第71話 良和、自らの親父と話す決意をする

夏といえばビキニという事もあり。

今度海に行くのもあり御幸とエリーちゃんの二人と智明で買いに行く事になった。

俺と智明は目の前を歩く御幸とエリーちゃんの後を付いて行く。

周りの通行人は気が付いてない様に静かだが仮にもしエリーちゃんの存在がバレたらヤバいかも知れない。


結構人気のVチューバーだとエリーが告白してきたのだ。

俺と智明と御幸はその事に目を丸くしながら。

そのままありのままのエリーちゃんを受け入れた。


だけどエリーちゃんのVチューバーの感じはほぼエリーちゃんそのものの姿の様だ。

なので直ぐにバレるのではないかと、ヤバいのではないかと。

思っているのだ。


「御幸。何処に買いに行くんだ」


「えっと.....デパートだよ。とは言っても小さいデパートだよね。この街に有るの」


「そうだよな?確かにデカいとは思えない」


「そうだな」


御幸の言葉通りだがこの場所にはデパートは有る。

だが確かに大きさはそこまで大きくない。

簡単に表現すると.....階数の無いデパートで小型だ。

飲み物で表現するならフルーツが少ないミックスジュース的な。

そんな感じである。


「でもそれでも楽しみです」


「.....そうか。エリーちゃんはどんな色彩の水着を選ぶんだ。例えば」


「私ですか?私は.....今がゴスロリなのでフリフリの水着が良いです」


「って事は.....」


智明がモヤモヤと回想に入った。

俺はバシッと智明の後頭部を叩く。

何を考えているのだこの変態。

思いつつ智明を睨む。

智明は、じょ。冗談だってばよ、と否定した。


「何も考えてないって。卑猥な事は」


「当たり前だろ。エリーちゃんを何だと思っているんだ。この変態」


「.....」


エリーちゃんが苦笑している。

ほら見ろ.....智明のせいで表現が出来てないではないか。

全くコイツというアホは.....。

思いながら智明を見る。

智明は、ま。まあそれはさておき、と苦笑い。


「どんな水着であっても可愛いだろうな。エリーちゃんが着ると」


「有難う御座います。でも私もそうですが智明さんも似合うかもですよ」


「俺はこんな顔だから似合わないと思うぜ。っていうか.....海が苦手だしな」


「じゃあなんでこの前は海に居たんだお前。そんなに海が苦手ならよ」


へ?何の事だ?、とすっとぼける様に俺に向く智明。

何の事だ?じゃねーよ。

あれはドッペルゲンガーなのか?

俺はジト目で智明を見る。

智明は、ハハハまあいいじゃねーか、と言う。


「正直に話すと行きたいって言ったからな。知り合いの海の家の人の仕事を手伝いたいって。だから行ったんだ」


「.....ああ。そうなのか。デートしているのかと思ったが」


「デートもデートだ。楽しかったぞ。お前は?」


「穂高の水着を拝んだ」


おー。お前からそんな言葉が出るとはな。

と智明は納得した様に柔和に笑みを浮かべた。

俺は、お前も楽しめたんなら良かったじゃねーか、と会話する。

するとエリーちゃんが、智明さんって彼女さん居るんですね、と笑みを浮かべる。


「因みにはーくんにも彼女が居るよ」


「え?そうなんですか?.....こんな人達と付き合えたら心から嬉しいでしょうね。アハハ。私はまだ付き合ったことが無いです」


「エリーちゃんにもそのうちに良い人が現れると思うがな。俺は」


「.....有難う御座います。智明さん」


アッハッハ!良いって事よ!

と高笑いする智明。

何時も能天気だなコイツ。

と思っていると.....デパートに着いた。

そして目の前を見ると。


「.....ん?あれって.....良和さんじゃ.....」


ワゴンセールの品を漁っている。

革ジャンと180センチ以上の身長で目立つ。

俺は?を浮かべて智明と顔を見合わせてから声を掛けてみた。

良和さん!、と、だ。

すると良和さんは俺達を見た。


「おお。久々だな」


「何をしているんですか?」


「.....まあ端的に言えばセール品の探しだな。お前らは」


「俺達は今度海に行くんで.....色々な買い出しです」


そうか成程な。

と言いながら穏やかにニカッとする良和さん。

すると、おっと。そっちの女の子は初めて見たな。誰だ?、と目を丸くした。

エリーは良和さんに圧倒されながらも頭を下げる。

それから自己紹介した。


「野崎エリーといいます」


「.....そうか。また可愛い女の子だな。ハハハ。俺には似合わないぐらい可憐だな」


「そんな事無いでしょう。良和さん」


俺は実際の所.....ただの元不良だしな。

だから可憐なものとは釣り合わないさ、と苦笑い。

それから、話を長引かせても悪いな、と良和さんは言う。


「.....そういや.....俺の親父がまた何かしたようだな。すまん」


「.....不良の件ですか?」


「ああ。本当に救いようがないな。あの親父。クソとは思っていたがまたとんでもない事を」


「.....気にする事は無いですよ。それに今回は信也さんが助けてくれました」


ああ穂高信也か、と少しだけ苦笑いする良和さん。

俺は目をパチクリする。

何故苦笑するのだ?、と思ったから、だ。

みんなも物知りたさな顔をしている。


「アイツは結構なタフだったな。この地域じゃ有名な不良だったよ。俺も知っているぐらいだから.....な」


「え?マジですか?」


「.....ああ。まさかその鬼の信也が敗北するとは思って無かったよ。俺も」


智明に苦笑いを浮かべる良和さん。

まあそりゃ良いんだが、と手をバチンと叩いた。

それから俺達を見てくる。

話をずっとして悪かったな、と言いながら笑みを浮かべた。


「.....うちの親父は.....何をやるかも分からないからな.....。取り敢えずは今度会って来るよ」


「.....え、でも」


「もうそろそろでもあの人を変えないといけないからな。こんな姑息な真似をさせない様に、だ。だから俺が会いに行くんだ」


「.....」


いくら嫌い嫌い言ってもあの人は家族だしな。

俺が何とかしてやらないと、と少しだけ複雑な顔をした。

その言葉に俺達も顔を見合わせる。

そして俺は不安になる。


「.....話せるんですか?」


「正直言ってまともに話せる、または話し合えるとは到底は思わない。だけど.....もう終わりにしたい。俺としては親父との因縁も君達への迷惑も、だ。だから家族として話すんだ」


「.....でも.....」


「あはは。御幸ちゃん心配しないで。大丈夫だ。俺はタフだから」


そんな事であっても。

あの親父は.....と思ってしまう。

本当に何をしてくるかも分からない。

完璧なモンスターだ。


「さて。暗い話は放って置いて。.....取り合えず俺はバーゲンに戻るよ。.....大博」


「.....はい」


「.....仲を守ってやってくれ。そして周りのみんなも」


「.....はい。分かってます」


そうか、とにこやかに顔を見せる良和さん。

それから、それじゃあな、と手を挙げた。

俺達はそれを見ながら手を挙げる。

そして見送った。


「.....良和さん.....大丈夫かな」


「.....それは確かにな。でもあの人なら.....きっとやってくれそうな気がする」


「.....散々な目に遭って来たもんな。俺達」


「.....」


そんな俺達の表情をくみ取ってか。

エリーちゃんが困惑したような顔をしている。

俺達に対して、だ。


直ぐに俺達は顔を見合わせて話題を変えた。

それはそうと、水着を買いに行こう、と、だ。

するとエリーちゃんが俺達に聞いてきた。


「何かあったんですか?皆さんに」


「.....何にもないよ。エリーちゃん」


「そうそう。アハハ」


「.....だな」


とは言え。

そうは言うが.....。

と思いながら顎に手を添える。

上手く事が運べばいいが、と思う。

だが.....世の中はそんな簡単にはいかないだろうな.....。



人の優しさが尖った氷にしか思えず。

とある歌手が歌った歌の一部だ。

だけど.....今のあの人。

つまり仲の親父はそんな感じだろうと思う。

当て嵌まっている気がする。


「.....兄弟。大丈夫か」


「.....ああ。大丈夫だ。考えていたんだ」


「なにをだ?」


「俺達の行く末だよ」


そうか、とジュースを渡してくる智明。

目の前では女子達がキャッキャという感じで水着を選んでいる。

俺は.....その姿を見ながら笑みを浮かべる。

智明も苦笑する。


「.....何でだろうな」


「.....何がだ」


「仲さんの親父さんだよ。何であんなに歪んでいるんだろうな」


「.....分からない。何でだろうな。.....でも分からないでも無いけどな。俺は」


どういう意味だよ?、と智明がジュースを飲みながら聞いてくる。

俺は、そのままの意味だよ、と答えた。

そしてジュースのプルタブを開ける。

それから飲んだ。


「.....仲さんの親父さんがラスボスって感じだな」


「.....かも知れないな。あの人さえどうにかなれば.....多分みんな笑顔だ」


「しかしラスボスかぁ。倒すのキツイだろうな」


「ゾーマとかじゃねぇか?ラスボスだから」


ん?ゾーマを知ってんのか?兄弟、と智明が目を丸くする。

当たり前だろ。

ド○クエ面白じゃねーか。

俺は苦笑いで智明を見つめる。

智明は、そうか、と柔和な顔でジュースを飲んだ。


「ゾーマとか.....そうだな.....確かにな」


「正直、説得したい」


「.....無理だろ。兄弟。今まで俺達は何をされてきた?」


「.....そうは言うけどな。俺は.....仲と仲を取り持ってほしいんだ」


全く相変わらずだな、と苦笑してニヤッとする智明。

俺はその姿を見上げながら、だろ、と溜息を吐く。

お前のそういう所はマジに嫌いにならないよ、と智明は呟く。

そうか、と返事をした。

そして缶を撫でて見つめる。


「その優しさが仇になるなよ。兄弟」


「.....それは確かにな。今でも恐れている」


「.....お前は.....人の氷を解かす事が出来るからな。容易に。だけど利用される可能性もある。気を付けろよ。何度も言ってるけど」


「.....お前って分析が得意だよな。俺の」


当たり前だろ。

何年間、兄弟と一緒だと思ってんだ。

と智明はニコッとする。

俺は、だな、と笑みを浮かべた。

そして前を見つめると女子達は水着を購入していた。


「.....よし。んじゃ行くか」


「.....だな」


そして俺達は歩き出す。

それから御幸達に手を振ってから。

そのまま合流した。

何も.....起こらないでくれよ、と思う。

本当に、だ。

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