3、様々な光と影

第48話 御幸と信也、デート?をする

さて何事も無くとは言わないが、バスに乗って草津温泉から帰って来た。

俺はお土産を渡し、草津で起こった全てを母さんに知らせてから。

泣きじゃくる母さんを抱き締めてから。

宥めつつ今に至る。

翌日の事だ。


「.....」


「.....デート.....上手くいくかな?」


今現在、俺と穂高と仲は追跡していた。

誰をって?

そうだな、御幸と信也さんだ。

御幸はデートの約束を信也さんにしていたからな。


因みにこの追跡は御幸は知らない。

見守っていこうという事になったのだ。

バレない様にしなければ。

じゃないと意味が無い。


「お兄ちゃん.....御幸さんを万が一にもないがしろにしたら許さないんだから」


「オイオイ。怖いって穂高さん」


「でもそうですよ。大博さん。だって.....御幸さんがせっかく恋をし始めたのに、です」


「取り合えずありったけには変装したけど.....バレないようにしないとね」


だな、仲。

と俺達は御幸と信也さんを見つめる。

果たして信也さんはどう出るのか。

御幸も、だが。


「じゃあさ、御幸ちゃん。カフェに入ろうか」


「いえ。そんな事をしたらお金が勿体ないですよ信也さん。私の事は気に無さならないで下さい。入るならファミレスに入りましょう」


信也さんと御幸は言う。

その言葉に休憩でもするのだろうか、と思う。

通行人達が陰に隠れている俺達に驚愕しながら。

俺と穂高と仲は動き出した。

ファミレスに入らないと。


「穂高、仲。準備は良いか」


「うん。大丈夫」


「そうだな」


よし、じゃあファミレスに入ろう。

信也さんと御幸の様子を伺える場所に座らないとな。

思いつつ俺達はそそくさと後をつけてから。

ファミレスの奥の方に腰掛けた。


「ふう。大変だね。追跡って」


「だな。確かにな」


「あはは。だな」


そして俺達はメニュー表を立てながら。

御幸達を見る。

信也さんはニコッとしており。

御幸は何だか楽しそうだ。

俺は少しだけ笑みが零れる。


「信也さん.....えっと。信也さんの好きな食べ物って何ですか?」


「.....え?俺?.....俺.....そうだな。俺は素朴だけど焼きそばとか好きだよ」


「.....じゃ、じゃあ作りますね。今度」


「え?作ってくれるのか?嬉しいね」


上手くいっている。

俺は御幸を親父の様に見つめながら。

店員に飲み物と少しだけのおやつを注文してから。

俺達はコソコソと見つめる。

そうしていると。


「あれ?御幸ちゃん。なにしているの?」


「あ、マコちん」


「その男の人、格好良いね」


マコちんという名の.....黒髪のロングの女性。

恐らくは御幸の友人だろう。

入店してから現れた。

俺達はその様子を伺う。

そうしているとマコちんは、あ。もしかしてデート?、とニヤニヤした。


「も、もう。からかわないで。そんなんじゃ無いから」


「じゃあ何?その男の人と.....何をしているのかなぁ?」


「マコちん!」


あはは、冗談だよ。

邪魔しちゃ悪いね、じゃあね、と。

マコちんという女性は仲間と一緒に去って行った。

俺はそれを伺いながら信也さんを見る。


「でもデートの様に見えるんだな。これ」


「そ、そうですね!あはは、あはは.....」


「でもさ。俺、御幸ちゃんの様な美少女とデート出来て嬉しいよ」


「ふえ?」


ボッと赤面する御幸。

それを必死に仲が撮っていた。

いや、何をしているんだコイツは。

思いながら額に手を添える。

相変わらずだな。


「良かった。お兄ちゃん.....上手くやってる。嬉しいな」


「そうだな.....御幸も上手くやってるみたいだしな」


「そうだね。大博」


そして俺達は飲み物とパンケーキを受け取ってから。

暫く観察していた。

二人は明るく会話をしている。

俺は、御幸良かったな、と心で思ってしまった。

心配だったから。



「じゃあこのままペットショップに行こうか」


「そ、そうですね」


俺達は再び追跡モードになる。

そして離れた場所から伺っていた。

通行人達がまたビックリしている中で、だ。

仲は必死にシャッターを切る。


「あはは。良いね.....幸せそう」


「ですね。仲さん」


「うん。それは思う」


そうしていると。

御幸の前に誰か現れた。

それは.....良和さんだ。


目を丸くしながら、御幸ちゃんなにしているんだ?、と聞く良和さん。

身長差だろうけどビックリしているのが信也さん。

それから信也さんは御幸を守る様に自らの背後に行かせる。

不良の様に見えたのだろう。


「.....アンタ誰だ。何故、御幸さんの名前を何で知っているんだ。」


「だ、大丈夫ですよ!信也さん!変な人じゃ無いです」


「.....え?そうなのか?」


警戒している信也さんは目をパチクリした。

ああ、と頷いて、大丈夫だ青年、と良和さんは呟く。

モクモクさせていた煙草をシガーケースに仕舞いながらニカッとする良和さん。

それから、もしかしてデートか?、と聞く。


仲が不安そうに様子を伺っている。

多分、良和さんが余計な事をしてしまわないか不安なんだろう。

だが良和さんはニコッとした。


「.....そうか良かった。アッハッハ。デートなら邪魔しちゃ悪いな。もう去るよ。俺はこれから仕事だしな」


「えっと、えっと!デートじゃ無いですよ!?良和さん!」


「アッハッハ!そんなに恥じらわなくても良い。気にすんな。邪魔したな」


もー!違います!と慌てる御幸。

それをなだめながらこっちに気付いている様にウインクした良和さん。

え?バレてる?と思ってしまう。

何だかその.....今のウインクはあからさまだったな。

そして良和さんは、じゃあな、と手を挙げて笑みを浮かべて去って行った。


「でも.....お兄ちゃん.....プラスポイントだね。あんな感じで御幸さんを守るって」


「そうだな。確かにプラスだ」


「全く.....私のお兄ちゃんが迷惑を」


ぶつぶつ言う仲。

まあそう言うなよ、と俺は仲を見つめる。

そして目の前を見る。

御幸は真っ赤に赤面していた。

嬉しそうだ。


「でもバレているんだな。俺達」


「.....そ、そうだね。流石は良和さんだと思う」


「だね。アハハ」


それから御幸達は移動を開始した。

俺達は顔を見合わせながら頷きつつ。

そのまま移動し始めた御幸と信也さんを追い掛けた。

このままペットショップへ向かうのだろう。

思いつつ動いていると。


「それはそうと御幸ちゃんはどんな犬が好きかな」


「.....わ、私は.....えっと、ミニピンです」


「.....お。良いじゃない。俺もミニピンだよ」


「え!そうなんですか?う、嬉しいな」


その様に会話が聞こえた。

俺達は顔を見合わせながら笑みを浮かべて嬉しそうな御幸達を見る。

上手くサポート出来れば良いが。

俺達も、だ。

さてさて、どうなって行くのか.....。

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