第53話 調和の破壊

この世界には調和というものが有ったりする。

それが今だ。

しかしながらアイツは。

律子という女は。

その調和を破壊しようとしている。


何をしに来たのか全く分からないが。

不愉快さしかない。

思いながら俺はテレビ画面を見る。

穂高と甘ちゃんそして蜜ちゃんは任天〇スイッチで遊んでいる。


「兄弟。どうしたんだ?」


「.....何でもないさ。大丈夫だ」


「おう。ほれ。紅〇花伝持って来たぞ」


「いやお前。知ってるだろ。甘い紅茶は苦手だ.....」


まあそう言うな。

ビターなお前の心すらも溶かしてくれるかもしれねぇぞアッハッハ。

と爆笑する智明。


コイツ.....。

と思いながらもその紅茶を受け取る。

そしてペットボトルを開けた。


「ところでお前さん。どうやら律子で悩んでいるようだな」


「.....分かるか?流石だな。お前」


「分かるさ兄弟。何年お前と一緒に居ると思ってやがる?ハッハッハ」


「.....そうだな」


そして智明は甘くない紅茶を.....オイ。

いや、初めからそっちを渡してくれよ。

何で俺に苦手な甘い紅茶を渡してんだよ。

思いながら見ると智明は(・∀・)ニヤニヤと言う感じで俺見てくる。

そして笑みを浮かべた。


「兄弟。お前はそっちがベストだぜ」


「覚えてろよお前。コーンスープを飲ませてやるぜ。お前の嫌いな」


「おう。止めてクレメンス」


「喧しいわ。絶対に飲ませてやる。覚えてやがれ」


恐れをなして青ざめる智明。

俺はその姿にニヤッとしながらも。

直ぐに真剣な顔になる。

そして聞いた。


「しかしお前、大丈夫か。智明」


「.....俺か?俺は何時も通りだ。死んでないからな。アッハッハ」


「.....だったら良いが」


ま。大丈夫じゃ無い時はお前に頼るさ兄弟。

と話しながらニタッとした智明。

俺はその姿を見つつ。


その時は絶対に相談してくれよ、と話した。

智明は、オウ、と返事する。

それから複雑な顔になった。


「でもな。正直言ってお前らを巻き込みたくない。だから俺はまあ.....一人でやるさ」


「それをやったらぶっ殺すぞお前」


「.....だよな。だから俺はお前に頼る。もしなんかあったらな」


「.....そうしろ。じゃ無いと俺が困る」


お前は本当に優しいよな兄弟。

アッハッハ、と笑顔を見せる智明。

それから、冗談は抜いて本当に感謝してるぜ、と言う。

俺は少しだけ笑みが零れる。

そうしていると.....智明の家の電話が鳴り響いた。


「.....あ?何だよ一体」


忘れていたがこの家には智明しか居ない。

その為、智明は一人で色々とやってくれていた。

俺は智明を見送りながら目の前のテレビを見つめる。

スーパー〇リオを、だ。

すると智明が眉を顰めてやって来た。


「兄弟。ちいと来てくれ」


「何だ?どうした智明」


リビングから出る。

それから智明に向いた。

智明は.....こう話す。

顎に手を添えながら、だ。


「.....律子だ。だけど何かおかしい。お前が電話に出てほしいそうだ」


「は?どういう事だ」


「.....分からないが話が通じない。何かあったら言ってくれ」


「.....」


何か嫌な予感がする。

俺は保留になっている電話に直ぐに出る。

すると律子の声がした。

俺は眉を寄せる。


『もしもしぃ?』


「.....波瀬ですが。何の用ですか」


『アンタさっき、智明の友人って言ったわね』


「......それがどうした。嫌がらせか」


俺は目の前の壁を見ながら話す。

すると律子は。

とんでもない事を言い出す。

それは俺の怒りのボルテージを.....上げるものだった。


『七水って人が居るじゃない?そこに。私ねその子達の顔を見た事が有るんだけど.....私の妹がどうも知っているみたいでね。こう言ったの。七水って.....私が通っている学校でいじめている子だけど、って』


「.....お前.....それはどういう意味だ」


『まあつまり、私の妹が貴方達の妹をイジメているの~』


「.....」


小馬鹿にする様な言葉。

こんな怒りは久々だが落ち着け。

思いながら深呼吸してから律儀な言葉を発した。

あくまで相手を怒らせるつもりは無い。


「.....だからどうした?全く怖くない」


『.....あらそうなの。これで怒ると思ったんだけど。でもそうね。怒りのメーターが上がらないんなら仕方が無いわね。じゃあもう一つ。その事を七水さんにばらすわ。どうやら知らないみたいだから全てを』


「.....マジに妬まれたいのかお前。そんな事をしてみろ。それで穂高を傷付けるのなら俺はお前を絶対に許しはしない」


『アッハッハそうなの。.....面白くなってきたわ』


コイツ.....。

電話を握る手が強くなる。

その事に智明が、大丈夫か大博、と聞いてくる。

俺は深呼吸をもう一回した。


「嫌がらせをするのが趣味みたいだな。お前。目的は何だ」


『決まっているわ。私より幸せな智明の幸せを食い潰すのが目的だから』


「.....そんな逆恨みで.....最低だな。幸せなんて変わるもんだろ」


『だから?現に智明は幸せになっているから。妬ましいのよ』


駄目だ話が通用しない。

思っていると受話器を智明が奪い取った。

それから.....大声で話す。


「よお。律子。お前さ俺の友人をたぶらかしているみたいだけど」


『ええ。そうよ』


「もし万が一にでも大博の幸せを壊す事が有ったら.....その時は許さないからな。絶対に」


『.....アッハッハ!出来るもんならやってみて』


智明のオーラが心底の怒りに満ち満ちている赤色に見えた。

俺はその様子を静かに見守る。

そうしていると、大博さん?、と不安そうにドアが開いた。

大丈夫ですか?と穂高は聞いて来る。

それに対して俺達は顔を見合わせて頷きながら返答した。


「大丈夫だ。穂高ちゃん」


「そうだな。智明」


そしてガシャンと俺達は電話を切った。

これ以上話していても何も解決しないと思う。

そう判断したから、だ。

というかもう不愉快しかない。


「.....智明。すまないが内緒で」


「ああ。大丈夫だ。話したりしないさ」


それから俺達はリビングに戻る。

そしてゲームを楽しんだ。

何でアイツはあんなに歪んでいるのか。

それを考えながら、だ。



「という事で次は何する?」


「いい加減勉強すっぞ」


「オイオイ兄弟。つれねぇよ~」


「アホお前。勉強するって言ったろ」


智明は涙目で俺を上目遣いで見てくる。

ざけんなお前キモいわ。

お前は美少女キャラか二次元の。

俺はゾッと思いながら宿題を出す。


「私!さんすうする!」


「そうだね。蜜」


「良いわね。頑張って。私も数学するからね」


3人は笑顔を見せる。

この笑顔を絶対に破壊したりはさせない。

意を決しながら.....俺も春休みの宿題を出した。

それからやり出す。


「そういや智明。鞠さんとは上手くいっているのか」


「おうよ兄弟。この前は.....お気に入りのエロ本を燃やされたぜ.....」


「自業自得だろ。お前」


「いやしかし、ないわー。いきなり来て燃やされたんだぞ。俺の玉ちゃんを」


つうかエロ本の話を年頃の女の前ですんな。

穂高が苦笑いを浮かべているぞ。

ふざけるなよ。

思いながら俺は額に手を添えた。


「あはは。大博さん。私達も負けない様にイチャイチャしましょうね」


「イチャイチャ!」


「イチャイチャ」


「ほ、穂高。恥ずいって」


恋人なんですから当たり前ですよねー。

と甘ちゃん蜜ちゃんに同意を求めて頷く穂高。

いやだからと言え。

恥ずかしいって.....。

智明は爆笑する。


「やーい。照れ屋」


「お前。吹き飛ばすぞ」


「アハハ」


全くどいつもこいつも。

思いながら俺は盛大に溜息を吐いた。

そして窓から外を見る。

晴れ渡ってんのに心が不愉快だな。

あの女のせいで、クソ。


「兄弟。気にすんな。アイツは」


「まあそうだけどな」


「.....ああいう奴も居るってこった。ハッハッハ」


能天気だなと思う。

思っていると、もし良かったら俺のエロ本読むか?、とニヤニヤで言ってくる智明。

俺は、ジト目で智明を見る。

コイツ後で.....殴ろう。


言うなっつってんのによ。

穂高が、えっと、と赤面しているしな。

居心地悪そうに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る