第41話 智明、白銀の乙女(ガチムチ)に遭遇する

まあ混浴とは言えど。

お互いに水着を着ていた。

穂高は水玉のビキニ、俺は短パン的な水着だ。

貸してもらった。


でもまあ当たり前だよな。

混浴と言われて普通に考えたら年頃の男と女だからな。

しかし.....一応、良かった。

心臓が止まるかと思ったしな。


「.....うん。いや、良くねぇか」


俺は心臓がバクバクいっていた。

当たり前だが仮にも風呂だ。

その為に.....その、色々とかなりマズイ気がする。

横に居る穂高も恥ずかしさ故か何も喋らない。

俺の手を水中で握っている様な感じだ。


「えっと、良い風呂ですね!大博さん」


「そ、そうだな。うん」


「.....あはは」


「うん」


で、どうしたら良いんだろうかこれ。

思いながら空を見ると。

そこには透き通った空が広がっていた。


そして周りの景色。

そこも.....かなり良い景色だった。

川が見えるのだ。


「穂高。心底良かったよ」


「.....何がですか?大博さん」


「お前が元気になって。そして俺と一緒に旅行に行く事が出来て」


「.....大博さんのお陰です」


あの日、厳しくしてくれたから。

だから私はこうして休めたんです。

そして元気になった。


だから大博さんには感謝しかないですよ。

と俺に笑顔を見せる穂高。

ビキニの胸が揺れる。

結構胸がデカいんだな、なんて思ったりする。


「.....すまん。目のやり場に困るんだが.....」


「あ、ああ!!!!!すいません!」


恥ずかしそうに胸を隠す穂高。

俺はその姿を見ながら頬を掻いた。

そして穂高をもう一度見る。

穂高は嬉しそうに笑んでいた。


「大博さんと一緒に旅行が出来て楽しいです。私」


「そうか。俺も穂高と一緒に旅行出来て嬉しいよ」


「そうなんですか?嬉しいです」


俺に向いてくる穂高。

そしてそのままニコッとした。

俺はつい、その顔が可愛くてそのままキスをする。

そうしたら穂高が、ほあ!?、と赤面した。

そして俺を見てくる。


「恥ずかしいです.....」


「ごめんな。つい可愛くて」


「も、大博さん.....」


じゃあその、このお礼、背中を擦ってあげます。

と立ち上がる、穂高。

何?そこまでする必要は無いんだが.....。

そう思いながらだったが穂高が促した為に。

立ち上がらざるを得なかった。


「お背中擦ります」


「分かった分かった。擦らせてやるから」


「えへへ。それで良いんです」


そして風呂椅子に腰掛けて。

そのまま背中を流してくれる穂高。

その際に穂高がビクッとした。

ああ.....そうか。


「煙草を押し当てた様な.....傷が」


「すまんな。親父に暴行を食らった時にやられたんだ」


「.....そ、そうなんですね.....」


「.....泣くなよ。お前。もう大丈夫だから」


なんせ、お前が居るから。

と俺は笑みを浮かべる。

涙を流しながら、そうですね、と頷く穂高。

こんなに心が優しい子と一緒だと本当に浄化されそうだな。

思いながら前の鏡を見る。


「穂高。他にも傷が有るんだ。だからビックリしないでくれ」


「.....何でこんな良い人を.....殴ったりするんでしょうか.....」


「親父にはそう見えなかったのさ。誰も助けてくれなかったしな。それに」


すると穂高が胸の感触とかを気にもせず。

俺を抱きしめてきた。

背後から、だ。

そして俺の背中に顔を押し当てる。

鼻を啜る音が聞こえる。


「可哀想で仕方が無いです。救いたかった。貴方に会いたかった」


「当時の俺に会ったとしても.....俺はお前も巻き添えにしてしまっていた。だから会えたのは今で良かったんだ」


「.....大博さん.....」


「.....俺はお前が好きだから。何も起こって欲しく無い。だから.....守るからな。お前の事、ずっと」


はい。

私は大博さんを守ります。

これから先、何が起こっても、です。

と固い意志を見せながら。

俺の背中を擦り始めた穂高。


「広いお背中ですね」


「.....そうだな。無駄な血が注がれた」


「.....でもお母様の遺伝子もキチンと入ってますよ。大博さん」


「.....だな。それを考えるから俺は.....この身体を捨てたく無いって思ってる」


ですね、と笑顔を見せる穂高。

俺は鏡に反射されたその姿を見ながら笑みを少しだけ浮かべる。

すると擦り終わった穂高がとんでもない事を言い出した。

何を言い出したかって言えば。


「じゃあ私の背中も擦って下さい」


「お前、本気で言ってる?」


「当たり前ですよ。私は大博さんの彼女なんですから。擦って下さい。その.....ビキニ外しますから」


「冗談だろ.....」


冗談じゃ無いですよ?

じゃあどうやって背中擦るんですか。

と、ニヒヒ、と穂高は怪しい笑みを浮かべる。

嘘だろう.....。


「ビキニは手で持ったままにしますから。だから擦って下さいね」


「.....」


盛大に溜息が出る。

そして攻守交代で俺は背中をする羽目になった。

それから泡の付いたタオルを受け取り。

そのまま擦っていく.....が。


「.....背中が細いな」


「.....痩せていますからね。私。あはは」


「ちゃんと物食ってるか?お前」


「.....はい。食べていますよ。大博さんのお陰で」


何でもかんでも俺のお陰か.....、と思ったが。

まあそれでも食べれているなら良いけど。

女性に体重を聞く訳にもいかないしな。

今度.....何か高カロリーな物を食わせよう。

心配だ。


「でも本当に嬉しいです。背中擦ってくれて」


「.....そうか」


「.....私.....お母さんが擦って以来、甘と蜜が擦ってくれますが.....大人に近い方に擦ってもらうのは久々ですから」


「.....今度、また母親の墓に行こうな」


はい、大博さんとなら何処へでも行きたいです。

とニコニコする、穂高。

そして俺の顔をジッと見てきてから。

スキありです。

と唇にキスをしてきた。


「お、お前.....」


「えへへ。お返しです」


「全くな」


それから俺達は風呂をもう少しだけ風呂を楽しんで外に出た。

そして手を繋いでいると。

智明が飛んで来た。

どこで何をしていたんだお前は!!!!!、と。


「智明.....お前、痛いじゃ無いか」


「喧しいわ!!!!!俺を放ったらかしにして何処で何をしていたんだ!!!!!結局、俺一人で風呂ってアホかァ!!!!!ガチムチの乙女達に気に入られて大変だったんだぞ!」


「え....ガチムチの乙女?」


「そうだぞ!白銀ガチムチの乙女だ!!!!!」


言われた当初は意味が分からなかったが。

そりゃ良かったじゃ無いか。

と俺は智明に満面の笑顔を浮かべる。

智明は悔し涙を流しながら俺に訴え掛ける。


すると、そう言えば兄弟。穂高さんと同じシャンプーの香りがするんだが、と女子の香りに敏感な智明がハッとした。

俺はギクッとする。

穂高も少しだけビックリした。


「だってお前、おかしいだろ。男の湯のシャンプーはこんな香りしない.....ハァ!?お前.....まさかと思うが.....」


「待て智明。お前は何か勘違いをしている。たまたまだろ」


「んぅ!貴様という大馬鹿野郎は許さんぞ.....裏切り者ぉ!!!!!」


血涙を流しながら俺に訴え掛ける智明。

すると背後からそんな智明がぶっ叩かれた。

智明は地面にぶっ倒れる。

驚きながら目の前を見ると.....鞠さんが立っていた。

全く、と言いながら、だ。


「温泉宿で騒がない」


「.....ま、鞠さん.....有難う御座います」


「良いんですよ。智明が悪いから、です」


どっからハリセンなんか持ってきたのか。

思いながらも助かったと思いつつ。

穂高を見つめる。

そんな穂高もクスクス笑っていた。

俺は倒れた智明に寄り添う。


「おい、大丈夫か。智明」


「.....我が生涯にいっぺん以上の悔い有り.....」


「いや、有るのかよ」


そんなツッコミをバシッと入れながら。

俺は部屋に智明を運んだ。

全くな、と思いつつ、である。

そして.....少しだけ休んだ。

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