第42話 大博の親父との偶然の接触

「どうした?大博」


夜の事である。

俺が外の景色を浴衣姿でたしなんでいると智明に声を掛けられた。

智明はガチムチの色っぽい男達から相当に気に入られたようで、何か知らないが連絡先の名刺まで貰っていた。

そして頭を抱えて悩んでいる大博の姿を見ながら笑いつつ。

外を見ていたのだ。


「何でもないぞ。......いやー。お前が面白いって思ってな」


「いや、全く面白くねぇよ。何を言ってんだ。このピュアな身体はガチムチに掘られる為に有る訳じゃねぇよ。ってかそれは良い。またお前、悩んでいるだろ?」


「.....流石はお前だな。全てお見通しか」


「俺に隠し事なんて1000年は無理だぞ」


「そりゃ怖いな。ハハハ」


柔和な顔で智明を見ながら笑みを浮かべる俺。

それから外を見てから話した。

実はな穂高の事で悩んでいる、と、だ。

智明は柔和な顔で、そうか、と答えてくれた。

そのまま智明は聞いてくる。


「一体、穂高ちゃんがどうしたんだ」


「痩せていてそれが気になっている」


「.....そうなのか?」


「ああ。痩せているらしいから」


だから.....穂高の事が気になっていてな。

と俺は本心を打ち明ける。

智明は顎に手を添えて、そいじゃ隣を訪問しようぜ、と言った。

俺は?を浮かべる。


「お前が暗くなっている事。それを打ち明けてビシバシ鍛えてもらうんだ」


「.....お前は相変わらずだな。本当に」


「当たり前よ。まあ女子達に触れ合いたいと言うのが真の目的だが」


「やっぱりテメェに頼るのは止めた方が良さそうだ」


おい、そんな事言うなよ兄弟。

と縋って来る智明。

ええい離せコラ!!!


都合のいい時に限って俺を兄弟と言いやがって!

と思いながらも俺は智明に苦笑いを浮かべた。

そしてお礼を言う。


「しかしまあ、智明。有難うな」


「俺は何もしてないだろ」


「陰ながらのお前のサポートで.....俺は元気なるんだよ」


「ああ、成程な。.....それぐらい気にすんな。俺が毎回お世話になってんだから」


んじゃ、女子達の部屋に行くか。

と立ち上がって俺達は女子達の部屋を訪問した。

そこには.....門松先生、仲も居て。

面白おかしく会話が出来た。

その日の悩みが消えるぐらいに、だ。


だが俺はまだ気付いてなかった。

悪夢はこれから始まる、という事を、だ。



「ッハァ!!!!!」


翌日の事だ。

心臓が鷲掴みにされる様な.....そんな感覚で目が覚めた。

親父に.....であるが。

気が付くと朝になっていたが.....朝早いな。

午前6時か。


しかしその、何だこの恐怖は。

まるで.....凍り付くような。

そんな感覚だった。


「スヤスヤ.....」


「.....」


横では智明が口を開けてよだれを垂らしながら寝ていた。

余りの悪夢に冷や汗が止まらなくなった俺は、散歩して来るか、と思い立ち上がる。

それから動き出した。

俺は.....何で親父に心臓を握られる夢なんか見たんだ?

今更だが.....。



「.....しかし風景が良いな」


思いながら宿の周りを散策する。

ここから階段下には色とりどりの葉っぱが見える。

風景がとにかく良い。

絵でも描けそうだ。


「.....出店の周りを回ってみるか」


そして歩き出して俺は出店を見て回った。

やっぱり朝早いからか、閉まっている。

俺はその様子に苦笑しながらつまらないな、と思い人の流れを見る。


恋人が寄り添って歩く姿と色々な人達が居た。

俺はその姿を見ながら目の前を見て.....そして俺はかなり青ざめる。

その場に居る筈の.....無い奴が居たから。


「あれ?お前、大博じゃね?」


「.....親父.....じゃないか」


「よお。久々だな。なんだよそんな顔して」


あっけらかんとしている。

若い女を寄り添わせて。

そして浴衣姿で不倫の様な感じで。


俺の前にソイツは居た。

間違いない、俺が負わせた顔の十字の傷。

そして180は有る身長。


若々しい黒髪の短髪のその姿。

忘れもしない。

何で.....なんだ?

この場所に何で居る。


「ひっさびさだな。偶然にしては出来過ぎか。久方ぶりだ。親父に何か言う事無いのか?」


「ふざけるな。お前の様な奴に言う事は何も無い」


「おいおいひっでぇなお前。そんな態度だから気に食わねぇんだよ。俺にとっては。その目だよな。何時も強大な敵を目の前にして尻尾を丸める事の無い強い眼差し。ムカつくぜ」


すると甘美な声を出す女。

この人だれぇ?的な感じで、だ。

俺はその姿を見ながら踵を返した。

こんな馬鹿に付き合っている暇は無いと思ったのだ。


「おい~。どこ行くんだよ。せっかくの家族の再会だろ。どっかで飯食おうぜ」


「お前を見ていると吐き気がする。そんな真似なんぞする必要無いだろ」


「ハァ?お前親に向かって何言ってんだよ?」


「アンタを一度限りでも親と思った事は無い!!!!!」


キッと睨みつけて絶叫を挙げて俺は振り返りながらその男を見る。

通行人が立ち止まって、何事?、的な感じになる。

俺はその姿を見ながら手に汗を握る。

クソ、冷や汗が止まらない。

するとその男は目を丸くしながら女を手放して手を鳴らした。


「やっぱりお前、ムカつくわ。親に対して配慮も出来ない様な息子は治療してやらねぇとなぁ!!!!!」


「!.....え」


そしてそのまま思いっきりぶん殴られた。

俺は地面に倒れる。

流石にこの行動には周りの通行人も、喧嘩か!?、と大騒ぎになった。

警察を呼べ!とかも言っている。

しかしまさかの事だな。

唇を切った。


「教育がなっちゃいねぇな。お前。どうした?大人になって無いのか?ははは」


「.....」


「なんとか言ったらどうだ?ベイビー」


「お前は嫌いだ。お前の様な奴がこの世に居る事自体が.....気に入らねぇ」


おお、暴言。

じゃあどうする?殺すか?俺を。

と浴衣を広げて胸を広げて見せる親父。

俺はその姿を見ながら居ると。

背後から二人の声がした。


「大博さん!」


「大博!!!!!」


「穂高.....!?智明.....?!」


「ど、どうしたんですか?!何で地面に.....誰ですか!?その人!」


穂高は涙を浮かべながら俺に駆け寄る。

俺は青ざめる。

コイツらまで巻き込む訳には。

と思っていると。

親父は早速と目を付けた。


「おいおい。お前にまさか彼女と友人が出来たってのか?なぁ?大博。ますます気に入らねぇな。少なくともお前に」


足を振り上げた親父。

それから抑えつけようとしたのを。

穂高が、智明が止める。

何やっているんですか貴方!!!!!的な感じで、だ。

誰だよお前!と智明が言う。


「俺はそこに倒れている大博の親父だ。お前ら、家族の内情に踏み込む気か?」


「.....」


そうだ。

智明も穂高も。

巻き添えにする必要は無い。

俺と親父の家族関係の問題なのだ。

と。

思っていたが。


「穂高ちゃん。救援.....っていうかこの名刺に電話してくれ。そして警察を!」


「分かりました!私、直ぐに呼んで来ます!」


思いっきり青ざめた。

そこまでする必要は無いんだが.....。

これは家族同士の問題なんだ。

だから!


「大博。親父に一人で立ち向かっていたんだな。だけどこっからは俺達のターンだぞ。俺達も痛みを分かち合う」


「馬鹿な事をすんな.....智明。お前まで巻き添えとか.....俺が嫌だ」


「その前に俺はお前の友人だ」


「.....!」


目の前の親父は、良いねぇ!友情!愛情!まさに潰したくなる!、と言った。

そしてバキバキと手を鳴らす。

このままじゃ智明が危ない!

何をしてくるかも分からないんだぞ親父は!

と思っていると。


「あらぁ?智明ちゃン?何をしているのかしらぁ?」


格好良いダンディーな服装ながらも。

若干のオネエの男が突然、背後から現れた。

俺は?!と思いながら見る。

智明は、アンタ.....白島さん?、と唖然としている。

知り合いなのか?


「智明ちゃんが危ないって連絡が有ったから来てあげたわよ。で、何かしらこの状況。この男かしら?危ないのって」


眉を顰めながら不愉快そうに親父はオネエを見る。

オネエは片手でニコッとしてバキバキと手を鳴らした。

そして空手の様に構える。

するとその様子を見た親父は、止めだ止めだ、と声を発した。

そして堅苦しそうに首を鳴らす。


「.....何だか面倒だし。警察来るしな。時間掛かるのは嫌いだ」


救われたな、大博君?

と言いながら吐き捨てる様に親父は去って行った。

俺はその姿を見ながらオネエと智明を見る。

そして、有難う、と言った。


「全く、無茶しやがって」


「こうなるとは思って無かったからな。事実。驚きだ」


そうしていると穂高がやって来た。

そして俺を抱き締める。

良かった良かった、と号泣した。

俺はそんな穂高にも.....お礼を言う。

お前も有難うな、と。


そしてその日、俺は警察に呼ばれて。

殴られた事で親父に傷害罪が浮かび上がり。

親父がその、捕まる、または逮捕も時間の問題になった。

犠牲は伴ったが.....智明と穂高が無事で本気で良かったと思う。

オネエのお陰だな、と考える。


それから俺は宿に帰ってから。

みんなに全てを説明した。

俺の家の事情とかを、である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る