第75話 束の間の休息 〜海へ〜

仲の親父である人物。

俺達の最大の因縁の相手だった人が反省をした様な感じになり。

それからというもの俺達は海に癒しの意味で来ていた。


内容としては海に来た理由は俺達が楽しむ事もあるが。

まだ有る。

エリーちゃんの自殺心に満たされた心を壊す為だ。

その為にこの場所まで出てきた。


翌週の水曜日が丁度、学校が休みだった為に海に来た。

この後に智明と共に穂高の家に泊まる予定である。

もう直ぐ夏休みに入るが智明にとってはマジな戦いである。


俺はその中で目の前の遊んでいるみんなを見つめる。

この場所には仲、俺、智明、穂高、御幸、滝水、エリーちゃん、鞠さん、などなどが居てビーチバレーで遊んでいる。

俺は目の前をボーッと見つめる。

するとビキニ姿の穂高がやって来た。

心配げな顔をしている。


「どうしたんですか?大博さん。遊ばないんですか?」


「.....いや、ちょっと今までの事を色々と考えてた。まとめ的な感じで。すまん」


「.....ですか。じゃあ私も一緒に考えます」


「そんな事をしなくていいよ。有難うな」


でも大博さんが悩んでいるなら私も悩みたいです。

だって以心伝心です。

と柔和な優しい笑顔を見せる穂高。


太陽の様な笑顔に俺は眩しく感じながら笑みを浮かべ、そうか、と返事をした。

そして横に体操座りで腰掛ける穂高。

それから聞いてきた。


「.....まだ仲さんの.....お話とお父さんのお話ですか?」


「.....ああ。仲の親父がな。確かに反省の言葉はあったが.....ってそう考えている」


「正直こんな事を言ったら駄目ですけど仲さんのお父さんはあんな目に遭わないと何も分からなかったんじゃないでしょうか。こんな事は仲さんには申し訳無いですけど.....」


「.....それはまたかなり直球な意見だな。でも確かにその通りかもな。俺もそうは思ったりもする」


仲には申し訳ないと思っているな.....俺も。

俺は考えながら仲を目で追う。

そして.....俺は溜息を吐く。

さてこの先はどうなっていくのだろうか、と思ってしまうな。


「仲は大丈夫なのだろうかって思ったりもするんだよな」


「.....仲さんですね。確かにです」


「.....ああ」


そうしていると.....横の方から女子の声がした。

あれ?大博くん、と、だ。

そこには.....胸の大きいお姉さんが.....じゃない。

工藤先輩が居た。

俺は驚愕しながら工藤先輩を見る。


「どうしたんですか?」


「.....私?クラスメイト達と海に遊びに来たの。アハハ」


「.....そうですか」


そんな会話をしていると。

穂高が少しだけムッとした。

ムッとしたというのは俺の視線が胸に向いていたからだろう。

そして.....自らの胸を触っていた。


「.....アハハ。何だか彼女ちゃんに嫉妬されているね」


「.....あ、えっと大丈夫だとは思いますが.....はい」


「.....そうかなぁ?.....あ、それはそうと穂高さん」


工藤先輩が声をちょいちょいと手招きしながら穂高に掛けた。

穂高はいきなりの事に、はい?、と目を丸くする。

それから穂高ちゃんだけに教えるね、とニコッとする工藤先輩。

そして穂高に近寄り耳打ちをする。


「大博くんはね.....」


「え.....え?.....そうなんですか?.....アハハ」


「ちょっと待って下さい。何を話しているんですか?!」


すると互いに頷き合って俺を見てきた。

そして、秘密ー!、と手でバツを作って俺に見せる。

俺は困惑しながら赤面する。

いやちょっとマジに何を話しているのだ。

勘弁してくれよ。


「アハハ。.....でも穂高さん」


「.....はい?」


「.....大博くんの事。守ってあげてね。彼は.....傷付きすぎたと思うから」


「.....そんな分かり切った事。当たり前です。私の.....大切な彼氏ですから」


アハハ、そうなんだね。

安心した、と涙を浮かべる工藤先輩。

過去を知っているから.....出る言葉だろう。

俺は.....そんな工藤先輩を見ながら.....複雑な顔をした。

すると工藤先輩が呼ばれる。


「あ、ごめんね。クラスメイトが呼んでいるからね.....また今度ね。穂高さん。大博くん」


「.....はい」


「.....はい!」


そして工藤先輩は手を振りながら去って行く。

俺達はその後を見送りながら.....笑みを浮かべた。

穂高は.....良い先輩ですね、と俺に向く。

でも胸をジッと見ていたのは許せないです、と炎が上がる様に俺を見てきた。


「す、すまん。爆乳だったからつい.....」


「もー!変態ですね!」


「す、すまん.....」


私だって大博さんを満足させるぐらいの胸は有りますけど。

と俺を見て胸を触る穂高。

オイ!?、と思いながら俺は穂高を赤面で見る。

穂高はニヤニヤした。


「どうですか?アハハ」


「.....その辺で。.....というか俺だけにしとけよ。それは」


「当たり前です。大博さん意外じゃ有り得ないですよ」


そして俺に対してキスをしてきた。

俺はいきなりの事に、オイオイ、とツッコミを入れながらも。

そのまま受け入れた。

腰を抱きながら、である。


「何してんだ!!!!!兄弟ィ!!!!!」


「グァ!?テメェ何すんだ!コラァ!!!!!」


智明がいきなり蹴りを入れてきやがった!

この野郎!いきなり何をしやがる!

俺は思いっきり智明の腹を殴った。

いきなりすぎて反応してしまっただろ!!!!!


「か、カウンターが効くぜ.....ハハハ」


「.....すまん。大丈夫か智明。しかしお前が悪いぞ」


「爆乳先輩に悶えていたお前が許せんかったんだ....ゴファ」


そのまま満足そうに沈黙した。

アンビリカルケーブル断線!活動停止!的な感じで、だ。

俺はため息交じりに智明を引っ張った。

そして日差しの当たらない所まで引っ張る。


「あの.....智明さん.....その、大丈夫ですかね?」


「軽くはやったが。取り敢えずは死んだりはしないだろう」


「そ、そうですか.....」


穂高は苦笑する。

取り敢えずは介抱するか。

俺は直ぐに智明にスポドレを飲ませて。

そのまま膝の下に冷たい氷枕を入れてから。

そして智明を休ませた。



「可愛い雪女が膝枕してくれた。夢の中で」


「.....おう。いっぺん死ねよ。マジに」


「おう。そんな事言うな。兄弟.....え」


2分後に智明は目が覚めた。

そして唐突にその様に話して。

心配して見に来た鞠さんの目が深刻になっている。


眉を顰めていた。

智明は青くなって首を振る。

温泉で見たハリセンが出ていた。


「智明」


「はい。何でしょうか」


「叩くよ」


「.....嫌です」


相変わらずの光景だ。

俺は苦笑いを浮かべながら仲を見る。

仲もみんな苦笑いを浮かべていた。

その中で仲が俺の手を握ってニコッとする。


「有難う。大博」


「.....何がだ?」


「.....君の存在が在ったから親父を止めれたんだ」


「.....俺は何もしてないって」


俺は手を広げながら否定する。

あは。君はやはり遠慮がちだね、と滝水が苦笑い。

そして御幸も、だね、と苦笑。

それから穂高が先陣きって話した。


「皆さん。お昼にしましょう。女子の皆さんでお昼を作りましたから」


「お!?マジか!」


「へえ。すげぇな。いつの間に」


しかし.....ようやっと安泰が訪れたな。

この安泰がいつまで続くかは分からないが.....そうだな。

取り敢えず長く続く事を祈りたい。

その様に思っているといきなり智明が青ざめた。


「.....テストが.....再試験が有るの今現在、忘れていた」


「.....おう。赤点乙」


「ウルセェ!!!!!チクショー!!!!!」


そしてみんな爆笑した。

俺は.....ただ幸せだ。

本当に俺にとっては今が一番.....幸せな気がする。

その様に考えながら空を見上げた。

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