2、智明の再試験

第76話 再試験の為の勉強会

海に行ってから。

智明のアホが再試験となっている為に俺達と鞠さんは穂高に泊まり込みの許可を貰ってから穂高の家で英語と数学を猛勉強をしていた。

泊まり込みの様な感じだ。

ボーダーラインは35点以上である。


穂高や甘ちゃん、蜜ちゃんはとっても嬉しそうに俺達を迎えてくれて.....この調子なら取り敢えずは.....勉強が進むだろう。

そう思っていた俺がアホだった。


後ろの床に智明がぶっ倒れる。

そしてゴロゴロし始めた。

子供かよ。


「あー.....かったるい」


「いやお前な.....良い加減にしろよ。2科目も再試験なんだぞ智明。ゆっくりやっている暇無いし夏休みも有るだろ」


「それは確かに分かるが休憩は必要だろ。.....あ、スイッチで遊ぼうぜ」


「いや.....お前な.....」


その様子に苦笑する穂高。

そしてハリセンを取り出そうとしている鞠さん。

俺は額に手を添えながら.....智明を睨む。

とにかく今直ぐにでも勉強して2科目をどうにかしないといけない。

留年も有り得るしな。


しかし再試験とかやった事が無いんだが俺、と思いながら何処が範囲になるか、と考えてみるが。

智明はスイッチを取り出し.....オイ!


「話聞いていたかお前は!!!!!遊んでいる場合か!!!!!アホか!!!!!」


「休憩だってばよ」


「ほーん。休憩だな?本当に休憩だな?10分後には勉強すっぞ」


「分かった分かった。大丈夫だ。俺だから。睨むなって兄弟」


全く。

鞠さんも、智明。言い付けは守って、と促している。

俺は、はいはい、と軽く返事してから.....ジト目でスイッチの電源を入れる智明を見つめる。

何のゲームをするんだ。

甘ちゃんと蜜ちゃんも寄って来た。


「ゲームだ!」


「おう。ゲームだぜ。何をすっかな」


「ててんてんててんてん!.....マリオ!」


マリオだな。

そういやこの前、新作のカセット買ったぜ!

と智明はニヤニヤしながらマリオをやる。


甘ちゃんと蜜ちゃんは、ワーイ、と言いながら智明に寄っている。

俺はその光景に溜息を吐きながら鞠さんを見る。

鞠さんは頭を下げた。

そして苦笑する。


「すいません。皆さん。智明の為に手伝ってくれて.....あの馬鹿」


「.....大丈夫です。気にする事は無いですよ。それは本来は智明が言う事です」


「アハハ。そうですよね。大博さん」


全く。

そういえば。

お姉さんとは鞠さんは上手くいっているのだろうか。


俺は鞠さんを見てから話した。

お姉さんとは上手くいっているんですか?、と、だ。

鞠さんは驚きながらも、はい、と柔和に返事した。

そして頬を掻く。


「.....大博さんのお陰です」


「お母さんとも上手くいっているんですか?」


「.....はい。穂高さん。上手くいっています」


うん、まあそいつは何よりだな。

思いながら穂高を見る。

穂高も智明に近付いてマリオを観ていた。

俺は溜息を吐きながらジュースを飲む。

暑いなと思っていると鞠さんが目の前を見て頷いた。


「.....私、本当に幸せなんです。色々と」


「.....何がですか?」


「今が一番楽しいです。色々有りましたけど.....です」


「.....ああ確かに」


幸せなのは確かだ。

これから先も何も起きなければ良いけどな。

面倒臭いのはゴメンだ。

思いながら智明を見つめる。


「楽しいぞ。やるか兄弟」


「やるってスイッチは1つしかないだろ」


「それもそうだがマリオ以外ならやれるんじゃね?」


ああ、確かにな。

両方のコントローラーで何か出来るかもな。

そうなるとゲームは何をするか.....じゃねーよ。


マジにテストだっての。

俺はスイッチを奪ってから持ち上げる。

智明は、アア.....俺のスイッチ.....、と悲しい顔をする。


「智明。10分経ったぞ」


「えー。ケチー」


「そんな指を口に咥えても可愛くないからやれ早く。お前だけなんだぞ赤点」


「分かった分かった。厳しいのう厳しいのう」


いや、当たり前だろ。

進級したくないのかコイツは。

思いながら見ていると、んじゃやりますかぁ、と数学と英語の教科書を開く。

文字列に頭がクラクラしている様だ。

俺は苦笑いを浮かべながら聞く。


「おい大丈夫か」


「お、おう。何の!」


「全くな。.....先ずは英語するか?」


「.....お、おう。うん」


智明は目元を握りながら。

よし、とガバッと顔を上げて意を決した。

それから英語に立ち向かう、戦う仕草を見せる。


それにやる気になった鞠さんが教えていく。

俺はその姿を見ながら穂高を見る。

穂高は俺に指差す。


「大博さん。こっちの数学とか教えて下さい」


「俺?俺もあまりイマイチだぞ。1年の記憶が」


「大丈夫ですよ。大博さんは頭が良いですから」


「いや、よくないと思うんだが.....」


穂高は、こっちとこっちですね、と効率良く指差す。

そうか、と言いながら俺は教えていく。

そうしていると.....インターフォンが鳴った。

穂高は?を浮かべてそのまま玄関に向かう。


「何でしょうか」


「ん?俺も行こうか?」


「いや、大丈夫です」


そして玄関を開けると。

そこに.....御幸とエリーちゃんが立っていた。

俺は見開きながら玄関に向かう。

それから、どうしたんだ?、と聞いた。


「差し入れ持って来たよ。アハハ」


「です」


「本当ですか?すいません」


穂高が目を丸くしなから受け取る。

桃の缶詰とか入っている。

俺は驚愕しながら、金が掛かっているだろ、と御幸に向く。

御幸は首を振ってからエリーちゃんを見つめる。

エリーちゃんもニコッとした。


「.....私の.....事を助けてくれたお礼です。受け取って下さい」


「.....!.....そうか」


「.....今はもう自殺願望とか無いんですか?」


「.....はい。もう大丈夫です。色々な人に救ってもらいましたから」


エリーちゃんはニコッとする。

俺は、そうか、と笑みを浮かべる。

今も配信をしているのだろうか。

思いつつエリーちゃんに聞く。


「今もVチューバーで配信はしているのか?」


「はい。しています。今は.....みんなの事を隠しながら紹介しています。身元を隠しながら、です」


「.....そうなんですね」


御幸達は、じゃあお勉強の邪魔しちゃ悪いから.....、とそのまま手を振った。

俺達は顔を見合わせながら、ああ。有難うな、と見送る。

そして玄関を閉じた。

穂高が胸元に荷物を抱えたまま。

良かったですね、と俺に笑みを浮かべた。


「.....だな。エリーちゃんが思い止まってくれて感謝だ」


「.....私も衝撃でしたから」


「.....そうだな」


そうしているとバタバタと甘ちゃんと蜜ちゃんがやって来た。

どうしたの?、という感じで、だ。

俺達は顔を見合わせて桃の缶詰を見せる。

そして、食べる?切ろうか、と穂高は笑顔を見せた。

甘ちゃんと蜜ちゃんは、本当に!?、と目を輝かせる。


「わーい!」


「わー!」


子供って本当に単純だよな。

でも可愛いんだ。

思いつつ.....俺は穂高を見る。


穂高はニコッと笑顔を見せてくれた。

そして俺達は荷物を持ったまま奥に戻る。

智明と鞠さんが俺達を見てきてジュースを飲む。

目をパチクリしている。


「ん?誰だったんだ?」


「御幸とエリーちゃんだったぞ」


「んぁ!?ハァ!?お前だけ!?.....いや、呼べよ!俺を!」


「お前は勉強中だろ!何を言ってんだ!」


忙しい奴は出なくて良いっつの。

思いながら俺は溜息を吐きつつ.....大量の食料を床に置いた。

そして俺は中を見る。

そこには本当に沢山の食料が入っていた。

全く御幸の奴.....。


「.....御幸さんも嬉しそうでした」


「そうだな。良かったと思うな。俺も」


「.....大博さん」


「.....何だ?」


貴方に関わってから私の世界って花が咲いた様です。

と満面の笑顔を見せた穂高。

俺は少しだけ恥ずかしくなり頬を掻く。

そして.....俺もだ、と笑みを浮かべた。

そうしていると甘ちゃんと蜜ちゃんが寄って来る。


「お姉ちゃん!早く!早く桃切って!」


「私にも!」


「おーし。俺も食うぜ!」


「私も休憩の意味で貰おうかな」


みんな手を挙げる。

花が咲いた様か。

確かにそれは思うな。


俺も花が咲いた様な感じだしな。

穂高に出会ってから、だ。

今の今までずっと変わっている。


「.....大博さん?」


「.....何でもない。さて。.....俺も食うぞ」


「.....?.....はい!」


穂高はきょとんとして?を浮かべていたが桃の缶詰を開ける。

色々な缶詰を開けて器に盛る。

かなり色とりどりだ。


それから俺達はオヤツの意味でそれを食べた。

1人で食う時よりも.....何百倍も美味く。

俺は満足だった。

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