第49話 信也の思い

信也さんは御幸をサポートしてくれている。

そして御幸も信也さんをサポートしている感じだ。

この感じは.....本当に幸せなものだと思う。

何と言うか幸せになってほしい。


で、俺達はそのままショッピングセンターのペットショップまで来た。

のは良いんだが入り口で入ろうとしたら警備員に捕まりそうになってしまい。

非常に危なかった。


御幸と信也さんもそこに居る。

俺達は顎とかに髭を添えながら帽子を深々と被って観察を続ける。

信也さんは御幸に、可愛いよな、とか話し掛けてそれを全て頷く御幸。

かなり良い雰囲気だ。


「お兄ちゃん。流石だね」


「お前の兄貴は本当に良い人だと思うぞ」


「だね」


それなりに観察する。

そうしているとペットショップの店員が御幸と信也さんに話し掛けてきた。

カップル様ですか?と、だ。

御幸は、ホェ!?、と慌てる。

俺達はクスクスと顔をまた見合わせた。


「.....えっとそ.....の。カップルに見えますか?」


「え!?カップル様では無いのですか!?これは失礼を。カップル様専用の写真撮影の無料のサービスが有りましたので.....と思いましたのですが.....」


御幸は、あ.....、と言い掛けるのを止める。

ところが信也さんが次に言葉を発した。

そして御幸を引き寄せる。

それから言葉を発した。


「いえ。カップルです。もし良かったら撮ってもらっても良いですか」


「し、信也さん.....?」


「御幸ちゃん。丁度良いじゃ無いか。記念に」


「.....は、はい!」


俺達はその姿を柔和に見つめる。

良いなぁ.....と思いながら、だ。

そうしていると背後から声がした。

聞き覚えの有る声が、だ。


「よお。お前ら何してんだ?」


「お前.....と、智明!?」


「智明さん!?」


何と言うか智明であった。

俺達を見ながら、何だそのコスプレ.....、と腹を抱えて笑っている。

何と言うかコイツが現れるとは.....。

いかん保っていた何かのバランスが崩れる。


「智明。貴方はちょっと私達から離れて」


「仲さん。酷いですね。何でそうなるんですか」


「俺達は今、御幸を見守っているんだ。デートしてんだよ御幸が」


「え?!マジかほい!?俺も行く!」


アホか話を聞け。

お前が居たらマジにアンバランスなんだよ。

思いながらペットショップを見る。

智明さんバレない様にするなら付いて来ても良いですよ、と穂高が優しく言う。

優しいな穂高。


「ペットショップに入ったね」


「だな。仲。これは刺激しない様にしないと」


「何が見える!?」


「いや、喧しいってかウルセェよ。お前」


智明は、あ。悪りぃ、と後頭部を掻く。

にしても御幸ちゃんがデートねぇ。

良いじゃ無いか、と智明はニカッと笑みを浮かべる。

そういやコイツ、傷治ったのか?


「お前、傷治ったのか?」


「おうよ。全治2日だったかな。完治だ。アッハッハ」


「.....そいつは良かった」


そうしているとペットショップから御幸と信也さんが出て来た。

二人共にとても嬉しそうな顔をしている。

その様子を智明も.....、嬉しそうだな、と言う。

俺は、ああ、と返事した。


「幸せになって欲しいもんだ。あの人達は」


「それは同意だな。お前の事が好きだったんだから」


「私のお姉ちゃんの様な存在です」


「だね。穂高」


信也さんと御幸はまたペットを見る。

すると移動を開始した。

俺達は智明を交えてそのまま追跡する。

今度は書店だ。


「.....書店で何をするか、だが」


「ペットの本じゃ無いか?」


「.....それは有り得るな。確かに。お前にしては珍しく察しが良いな」


「喧しいわ」


全く大博は。

俺を何だと思ってんだ。

と言う感じで智明は俺を見てくる。

え?ただのエロ親父と思っていたが。


「オイ大博。お前さんよ。さらっと今、とんでもない事を考えたな?」


「.....考えてねぇよ」


「何で数秒掛かってんだ!?嘘吐くなよ!?」


「煩い。智明」


あ、はい。

と仲に沈められた智明。

俺達は双眼鏡で二人を見つめる。

やはりペットコーナーを見ている様だな。

手を繋いでる。


「.....おう。マジか。手を繋ぎ出したな」


「大胆ですね。アハハ」


「良い感じだ」


「だな」


ペットコーナーに居る御幸と信也さん。

俺達はその姿を優しく見守る。

そうしていると警備員がやって来た。

あそこです、と店員が指差して.....あ、これマズイ。

俺達は青ざめる。


「通報されてんぞ」


「これはヤバい!逃げるぞ!」


そしてそのまま俺達はその場から逃走した。

のは良いんだが、これで信也さんと御幸を見失ってしまい。

困った事になってしまった。

俺達は困惑する。



「どうしたもんかな」


「見失っちゃいましたね.....」


「困ったね確かに」


「そうなったらゲーセンで遊ぶか?」


智明、お前だけ余計な事を言うな。

と言うか.....遊ぶなら一人で遊んでこい。

思いながら俺達は捜索するが。

手掛かりが無い。

もう出たんだろうか、この店を。


「でもゲーセンは有り得るかも知れないです。何でかって言えば.....女の子はプリクラを撮りたいもんですよ。普通」


「ならマジにゲーセンに行くか?」


「私は騒がしいのは苦手なんだがな」


そうか.....仲が問題だな。

中は騒がしいのは確かに苦手だ。

どうしたものか。

と思いながら居ると穂高が手を上げた。


「じゃあ私と.....大博さんがゲーセンに行きます」


「.....その間、私達は別行動、という事か?」


「そうですね。智明さんと一緒に、です」


「智明と一緒か。でも良いかもなそれも」


うふふ、と怪しげな笑みを浮かべる仲。

智明に余計な事をする様な感じだ。

それだけは止めて欲しい。

智明は俺の友人だ。

改造されては困るんだが。


「も、大博。何だか.....怪しいんだけど仲さんが」


「.....おう。大丈夫だ。加減してくれよ、仲」


「勿論。グフフ.....手取り足取り教えてあげるわ」


「ちょ、大博さーん!」


智明は暴れる。

だがそのまま智明は襟を掴まれて何処かに連れて行かれた。

俺は、ご愁傷様です、と見送り。

穂高に改めて向く。


「じゃあ行くか」


「そうですね。大博さん」


それから俺達は焦りつつ。

そのままゲームセンターまで走る。

中を捜索していると居た。

穂高の予想通りに、だ。


「プリクラ撮ってますね」


「確かにな。お前スゲェな」


「私、カンも強いですから」


「.....ああ。.....じゃあこのまま見守るか」


そして俺達は再度、観察をし始める。

プリクラコーナーから出て来た御幸と信也さんの二人。

それから笑み合っていた。

俺達はその姿を見ながら.....互いに笑みを溢す。


「.....じゃあ信也さん。.....行きましょうか」


「そうだね。えっと、そうだ。最後に行きたい場所が有るんだけど良いかな」


「え?行きたい場所ですか?」


「ああ。俺と穂高と母親と一緒に行った場所だ。噴水が有るんだけどな」


え?と目を丸くする御幸。

穂高も、お兄ちゃん.....もしかして、と呟く。

俺は何の事か分からないが.....。

もしや、と察しはついた。


「こっち来ますね。逃げましょう」


「よし」


それからそのままショッピングセンターを後にした信也さんと御幸。

俺達は仲と智明にメッセージを飛ばしてから。

そのまま追跡を続行した。


で、因みに智明は.....魔法少女のコスプレをさせられていて写真を撮られていた。

笑いしか出ない。

アイツら何をしてんだか。



その場所は街の中央に有りそして綺麗な噴水。

作られたのは10年前なので比較的、綺麗な場所だ。

俺も来た事がある場所だが.....今日はまた別に見えるな。

何だか.....信也さんと御幸だから。


「.....隠れる場所が少ないですね.....トイレ辺りしかないです」


「それが問題かな」


トイレの影に隠れながら。

俺と穂高は信也さんと御幸を見守る。

信也さんは噴水を見つめる。

そして苦笑した。


「この噴水の公園はね。俺と母さんと穂高が.....よく来ていた場所なんだ」


「.....そうなんですね」


「.....ああ。でな。この場所に何で君を連れて来たかというとね。母親に知らせる為だ。天国に居る、な」


「.....?」


今日一日、君と居て本当に楽しかった。

と信也さんは笑顔を見せる。

俺達は.....その光景をジッと見つめる。


そうしていると信也さんは何かを取り出した。

それは.....刀型の、所謂、玩具の様なキーホルダー。

しかしボロボロに見えるが?

最近買ったものでは無い様に見える。

なんだろうか。


「え.....あれは.....お兄ちゃんにとってはとても大切なキーホルダーだよ。お母さんに買ってもらったの。それも最後に8年ぐらい前かな。他人に見せるなんて」


「.....え?マジか」


「そうだね。どうする気なんだろう.....?」


俺達は目を細めながら見る。

その大切なキーホルダーを御幸の手の中に大切そうに収めた。

そして離す。

御幸は紅潮しながら信也さんを見つめる。


信也さんは、これは約束の意味を持つ刀のキーホルダーなんだ。

刀には小さな文字で、叶える、と刻まれている。

母さんが.....最後に言ったんだ。

これにいつか貴方を大切に思ってくれる人に渡しなさい、と。

その人を必ず守ってくれるから、と、だ。


と信也さんは笑みを浮かべる。

つまり.....と思い、俺達は見つめる。

御幸は、え。それってまさか、と呟く。


「栗谷御幸さん。俺は貴方が好きだと思う。もし良かったらこのまま付き合ってくれないかな。君と一緒に居ると楽しいんだ」


まるで研ぎ澄まされる様に聞こえた。

俺と穂高はハイタッチをする。

そして御幸は涙を流しながら、胸元にキーホルダーを押し当てた。

それから頷く。


「.....はい」


その光景は俺たちは一生忘れないだろう。

思いながら居ると信也さんがこっちにやって来た。

え!?と俺達は慌てる。

いきなりの事にビックリする。


「もう出て来て良いぞ。穂高。そして大博」


「.....お兄ちゃん。バレていんたんだね」


「そうっすか.....信也さん」


信也さんは、当たり前だろう、と苦笑い。

既にもうペットショップの時点から気付いてたぞ、と。

だが御幸は目をパチクリしていた。

最後まで気が付いてなかった様で一気に赤面する。

それから、はーくん!!!!!、とポコポコ叩いて来た。


「.....でも良かったな。美幸。お前が幸せになるのが俺達の願いだよ」


「.....ですね。大博さん」


そして俺達は御幸の手を握る。

その手を涙を拭ながら見てくる御幸。

それから笑顔を見せた。

純粋無垢な満面の笑顔だ。


「.....も、もう。.....でも.....有難う」


「おう」


「ですね」


俺達は笑みを浮かべて見つめ合う。

そうしていると背後から、大博ぉ!!!!!助けてぇ!!!!!、と声がした。

俺達は背後を見る。

そこには.....化粧をしている智明が.....えぇ!?

うわ、キッショ!!!!?


「ちょ、待て待て!やり過ぎだろ!仲!」


「アッハッハ。これぐらい良いじゃ無いか」


「良くねぇよ仲さん!!!!!助けて大博!俺が変な方向に目覚める!!!!!」


「don't.touch.meだテメェ!!!!!触るな!!!!!」


俺は智明から逃げる。

それを智明が追い掛けて来た。

俺は逃げまくる。


その姿にみんな笑っている。

俺は溜息ながらも.....良かったと。

心の底から思った。

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