第34話 智明と鞠へ。~最大の祝福~
色々有りながらもデートは完結した。
智明達へ贈る為に良和さんから花束を受け取ってから、だ。
ので家に帰ったのだが.....不安が拭えない点が有る。
今現在、仲が良和さんの所で暮らす事になった。
しかしこれに対して仲の親父が反発、俺に電話まで掛けてきたのだ。
貴様は何をやっている的な感じで、だ。
実際はそうは言わなかったが。
信じられない行動に溜息しか出ないが。
そんな事は取り合えず忘れよう。
思いつつ俺は穂高と別れて自宅で行動をする。
何をしているかといえば智明の事だ。
来週の水曜日に春休みに突入する。
その事で.....準備をしていた。
仲、穂高達に全てを説明。
それから、ひだまり、のオーナーにも協力を頼み。
全ての準備が整いつつあった。
「.....後は来週か」
思いながら居ると母さんがやって来た。
そしてニコッと笑む。
俺は?を浮かべる。
「貴方がそんな人の為にセッティングをして何かをするなんてね」
「.....そうだな。母さん」
「成長したわね」
「.....俺は変わらずだよ。母さん」
そうかしら?貴方は十分に成長しているわよ。
と俺を優しく抱き締めてくれた。
そして頭を撫でてくれる。
俺は少しだけ恥じらいながら頬を掻く。
そして母さんにお礼を言った。
「母さんが成長を見守ってくれた。だからこそやってこれたんだ」
「.....そうかしら。嬉しいわね」
「そうだと思う。親父からも守ってくれて有難う母さん」
「.....貴方はよく頑張ったわ。お爺ちゃんもお婆ちゃんも見守っているわ」
そうだと嬉しい。
思いながら俺は少しだけ腕に頭を寄せていた。
そして母さんは離れ、ごはんにしましょうか、と言う。
俺はその姿に頷きながら、だね、と返事をした。
それから学校に向かう準備をする。
☆
春休みになったというか当日になり。
俺達は、ひだまり、に集まった。
ひだまりのオーナーがなんとも優しい方で名前を本名か知らないが、矢加部キャシー(やかべきゃしー)という。
現在30歳の男の人で独身。
少しメイクしたゴリゴリの少しだけお姉系のキャラだった。
本気でゴツイ体をしながらも花柄のエプロンにパンチパーマで繊細な母親の様な心優しいそのキャシーさんを俺は苦笑気味で見つめる。
身長が190も有るキャシーさん。
しかしそれにせよ良い人ばかりだな、と。
俺を、あら良い男ねぇ、と言ってくれたのはちょっと引いたが。
思いながらも俺達はセッティングを完了させた。
やって来てくれた一般人の方々みんなにキャシーさんはこう告げた。
お祝い事をするから宜しくね、と、だ。
馴染みの客ばかりだったがみんな心優しく頷いてくれた。
そしてこの、ひだまり、は智明には内緒で貸し切りになる。
さて、作戦の概要だが今回は智明に告白を促す。
鞠さんに、だ。
具体的に何をするかというと。
概要はこうだ。
俺が先ず智明と店の前で再会する。
それから後でやって来た一般の方々が椅子に腰掛ける。
そしてダンサーの喫茶店の馴染み客が一人が突然、踊りだす。
ダンサーは偶然の馴染み客だ。
それに合わせて喫茶店のみんなが踊りだし。
奥から巨大なメッセージカードを乗せて花束を持った仲と御幸が来る。
そしてみんなが登場して俺が最後に智明に鞠さんにプレゼントする為に買った指輪を渡せ、と俺が智明にプレゼントして促す。
それからみんなで祝福でクラッカーを鳴らし。
智明が逃げれないようにして鞠さんに感謝の意などを強制的に伝わさせる。
俺からの仕返しだ。
と、だいたいがそんな作戦だ。
これは穂高と俺が考えた。
ダンサーで思い付いたのだ。
俺はみんなを見る。
「やるぞみんな!」
「「「「「ワッショーイ!!!!!」」」」」
何で掛け声がわっしょいなんだ.....。
キャシーさんは、良いわねぇ若いって♡、と言いながらニコニコする。
俺はその言葉に苦笑する。
一般の方達も拍手した。
そして.....作戦開始時間が迫る。
俺の知り合いのみんなは店の奥に隠れる。
花束を用意して、だ。
そして俺は喫茶店の前で準備をした。
☆
「よお」
「おう。来たか。智明」
俺は少しだけ緊張しながらも演技をする。
鞠さんと智明が笑みを浮かべる。
どうしたんだよ、こんな場所に俺と鞠を呼んで。なあ兄弟、と肩を叩いてくる。
俺は、いや調子はどうかなって思ってよ、と嘘を吐いた。
「会えてうれしいです」
「ですね。鞠さん。元気そうで」
「この喫茶店、良さげじゃね?なんだか」
「アホ。俺が見つけたんだから良さげに決まっているだろ」
じゃあ中に入るぞ。
とポケットに手を突っ込んでスマホで合図を送った。
それから店内に入ると。
キャシーさんが分からない様に俺にウインクをして計画が始まった。
「おお。店内も木で出来ているんだな」
「面白そうな店主さんですね」
「そうですよね」
そして指定の席に腰掛ける。
それから俺は合図代わりのメニューを見た。
それで判断した先に居たダンサーの男性が頷いて準備を始める。
俺は智明に聞いた。
「何か飲むか」
「お前の奢りか?兄弟。ハハハ」
「アホ。こんな場所でも兄弟言うなよ」
「ハッハッハ」
俺はキャシーさんに飲み物を注文する。
それを合図と取ってお客さんに見立てた馴染みの客の一人が手拍子を始めた。
それに気付いた智明は、お?、と目を丸くして反応する。
そして鞠さんも、え?、と驚愕した。
それからダンサーの男性が店内に元から掛かっている音楽に合わせてかなり激しく踊りだす。
智明は目をパチクリした。
「え?ちょ。なんだ!?」
「え?え、え?」
昔からある有名な名曲に合わせて踊る。
それをニヤッとして受け止めてから。
客の一人一人が踊りだした。
それに対して唖然とする智明と鞠さん。
「え!?」
「え!!!?」
みんな同じではないが踊ってくれる。
それから最終的に俺が立ち上がり。
苦手だが踊ってみた。
智明が、は!!?、と愕然とする。
何が起こっているか分かってないようだな。
「みんな来てくれ!!!!!」
それから俺は一定時間してから叫ぶ。
その瞬間、奥の従業員用のドアが開いた。
そして花束を持ってニコッとしたみんなが出てくる。
智明は、( ゚Д゚)的な顔、えぇ!!!!?、と受け止め切れてなかった。
鞠さんも最大限に見開く。
「智明さんへ!」
「智明さん!」
そして花束を御幸と穂高が智明に渡す。
良和さん特注の大きな花束を、だ。
智明は、お。おう!?、と言葉を失う。
因みにメッセージカードには、鞠さんへ告白、と書かれている。
「.....ってか、ん!?え、ちょ、告白って何だよ.....!?」
俺はその言葉の合図にポケットから指輪を出した。
とは言えど安物の指輪だけど。
でも気持ちが大事だと思うからな。
そしてゼエゼエ言いながらその指輪を渡す。
「思いを伝えろ。智明」
「お前.....マジで言っているのか兄弟!?こんな場所で!?!」
「あたりめーだろ。テメェを恥じらせる為にやってんだからよ。こっちは色々としこたま仕込んだんだから」
「.....ノ、ノーとは?」
全員を見てから、無い、と声を合わせて告げる。
俺はニヤニヤして見下す。
智明は真っ赤に赤面している。
そして鞠さんを見た。
「.....ま、鞠。んじゃお前に感謝の意を.....」
「違う。告白だ」
「な、あ!?.....う、うるせぇ!?」
「何を言ってんだ。テメェにさんざんやられた分を今返してんだからよ。ハハハ」
ハハハと思いながら俺は疲れたので水を飲んだ。
クソッ.....覚えてろよ兄弟.....と顔を隠す智明。
そして智明は指輪を受け取って。
赤面している鞠さんに向いた。
「鞠。何時も有難うな。俺と.....もし良かったらお爺ちゃん、お婆ちゃんになるまでこれからも付き合ってくれ」
「.....はい」
小さな声だったが。
肯定の合図だ。
鞠さんが真っ赤になってそう返事して俺達は顔を見合わせる。
それからニコッとして歓喜の声を上げた。
「「「「「オウイエェ!!!!!」」」」」
全員で、である。
そして向かい合ってハイタッチをした。
真っ赤にトマトの様に赤面する智明。
作戦は完全に成功した。
ザマァだな、智明。
思いながらだったが俺は別の意味で笑みが止まらなかった。
正直、嬉しくて、だ。
こんなに楽しいのは.....久々だと思う。
やって良かった。
智明は悔しそうだが。
「兄弟.....お前.....ぐぅ。覚えていろよ.....」
「やられたらやり返す。倍返しだからな」
「くぅ.....しかし.....やられたぜ。ハッハッハ」
そして俺と智明は片手でハイタッチをした。
それから笑みを浮かべ合う。
俺は智明を見る。
智明は俺に苦笑いを浮かべた。
そしてその日は俺達はパーティーで大騒ぎをする。
みんなで、だ。
楽しい1日だった。
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