第55話 不良に囚われた律子
滝水と律子は友人関係だったらしい。
だけど今となっては律子のやり方が汚くその関係も崩れつつあるという。
でも滝水は律子の事が気にはなっている様だ。
律子はずっと孤独だという。
だが。
此処まで来てしまっては本気で警察のお世話にならなくてはならない。
アイツは全てをやり過ぎた。
もう戻る事は無いだろう。
時計の針は元には戻らない。
長針も短針も止まらずにずっと動くのだ。
「警察に訴えることが出来た。簡単に言えば警察も脅迫罪などの罪で捜査するらしい。.....律子を。逮捕とか捕まるのも時間の問題だろうな」
「.....それが最もだと思う。じゃ無ければヤバいだろ色々と。既に被害を被っているしな」
俺達はカフェ、ひだまり、に集まっていた。
キャシーさんも少しだけ複雑な顔で俺達を見てくる。
この場には俺、智明、穂高、御幸、滝水、仲、鞠さんが集まっている。
そして議論を交わしていた。
みんなは俺を真っ直ぐに見つめてくる。
「何でそんなに歪んでいるんでしょう.....。その子.....」
「私も噂程度には聞いたよ。暴行を受けたってね」
「.....酷い話ですね」
「そうですね.....」
キャシーさんは頬に手を添えながら、智明と大博、貴方達に悪い事をしたのならそれなりの天罰が必要ね。でも.....複雑ね。どうしたものかしら、と話した。
俺はその話を聞きながらコーヒーを飲む。
どうしたものか、だな。
本気で、だ。
「みんなに感謝だ。俺の親戚なのにな」
「そりゃ当たり前だろ。お前の事なんだから」
「アッハッハ。でもな。嬉しいんだ。.....有難う」
智明は笑顔を見せる。
その様子を俺達は見ていた。
然し警察に頼ったからといえど。
まだ不安は消えた訳じゃない。
さてどう動くか、と思いながら顎に手を添える。
そうしていると.....智明に電話が掛かってきた。
俺達は、まさか、と思いながら見る。
智明は画面を見て眉を顰める。
「.....その律子のお出ましみたいだぜ。.....もしもし」
智明はスピーカーにしながら俺達にスマホを見せてくる。
それから智明は頷く。
そしてスピーカーから声が聞こえてくる。
『智明。アンタ嫌がらせにも程が有るわね。何をしてくれているのかしら。警察に頼るなんて最低ね』
「そうだな。でもお前の嫌がらせは程があるからな。一度は警察に捕まった方が良いと思うんだがお前は」
『.....そうね。覚えておきなさい。これから絶対にアンタを許さないわ』
そうしていると滝水が眉を寄せながら声を発した。
もしもし、律子?と、だ。
律子は驚いたような声を発する。
何でアンタが居るのかしら、と、だ。
「何をしているんですか?貴方は。.....もう止めて下さい。こんな事」
『何で。嫌よ。私は智明にされた事を.....』
「馬鹿と思いませんか?この様な真似」
『.....は?』
馬鹿って何かしら?と苛ついた様に俺達に話してくる律子。
滝水は盛大に溜息を吐きながらスマホに話し掛ける。
馬鹿ですよ、それも子供みたいな、です。
と挑発でも無く悲しげに言い掛ける。
「貴方は昔からずっと孤独だったのを知っています。でもやり方が汚すぎます。幾ら何でもやり過ぎです。.....貴方はきっと一個人を認めてもらいたいんだと思って行動しているのでしょうけど。でも.....失敗ですよ。完全に」
『.....意味が分からないんだけど』
「端的に言うと貴方のやっている事はどんどん孤独にしているって事ですよ。何故こんな表現しか出来ないんですか?だから警察とかも訴えられて動くし貴方は嫌わられるんですよ」
『私の周りには屑しか居なかったわ。だから一から根性を叩きなおして変えてやるって思っているだけだけど。この行動の何処が周りに認めてもらいたいのよ?アホなの?』
アホじゃ無いですよ私は。
貴方の事を心配している人がアホだと思いますか?と滝水は落ち着いた様子で話す。
俺達はただ見守る姿勢で.....様子を伺っていた。
律子は無言になる。
『.....私は認めてもらいたいんじゃない。私自身の正義を訴えているだけ。それだけだから』
「だからそれが駄目だって言っているんです。何時か天罰が下りますよ」
『何で正義感を持っている人に天罰が下るのか。貴方も随分と頭がそっち方面に向いたようね。智明に代わりなさい』
「智明さんは何も悪くない。だから変わりません」
いい加減にしないと本気で怒るわよ、と律子が話した瞬間。
ドガッシャンと音がした。
そして、何!?ちょ。何をするの!、と声がブチッと切れる。
何だ!?と思っていると。
声がした。
『コイツだっけ?俺達を馬鹿にしていたの』
『このまま連れ去りますか?』
『だな。じゃあ俺、そっち持つわ』
そしてそのまま声が切れた。
俺は?!と思いながら見ていると。
滝水が顎に手を添えた。
それから考え込む。
「.....これもしかしたら不良に連れ去られたかもしれないです」
真剣な顔で俺達を見てくる滝水。
いや、真面目な顔をしているけどとんでもない話なんだが。
ちょっと待ってくれ。
いきなり話が飛びすぎだと思う。
俺は驚きながら滝水を見る。
「何でそうなるんだよ?」
「.....不良の人達が煙草を吸っていたりしたら注意していました。それで.....」
「ちょっと待て.....智明、マジかこれ?」
「有り得るかもな。何でかって言うとそれをやってから勝ち誇ったような顔をするしな。アイツ。癖なんだろうけど恨みは募られていると思う」
そうなのか。
でもこれ幾らアイツでも救出に行った方が、と思ったのだが。
智明に止められた。
じゃあ聞くが一体どう救出するんだ、と、だ。
何処に居るかも分からないんだぞ、と。
「これはもうしゃーないと思うぞ。警察に電話してからそれで終わりにしよう」
「しかし.....それは」
「お前を嫌がらせしたんだぞ。それを救いに行くのか?アホらしくないか?」
「.....まあそうだけどよ」
でもそれって人として終わっているだろ。
不良に誘拐されたとかされないとか以前に。
と思いながら智明に説明する。
智明は俺を見ながら顎に手を添える。
「でもまあ確かに。ほったからして死んだら元も子もないしな。.....キャシーさん」
「.....そうね。不良を制圧する喧嘩なら任せてちょうだい。オホホホ。本当はこんな事はしたく無いんだけど」
「.....私のお兄ちゃんも連れて行くか?」
「でもこれ、警察の方々に任せた方が.....」
良和さんを連れて行くの有りだとは思うけど。
でも忙しいだろ、良和さん。
警察を待つのも良いかも知れない。
今、御幸が電話しているが。
でもそれで良いのか?
と言うかまずこの事、捜査中の警察が取り扱ってくれるのか?
思ってしまう。
そんなドラマなんぞ観た事無い。
滝水が溜息を吐いた。
「ハァ.....仕方が無いですね」
「でもどうやったら探せるか、だが」
「.....探す方法か。どうしたもんかね」
でもちょっと待てよ?
確か.....律子はスマホを落とした。
そのスマホの位置情報を拾得、出来ないだろうか?
でもなあ、と思いながら考えると。
穂高が、あ、と声を発した。
「この辺りで確か.....一軒だけ.....」
「どうした?穂高」
「いえ、先ほど、なにか不良が連れ去る前に聞こえたんです。放送の様な」
「.....本気で?よく聞こえているな。耳が良いな」
はい、大博さん。
でもそこに行っても居るかどうか。
と穂高は俯く。
だが直ぐに、あ、と顔を上げた。
近所にこの街で初めての廃工場が出来ました、と。
そこなら、と、だ。
「.....そこかもな。多分」
「人が居ない場所ね。確かに有り得そうね」
廃工場か.....。
成程な、穂高の家は確かにその辺りだもんな。
何だか知らないけど警察の様な事をしているな俺達。
これだけ手間を掛けさせるんだ。
それだけの代償を払ってもらいたいもんだな.....。
☆
「此処か.....。穂高の家から割と近所だな」
「そうね」
「.....じゃあやりますか」
この場所には危険も有るかも知れないので俺とキャシーさんと智明しか来てない。
目の前には大きい訳でも無いが工場が有る。
2階建ての様な、だ。
俺は盛大に溜息を吐く。
「ったく。本当に囚われのお姫さまって気分だろうな。アイツ。勘弁してくれよ」
「警察には連絡しているんだよな?」
「待てば来るかもな。ここには5分ぐらい掛かるらしい」
キャシーさんは、そんなに待っていたら大変よ、と呟く。
一分一秒で何をされるか分からないわ、とも。
でも5分だよな?
なら待った方が良いのか?
と思っていると。
タイミング良くドアが開いてそして金髪の短髪が現れた。
俺達に目を丸くする。
「.....あ?何だテメェら」
本当に目の前に居たので直ぐに気付かれた様だ。
するとキャシーさんが脅す様にその金髪に詰め寄った。
いきなりかよ、オイオイ、と思ったが。
手遅れだった。
キャシーさんは金髪をジッと見据える。
金髪は少しだけタジタジしながら身を退く。
迫力あるしな.....キャシーさん.....。
投げキッスをしながら問い詰め始めた。
「貴方。アタシの今からの質問に答えてくれるわね?」
「は、はい?」
「この場所にとある女の子が誘拐されているわね?その娘を直ぐに出しなさい」
ギクッとした感じで。
不良は様子を変えながら少しだけ眉を顰めてナイフを取り出した。
そして何で知ってんだよお前ら!
という感じで話した。
コイツ.....誘拐に慣れてない感じがする。
するとキャシーさんはバシッと不良の手を叩く。
まさかの高速と痛さ故か。
不良はナイフを足元にボトッと落とした。
それを蹴っ飛ばしてから。
それから不良の肩をニコォッとしながら掴むキャシーさん。
うわーこれは嫌だろうな.....。
「今直ぐに連れて来ないと.....嫌な事をするわよ。例えば私のウーンチュパみたいなキスを貴方の唇に.....」
「わ、分かった!参ったよ!」
スゲェ勝ち方だ。
俺は見つめながら智明と共に苦笑する。
それから不良は室内に案内した。
そして俺達も入る。
それから2階を見上げると。
気を失っている律子がその場所に縛られていた。
キャシーさんは手をバキバキ鳴らす。
さて、と言いながら、だ。
その短髪でない金髪の他の不良が煙草を片手に顔を見せた。
かなり大きめの男だ。
「大山。どうした.....というか誰だそいつら?」
「コイツら.....女を追って来たんです!」
言葉に目を丸くするその不良。
そんな中でキャシーさんは見据えながら言葉を発した。
その娘を放しなさい。
捕まりたくなかったらね、と。
目の前の不良は眉を顰めた。
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