第44話 御幸、電話で信也にアタックする

草津温泉をそれなりに堪能しながら。

俺は穂高の笑顔の横顔を見つめてそして俺も笑みが止まらなかった。

綺麗な横顔を何時までも見ていたい感じだったのだ。


贅沢過ぎるかも知れないが、だ。

で、歩いたりしていると。

何か聞こえた。


プルルルル


「?.....あれ?.....お兄ちゃんだ」


「お兄さん?成程な。信也さんか」


「そうだね。どうしたんだろう」


突然、穂高の折り畳みの携帯に信也さんから電話が掛かって来た様だ。

俺は立ち止まる。

そして穂高も立ち止まりながら直ぐに電話出る。

穂高はその電話をスピーカーにしてくれた。

それから信也さんが電話に出る。


『もしもし。穂高。楽しんでるか』


「うん。.....一体どうしたの?お兄ちゃん」


『何でもない。今日はシフトがそんなに無くてな。それで今、家に居るんだ。穂高が楽しんでいるかって思って電話を掛けさせてもらった』


「.....お兄ちゃん.....うん。楽しいよ」


あはは、とニコニコと笑顔を見せる穂高。

俺はその姿を見ながら信也さんに、もしもし、と言う。

すると、お。その声はもしかして大博か?、と返事が有った。

俺は、はい、と言葉で返事する。

すると信也さんはこう話してくれた。


『大博。お前も楽しんでいるか』


「はい。貴方のお陰もあって楽しいです。申し訳無いです」


『そいつは結構だな。楽しまないと人生は損だからな。こっちの事は気にするな』


ハッハッハ、と笑い声が聞こえる。

俺はその様子を見ながら.....穂高を見てピンときた。

ハッとしたのだ。


これはチャンスじゃ無いか?

今、シフトが無いんだろ?

だったら電話に出てくれるのでは。


「ちょ、ちょっとすいません。信也さん。今から話させたい人が居るんですけど」


『え?それは良いけど.....話させたい人?そいつは誰だ?』


「御幸を覚えていますか。その、実は御幸は......」


とそこまで言い掛けて首を振った。

いかんいかん。

これを話すのは全て御幸だ。


俺が話してどうする。

と思い、別の考えを浮かべた。

それから言葉を発する。


『御幸ちゃんがどうしたんだい?』


「実はその.....そ、そうです!えっと.....信也さんの趣味を御幸が知りたいって言ってます!だからその.....!アハハ.....」


曖昧な返事になってしまった。

穂高が目をパチクリしてクスクス笑う。

これはマズイか?直球すぎるか?


だが信也さんは、良く分からないけど構わないぞ。暇だったしな、と言ってくれた。

俺はホッとしながら御幸に直ぐに連絡する。

信也さんの事に関して、だ。



「えっと.....信也さんのシフト無いの?」


5分後。

御幸は温泉上がりだったようだったが。

直ぐに飛んで来てくれた。

俺はそんな御幸に頷く。

それからモジモジしながら赤面している御幸を見る。


「じゃあ今から電話掛けます」


「頑張れ。御幸」


「う、うん。それなりにアピールしてみる」


拳を握ってから意を決する御幸。

その顔は乙女の顔だった。

俺はその姿を見ながら笑みを浮かべる。

それから電話を掛けてスピーカーにする。


『もしもし』


「.....あ、俺です!大博です」


『おう。さっきぶりだな』


「御幸、連れて来ました」


そうか。御幸ちゃん、と話す信也さん。

すると御幸はボッと赤面しながらも.....改めて意を決した様に話した。

えっと。しにゃんさん、と、だ。

しにゃんさんってお前。


『おいおい。俺は信也だぞ。アハハハハ』


「ご、ごめんなさい!」


御幸は嘗てない程に真っ赤になる。

それから慌てた。

俺はその姿を見ながら柔和になる。

そして信也さんが話す。


『うん。大丈夫だ。えっと.....趣味を知りたいんだよな?俺の趣味は.....ペットショップとかで犬を見る事なんだ』


「えっと.....そ、そうなんですね.....」


『そうだよ。そうだ。なんなら今度、みんなと一緒で.....近所のペットショップに.....』


「.....えっと!」


御幸が呼び掛ける様に声を上げた。

信也さんが、え?、と止まる。

俺と穂高は見守る。

頑張れ、と思いながら、だ。


「一緒に回らないですか!二人きりで!」


『え?二人きり?い、良いけど。どうしたんだ?』


「わ、私.....その!」


『え?』


御幸は胸を掴む。

そして顔を上げて言葉を発した。

わ、私は二人っきりが良いので.....お願いします!、と、だ。

俺はぎこちなくだが、それはきっと伝わったぞ、と思いながら。

御幸に少しだけ笑みを浮かべた。


「という事だから。お兄ちゃん。ちゃんとサポートする事」


『.....お、おう?うん』


「あはは。頼みます。信也さん」


『良く分からないが.....分かった。責任持つよ』


ガッツポーズをする御幸。

俺はその姿を見ながら空を見上げた。

良い感じだな、と思いながら、だ。

そして眼鏡を拭く。


じゃあ家の用事が有るから切るな、と信也さんは言う。

はい、と返事した俺と御幸。

そして穂高が電話を切る。


「良かったな。御幸」


「う、うん」


「御幸先輩。頑張りましたね」


「有難う。穂高ちゃん」


そして今度、御幸はデート(仮)を信也さんとする事になった。

俺は良かったと思いながら。

嬉しく思いつつ。

御幸をそのまま見ていた。



「御幸先輩。一緒に回らないですか?」


「でも私はお邪魔じゃない?」


「邪魔じゃない。大丈夫だ」


言い聞かせながら3人で辺りを回り始める。

そして近くに商店街にやって来た。

俺は商店街を見渡す。

そうしていると奥の方の公園?のような場所で見慣れた連中を見掛けた。


「あれ、智明さんと鞠さんじゃ?」


「本当だな。智明.....!?」


二人はキスを交わした。

智明が誘ったのだ。

あのバカ野郎.....こんな目立つ場所でか。

思いながら苦笑いを浮かべる。


「あはは。良いですね。ロマンチックです」


「ったく.....あのアホめ」


「良いなぁ.....」


御幸だけが少しだけ羨ましそうに見ていた。

少しだけ心が痛い感じがする。

俺は複雑に考えながら、智明達に悪いから行くか、と踵を返した。

それから別方向を歩き出す。

すると穂高が、あ、と言葉を言った。


「えっと、何か食べましょうか。お昼時だし」


「あ、だね。うん」


「それは確かにな」


そうしていると近くに飲食店を発見した。

俺達は顔を見合わせて頷き、中に入る。

すると.....その場所にとんでもない人が居た。

何故なのか。


パーマの効いたキャシーさんと.....俺達を救った白島さん。

その二名だ。

カウンターの椅子に白島さんが座っている。

ちょ、どういう状況だ!?

キャシーさんが目を輝かせる。


「あらあ?お久しぶりじゃない。大博クン」


「何でこの場所に居るんですか!?キャシーさん!」


「私はお手伝いをしに来たのよ。丁度、このみっちゃんのお店のね♡」


「有難いわ。ホホホ」


オネエ達によってとてもインパクトが有るが。

店内はそんなに椅子が無いながらも繁盛している店を見る。

目が本当に丸くなるな。

そう思いつつ、繁盛してますね、と俺はキャシーさんと白島さんを見る。

するとキャシーさんが頷いた。


「勿論よ。私とみっちゃんが組んだら最強なのよぉ。おほほ。お友達同士だしねぇ」


「そうねぇ。キャシー。アハハ」


どういう関係なのだろうか.....と思っていたらそういう事か。

するとキャシーさんは俺と御幸と穂高を一瞥した。

それからこう言葉を発する。

艶めかしい目で、だ。


「.....ところで何か貴方達は何か御用なのかしら?」


キャシーさんは心優しい感じでニコッとする。

俺と穂高と御幸は圧巻されながら.....キャシーさんに頷いた。

それからキャシーさんは、あいよ!3名!、と声を大声でイケボで上げる。

スゲェ.....ボイスだな。


俺達はその事に顔を見合わせて苦笑いを浮かべる。

そしてそのまま俺達は昼飯を食う事になった。

店名、グッジョブ、で、だ。

この店名は白島さんが付けたらしいが。

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