第66話 大博が決めた将来の夢

穂高のせいで砂糖を吐きそうになった。

というか既にまあ砂糖を吐いているが、だ。

俺は考えながらクッキーをまるでハムスターの様にカリカリ食べている穂高を見る。

本当に可愛いな.....。

すると穂高は俺の視線に気が付いたようで俺にニコッとした。


「どうしたんですか?大博さん」


「.....いや。美味しいなって思ってな。クッキーが」


「とても美味しいですよね。我ながら凄いと思いました。今日は一番、美味しいです」


その.....大博さんの愛情も入っているから.....です、と言葉を発した。

俺は少しだけ赤面しながら、そうか、と柔和になる。

それから手元にある紅茶を飲んだ。

紅茶は俺が淹れた。

このやり方は.....母親流。


「大博さんの紅茶。とても身体になじみます」


「.....そいつは良かった。この紅茶も傑作だと思う。ここ最近では」


「そうなんですね。.....だから美味しいんですね」


「.....でもお前のクッキーには勝らないかもだけどな。この紅茶」


そんな事無いです。

と穂高はカップを置きながら俺を見てくる。

微笑みながら、だ。

俺も穂高を見つめる。

穂高は両拳を握ってから、ふん、と鼻息を荒くする。


「.....お前は上手いよな。そういう褒める所も。俺はイマイチだから」


「何を言っているんですか?イマイチじゃ無いです。優しいです。だから私は彼女になったんです。アハハ」


俺の手を握って来る穂高。

その姿に、そうか、と返事をしながら少しだけ口角を上げた。

それから俺は窓から空を見上げる。

晴れたな.....と思う。


「さっきはアレだったけど晴れて良かったな」


「はい。まるで祝福してくれているみたいです」


穂高はニコニコしながら俺を見てくる。

俺も癒されながら時計を見る。

そしてびっくりした。

時間が.....夕方5時半じゃないか。


「時間.....大丈夫か?夕方だけど」


「.....あ!もうこんな時間なんですね!大博さんと居るのが楽しくて」


「.....そうか。有難うな。俺も幸せだよ。お前と二人っきりって」


手を握り合う。

穂高が、ですね、と言う中で俺達はキスを交わした。

それから笑顔になる。

そして.....立ち上がった穂高。


「じゃあ帰りますね」


「.....ああ。御免な。まるで追い詰めた様に言ってしまって」


「いえ。大博さんが言ってくれなかったら.....まだイチャイチャタイムの真ん中でした。仕事が.....あるので」


「そうだな。気を付けて帰れよ。甘ちゃんと蜜ちゃんと信也さんが待ってると思うしな」


はい、と満面の笑顔で俺に頷く穂高。

俺はその姿を見ながら.....笑みを浮かべる。

それから玄関まで見送る。

穂高はゆっくりと靴を履きながら.....俺を見てきた。


「甘と蜜が私に配慮してくれたんですけど.....でも甘と蜜だけじゃ不安なので.....はい」


「.....甘ちゃんも蜜ちゃんも優しいよな」


「優しいです。.....もう子供じゃ無いです。本当に大人みたいです」


「.....成長していくのが悲しいよな」


ですね。

何時か.....甘と蜜にも彼氏が出来たら.....。

そんな事、考えたくも無いですけど本当に泣きそうです。

と穂高は目じりに涙を浮かべながら反応した。

俺は、だな、と返事をする。


「じゃあさよならです」


「ああ。気を付けてな。マンションの外まで見送ろうか?」


「いや。大丈夫です。私.....大博さんに迷惑を掛けさせたくないので。お手間ですし」


穂高は優しい感じで言う。

俺は穂高の言葉に甘え、分かった、と返事をした。

それから穂高を抱きしめる。

そしてキスをした。


「.....えへへ。えへ。大博さん。愛してます」


「当然俺もだ。本当に気を付けてな」


「はい。では失礼します」


そして穂高は満面の笑顔で去って行った。

俺は扉を閉める時も.....笑顔だった穂高に手を振りながら。

名残惜しいな、と思いつつ伸びをした。

さて.....明後日だな。

穂高とのデートは、だ。


プルルルル


「.....ん?智明?.....もしもし」


『おう。穂高ちゃんとのデートはどうだった』


「.....何で知ってんだよ。キモイ」


コイツマジキモイ。

何で知ってんだよ.....。

と思いながら眉を顰めて反応する。

智明は、冗談のつもりだったんだが、と苦笑いの言葉を発する。


『イチャイチャだったんだよな?アハハハハ』


「.....お陰様でな。穂高は最高の彼女だよ」


『そうか。そいつは結構だ。.....あ、今日電話したのはな来週の件だ』


「.....来週の?どうしたんだ」


もし良かったら甘ちゃんと蜜ちゃんとかにケーキ買っていかね?、と智明は話す。

そして、仲さんが確かバイトしているんだよな?、と言葉を発する。

俺は紅茶のカップを片しながら、まあな、と返事をする。

でも俺。買って行ったぞ?この前、とも説明する。


『あー。お前もやったのか。成程な.....んじゃ花束買っていかね?穂高の親父さんと.....母親さんに』


「.....お前は優しいな。智明」


『全てはお前のお陰だ。兄弟』


「俺は何もしてねぇよ。成り行きだ」


成り行きね。

そいつは嘘だな、と苦笑する智明。

俺は、いやそうだろ、と少しだけ苦笑する。

智明は、そうは思わないけどな、と言ってくる。


『お前さ、自分って知ってるか』


「.....自分?なんのこっちゃ。哲学か?」


『そんな難しいもんは知らん。だがな。.....そろそろ自分の良い点を褒めても良いんじゃねーかって話しだ。お前は頑張っているけど第3者の様な感じだからよ。いちいち反応が』


「.....」


俺は嘗ての事を全て思い出す。

そして窓から外を見ながら.....、だな、と返事をした。

もう認めてやっても良いかもな、と、だ。

それから暗くなってきている窓に触れてから。

智明に話した。


「智明。俺さ.....将来、保健室の教師を目指そうと思う」


『お?デカくなったな話が。.....つーかマジで?』


「ああ。ガチのガチだ。.....周りで苦しんでいる奴らをみんな救いたいんだ。門松先生に憧れたしな」


『.....そうか。お前が言うなら止めない。お前の好きなようにやれ』


お前は俺の親父か何か?、と言いつつ苦笑いを浮かべる。

その中で、ふと、思い智明に聞いた。

お前の夢は?、と。

智明は、俺?ああ俺ね。俺はちょっと考えられないな将来、と答える。

そしてこんな事を言った。


『.....今はまだ馬鹿だから考えれねぇから』


「お前も自分を認めてやれよな。そんな事無いって」


『.....兄弟がそう言ってくれるから馬鹿じゃないとは思うけどな。感謝だ』


いや、割と本気で卑屈すぎるんだよお前。

と苦笑いを浮かべる俺。

そして空を見上げながら頭を掻く。

智明は、でもお前が将来を決めたんなら応援すっぞ。その後に俺も決める、と言葉を発してくれた。


「智明。永遠にダチで居ような」


『あ?そんな事。ったりめーよ。お前は危なっかしい。だから俺はお前に付いて行くぜ。お前が嫌っても何時までもな』


有難うな智明。

と俺は笑みを浮かべる。

智明は、おう、と返事をした。

それはそうと今度遊ぼうぜ、と智明。

俺は、ああ、と返事をした。


『じゃあな。兄弟。俺勉強っすから』


「ああそうなのか。お前らしくないな。智明」


『やらないと留年するのも馬鹿らしいからな。お前と一緒に卒業してーし』


「.....頑張ってな」


おうよ、んじゃまた明日な兄弟。

智明はその様に言う。

俺は、じゃあな兄弟、と言ってみた。

智明が驚きの声を発する。


『お前が兄弟?薄気味悪い』


「は?意を決したのに殺すぞコラ」


『ハッハッハ。冗談だって。有難うな。そう言ってくれて』


「.....おう。じゃあな。改めて」


そして俺達は電話を切った。

それから、んじゃ俺も勉強すっかね、と思いつつ。

蒸し暑いのでクーラーを付けて。


そのまま近くのラノベを読む。

いかん、智明の馬鹿さが感染したか?

これはマズいな.....。

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