第69話 私は心が無いんだ
衝撃の事実が明らかになった。
信也さんが高校時代に高校で番長だったという。
有り得ない話だなと思ったが.....この前の御幸のデートの時に守っていたし。
十分に納得した。
信也さんは信念も何もかもが強いと思う。
御幸を.....傷付いた御幸を絶対に守ってくれる筈だ。
その様に思いながら.....俺達はお墓を見ていた。
お菓子をお供えし、水をかける。
それから俺達は手を合わせた。
そして.....1分ぐらい手を合わせてから.....改めてお墓を見る。
風が吹き草木が舞う。
その中で.....物言わずな感じでお墓は立つ。
「.....お父さん。お母さん。大博さんが来てくれました。もう私の事は心配しないでゆっくり休んでね」
「.....」
俺は横を見る。
そこには.....無数のお墓が有り、良い風景の感じだった。
相変わらず良い土地だよな、ここ。
立地条件が良すぎる。
「.....穂高。今日は有難う」
「.....何がですか?大博さん」
「俺とデートしてくれて、だ。俺.....嬉しかったよ」
「.....私は大博さんが大好きですから。気にしないで下さいね。私が楽しいから行っただけです。大博さんとデートしたいから行っただけですから」
それでも.....俺はとても嬉しかったよ、と穂高に返事をする。
穂高も、当たり前ですが私もとっても嬉しかったです、と答えた。
それから俺達は前に有るお墓を見る。
お墓は物言わずだが.....何だか俺達に語り掛けている気がした。
それもとても優しく、だ。
穂高の母親と父親がお墓の背後に立っている気がする。
俺はその事を想像しながら.....お墓にもう一度手を合わせた。
それから.....俺が穂高を絶対に守っていきます。
だから見守っていて下さい、と。
お願いをした。
「大博さん。有難うです」
「当たり前の事をしているだけだ。気にする事は無いんだぞ」
「.....はい。でも.....お母さんとお父さんに会ってくれて嬉しいです」
「.....決心の言葉を掛けたよ。二度目だけど」
え?、と穂高は目を丸くする。
俺はそんな穂高に笑みながらこう答える。
穂高を生涯守り抜きます。
だから見守っていて下さい、ってね。
と、だ。
「.....大博さん.....」
「生涯の伴侶として守り抜くってな」
「.....はい。有難う御座います」
そして俺達はもう一度お墓を見る。
それから手を合わせて立ち上がって桶を戻したりした。
ひしゃくとかも、だ。
そうしてから、この後どうします?、と穂高はニコッとした。
「穂高が行きたいところは無いのか」
「.....私は大博さんと一緒なら何処でも行きたいです。.....でも今はそうですね.....カフェに行きたいです。この前にこの場所に出来たんですけど.....」
「.....分かった。じゃあそこに行こうか」
「はい。じゃあ行きましょう」
オヤツの時間になりますし丁度良いかもです、と。
穂高はニコニコする。
俺は、だな、と返事しながら。
振り返って挨拶のつもりで一瞥してから.....墓地を後にした。
☆
「カフェ綺麗だな」
「そうですね。やっぱり此処を選んで良かったです。内装も.....洋風で良いですし」
住宅地に立ち並んだ家の一つ。
そこがカフェだった。
場所としては本当にただの家の様で隠れた場所で分かり辛いと思う。
看板も何も無い。
だけどそんな場所を簡単に穂高は見つけた。
「あまりお金が使えないんですけどね。それでも来てみたかったから。大博さんと.....です」
「.....有難うな。穂高。こんな場所を見つけてくれて」
「いえ。大博さんと一緒なら何処までも探索したくなってきます」
「.....情報通じゃ無いからな。俺。だから助かる」
アハハ、でも私も情報通じゃ無いですよ?
と穂高はニコッとする。
可愛らしく、だ。
俺は.....その笑顔を柔和に見ながら周りを見渡す。
その場所は家の中を改装した造りになっていて洋風の造りである。
とても懐かしく思えて.....そしてかなり親近感を覚える。
素晴らしいカフェだ。
「大博さん」
「.....何だ?」
「今日は楽しかったですね」
「.....そうだな。確かにな」
海が.....一生の思い出になりました。
ただの海でもこんなに楽しくなるのを.....大博さんは教えてくれました。
そんな感じで穏やかな表情を浮かべる穂高。
俺は、だな、と返事をする。
「しかしそれはそうと.....信也さんの件。凄いな」
「アハハ。お兄ちゃんですよね。.....言えば良かったですね」
「.....いや。聞いても信じなかったとは思うけど.....でも納得だよ。本当に」
「ですか。アハハ」
でも穂高の言う事だから信じるとは思うけどね。
と俺は穂高を見つめる。
有難うです、と穂高ははにかんだ。
すると.....注文していたものが女性の店員さんの手で運ばれてきた。
「.....あれ?匙が一本しかない.....」
「.....あれ?」
そんな感じで?を浮かべていると。
店員さんが、アハハ、と笑顔を浮かべた。
それから俺と穂高をそれぞれ見て。
匙は一本で良いかなって思いました、と話す。
俺達は驚愕する。
「そして.....パフェは半額です」
「え?え.....でも」
「良いんです。あなた方を見ていたら.....何だか懐かしくなってしまって」
高校時代にそんな感じでしたから。
と懐かしむ女性の店員さん。
それから.....今は別々の道を歩んでいますが幸せでした。
と俺と穂高をそれぞれ見る。
「.....それにこんな場所に来てくれてそれだけで感謝です。本当に有難う御座います」
「.....」
「.....」
俺達は顔を見合わせる。
それから頭を下げた。
こんな事になるとは思わなかったので、だ。
そしてお礼を言った。
「有難う御座います」
「私も.....です」
「.....いいえ。.....幸せなカップルを見ているとこっちも幸せになりますから」
この先、どんな事があっても乗り越えて下さい。
と女性は笑みを浮かべそのまま奥に行った。
俺は、本当に申し訳ないな、と思いながら.....女性を見送る。
そして.....穂高がこう呟いた。
「あの人はどんな人生を歩んでらっしゃるんでしょうね」
「.....分からないな」
俺達の様にきっと複雑だ。
でも楽しんでいる様に見える。
俺は思いながら.....見ていると電話が掛かって来た。
その人物は.....仲.....なのか?
俺は出口に向かいながら、もしもし、と話す。
『どうやら茶番でも楽しんだ様だな』
「.....!.....アンタか」
『私の病院に診察に来たついでに3人には君が行きそうな場所を伝えた。最初は疑心暗鬼だったが私の言葉には直ぐに納得してくれた。どうも君は落ち着いた場所を選ぶのが好きなようだからな。あてずっぽうだったから見つけるのは彼らに任せたんだが.....どうやら当たった様だな』
「.....信じられない事を。何でそんな真似をするんですか。あくまで嫌がらせをしたいんですね貴方」
仲の親父にそう不愉快そうに話す俺。
するとこの様に話してきた。
言ったかもしれないが私は人に教育方針は妨害されるのを好まないのでね。
それに先に手を出してきたのはどちらかな、と。
俺は眉を顰めて目の前を見る。
「アンタのやっている事は.....異常だ。それに人じゃない。簡単に言うと人でなしだと思う」
『私は人でなしではないとは思う。.....だが.....そうだな。.....確かに言う通り心がもう既に腐りきっている。そんな事は私も分かっているのだ。今更私が異常など言われても.....枯れ木と同じだ。反応はない』
「.....どういう意味だ」
『簡単な事だ。私は心が無い動く人形だと言っている』
風が俺をなびかせた。
俺はその中で?を浮かべる。
それからスマホの画面を観る。
何を言っているんだこの人.....?
心が無いだと.....?
元からじゃないのかそれって.....なんて言ったら駄目かもしれないが。
俺は息を吸い込んで疑問の言葉を発した。
「アンタ.....何処かで人の心を失ったのか?」
『私の親が.....本当にその様な教育だったからな。医者の家系は恐らく半分以上がそんな感じだと思うが。.....というかそんな事はどうでも良い。私は.....仲がちゃんとした大人になってもらいたいからな。仲は.....私の娘だからな』
「.....あくまで教育方針は変えないんだな」
これまでこの人がやって来た事がある。
だからあくまで情けをかけている訳じゃない。
だが.....この人も何かを悩んでいるんじゃないのか、と思ってしまった。
すると仲の親父はこう言う。
『それだけだ。では失礼する』
「.....」
溜息しか出なかった。
俺は.....ただ切れたスマホを観る。
そして青い空を仰いだ。
人は.....何故こんななのだろうか。
その様に.....考えてしまった。
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