。

というよりかは消えゆく感じの花だった感じだ。

だから.....死に掛けているって言われても違和感が無い。


(智明には迷惑を掛けたよな。あの頃。すまないな)


(お?風邪のせいか随分弱気だな。お前らしくない。疲れているんだろうな。.....なにはともあれお大事にな。明日でもとりまお前の元に行くわ)


(弱気なのは頭がボーッとするからだろうな。.....まあ明日でも来てくれ)


(ああ。行くぜ。兄弟。んじゃな)


智明のメッセージはそこで終わった。

と同時に穂高が何かを持ってくる。

そこには.....鍋に入った鮭のお粥が、たくあんが有った。

相変わらず.....料理が上手だなと思いながら起き上がって穂高を見る。

穂高は心配そうに俺を見ていた。


「大丈夫ですか?大博さん」


「まあ死んでないから大丈夫だろ。有難うな。穂高」


「全然大丈夫ですけど.....心配です」


「.....穂高がそう思ってくれるだけ俺は幸せ者だよ。有難う」


そして匙を取ろうとしたら。

穂高が先に匙を取った。

それからお粥を掬って俺に首を振る。

フーフーとお粥を冷ましながら穂高は柔和に笑みを浮かべた。

そうして差し出してくる。


「.....ああ。すまんな。穂高」


「良いんです。全然構いません」


「.....じゃあ言葉に甘えて」


それから食べる。

出汁がきいていて相当に上手いお粥だった。

俺は.....涙が浮かんでくる。

穂高が動揺する。

情けないとかじゃない。


ただ.....嬉しかったのだ。

俺の傍に大切な人が居てくれる事が、だ。

昔じゃ有り得なかった。

穂高は匙を鍋に入れてから俺を抱き締めてくる。


「大丈夫ですよ。大博さん。貴方の傍には私が常に居ます」


「すまんな。何だか夏風邪のせいで弱気になってる。ごめんな。本当に.....」


「.....大博さん」


「.....何だ。穂高」


もし良かったらこの前みたいに一緒に寝て良いですか、と俺をモジモジしながら見てくる穂高。

俺は見開きながら、いや。風邪移すし.....、と否定した。

だが穂高は言う事を聞かなかった。

それから俺の場所に潜り込んでくる。

そして俺の額に自らの額をくっつけてきた。


「ちょ、ほ、穂高.....」


「.....私は風邪なんか気にしないです。私は大博さんが心配です」


「.....全くお前は.....」


「えへへ。えへへ。.....えっと。キスします?」


いや、それこそ駄目だろ。

俺は首を振る。

だけど。


俺は否定しながらも.....穂高の髪の毛を撫でる。

そうすると女の子の香りがした。

そして穂高を見つめる。

穂高は安心しきった感じで俺を見ていた。

その事に赤面する。


「大博さん.....」


「.....穂高.....」


俺達は呟き合いながら。

そして俺達は手を取り合った。

それから笑みを浮かべる。

優しい穂高が目の前に居る。

なんて幸せなのだろうか、と思いながら、だ。


「.....大博さん。今日だけもーちゃんって呼んで良いですか。恋人同士って皆さんそんな感じで呼びますし」


「.....ああ。構わない。ちょっとビックリだけどな。ハハハ」


「.....じゃあもーちゃん。私、ちゅーしたいです」


「だから駄目だって.....」


だがその抵抗もむなしく。

俺のマスクを奪った穂高は一気にキスをしてきた。

それから.....濃厚なキスをする。

唇が離れると穂高は、えへへ、と笑みを浮かべる。

そしてもう一回キスをした。


「.....とても幸せです」


「お前.....風邪がうつっても知らんぞ」


「アハハ。その時はまた看病して下さい♪」


「.....いや.....もう.....全く」


俺は苦笑しながらもう一回キスを交わした。

もうこうなったら自棄だ。

穂高が可愛すぎる。

そして何度もキスを交わすうちに。

何だか穂高がかなり色っぽくなってきた。


「.....もし良かったらちょっとエッチな事.....してみます?」


「駄目だ。それはいかん」


「.....えー。ケチですね.....」


頬を可愛らしくプクッと膨らませる穂高。

いや当たり前だろ.....何を言っているんだ全く.....。

そんな事は許されない.....というか今するべきではない。


俺も男だから.....アレなんだが、だ。

でも今するべき時じゃない。

それとこれとの区別はちゃんとしないとな。


「.....それなりの時が来たら.....な。穂高」


「.....もーちゃんが言うなら.....分かりました。.....やめておきます」


「.....理解が速くて助かる」


「.....でもちょっと残念です。雰囲気がそんな感じだったので」


コラッと俺は穂高の額を弾く。

穂高は、きゅん、と言いながら額を抑える。

そして苦笑いする俺。

俺だって男だからそんなこと言われたら.....ってなるけど。

と説明する。


「でもお前はまだ子供だ。俺も子供だ。だから駄目」


「.....はーい」


全く.....。

何を言い出すかと思えば驚嘆だ。

思いながら居ると。

背後から声がしてきた。


「もしもーし。私の存在に気付いていますか?」


「.....!!!!?」


「か、母さん!!!!?何時からそこに!?」


「ついさっきだけどね。全く。本当にイチャイチャねぇ貴方達」


穂高は母さんの存在に目を迷わせてかぁっと赤くなる。

そして俺も赤くなる。

母さんは苦笑していた。

それはそうと何か.....風邪がぶっ飛んだ気がする。

その代わりに汗だくになったが。


「もう。私に気が付かないとか.....」


「ご、御免なさい。母さん」


「やり過ぎたら駄目だからね。貴方達はまだ未成年なんだから」


「そ、そうだね」


母さんは脱衣所に、恋って良いわね、と行く。

一応でもよかった。

エッチな事の話がバレなくて、だ。

俺は.....ため息混じりに.....穂高を見る。

穂高もホッとしていた。

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