第29話 智明を恥じらせる作戦 2、と.....。

智明とはかなりの仲だと思える。

正直言って.....ここまで心を許している友人も珍しいと思う。

智明が居なかったら俺はきっと.....もうとっくの昔に俺は自殺していただろう。

電車にでも軽く飛び込んで俺はこの場に居なかった。

または首でも吊っていたかもな。


アイツは兄弟、兄弟というがまさにその通りなのかも知れない。

俺はアイツを一卵性双生児の様に見ている。

兄弟と思っている。

前に.....本当にそんな感じですね、と言ってくれた様に。

俺は思う。


中学時代に俺はまた陰口を言われていた。

その際に智明があの能天気の様に俺にシャーペン貸して、と言ってきたのだ。

心を閉ざしていた俺に差し込んだ唯一の男の光だった。

だから智明には恩返しがしたい。


「来週辺りに春休みに入る。そこら辺でデートするか」


「そうですね。とっても楽しみです」


「じゃあ.....帰るからな。俺」


夕方になってしまった。

楽しい時間を過ごしていたら、だ。

穂高と甘ちゃんと蜜ちゃんが手を振る。

俺はその姿を見ながら.....手を振る。


それから帰宅していく。

その途中で.....見知った顔を見掛けた。

仲であるが、ん?

何でアイツあんな顔をしているんだ。


「仲。どうした」


「あ、大博。.....えっとね。親父と喧嘩した」


「.....そいつはまた。どうして喧嘩になった」


「私の将来に関してだよ。引き篭もってばかりで家から出なさいって。私のお母さんは理解者でお父さんもそれなりだけどそんなに理解してないからね。だから喧嘩になってしまって嫌だから家を飛び出したの」


私って引き篭もってばかりじゃ無いのにね。

その様に呟きながら歯を食いしばる仲。

俺はその姿に眉を顰めながら。

顎に手を添えて考えた。


「仲。家に来るか」


「え?君の家?.....行ってどうするの」


「じゃあお前は行かずしてどうするんだよこの先」


「私は一晩したら帰るつもりだけど」


その前に警察にお世話になるだろ。

思いながら俺は溜息を吐いて仲の手を握った。

それから、良いから俺の家に来い、と連れて行く。

仲は、ちょ。い。良いのに、と言うが。

良く無い。


「お前は俺の様な人間になりたく無いだろ。お前になって欲しく無い」


「でも君、彼女さんが居るよね。駄目だと思うよ。別の.....」


「ああもう。ごちゃごちゃ言うな。来るんだ。仲」


そして俺は手を手繰り寄せる。

それから仲に怒った顔を見せる。

仲は驚愕しながらも、君は相変わらずだね、と納得した様だ。

俺の手を握ってから.....、じゃあ分かった。お世話になるよ、と呟いた。


「初めっからそうしてくれ。ごちゃごちゃの言い訳は俺は聞きたく無い」


「.....君の彼女になった穂高は本当に幸せ者だね。うん」


「そうか?」


「絶対にそうだと思うよ。私が保証出来るからね」


俺は仲の笑みに苦笑い。

それから仲と共に電車に乗ってから。

俺の家に帰って来た。

そのまま鍵を開けて中に入る。


「待ってろ。色々と準備する」


「お構い無しだよ」


「そう言うけど.....そうはいかねぇだろ。電話もしないと」


「.....そうだね」


そして仲にタオルをパスした。

仲はそれを受け取って?を浮かべる。

顔を拭けって意味だよ、と俺は説明した。

お前の顔、泥付いてるから、と。


「ああ。ごめんね。不快な顔を見せて」


「良いから。風呂入るか」


「君はデリカシー無くの直球だね。でも入らせてもらおうかな」


「母さんには説明しておくから」


有難う、と笑みを浮かべる仲。

俺はその姿を見ながら頷いて母さんのラインを開いた。

そういや服はどうしたら良いかな。

思いながら仲を見る。


「仲。お前服はどうする」


「君の服で良いよ」


「.....マジに言ってんのか。臭いぞ俺の服」


「じゃあ君以外の服が有るのかい?無いよね」


俺は苦笑いを浮かべながら盛大に溜息を吐いた。

それから適当に服をパスする。

その服を嗅ぎながら、うん、と呟く仲。

そしてそのまま洗面所に入った。


「全くアイツは.....」


考えながら俺はキーボードを叩く。

それから母さんにメッセージを飛ばす。

すると母さんから、良いわよ、とメッセージが来た。

その代わりにお電話してあげて、とも、だ。


「母さん。有難う」


そう呟きながら俺は飲み物を用意した。

何か飲むだろうと思って、だ。

それから机に置く。

そうして5分ぐらいして仲が上がった.....え。


「ブカブカだね。ハハハ」


「仲!?オマエ!?」


褐色の胸元が見えそうで。

そしてパンツが見えそうな感じのTシャツ一枚。

ズボンを履いてない。

何でだよ!と思ったが。

俺はズボンを渡し忘れていた様だ。


「恥ずかしい。ズボンを貸してくれないか?」


「だ、だろうな。ごめんな。すぐ持って来る」


「すまないね」


そして俺は仲にズボンを渡した。

俺が何時も履いているズボンで有る。

仲はそれをゆっくり履いていく。

そしてニヤッとした。


「あ~。もしかして気になる?年頃の女の子の裸」


「当たり前だろ。俺は思春期真っ盛りなんだぞ」


「あはは。そうなんだ、直球だね。でも大丈夫だよ。裸になったりしないから」


「当たり前だろお前.....」


何を言っているんだ.....。

しかしこれはかなりヤバイな.....このまま続くのかこんな時間が。

俺もそこそこ身構えているけど。

かなり厄介かも知れない。

思いながら俺は盛大に溜息を吐いた。


「でも大博なら見せても良いけどね。恥ずかしいけど」


「勘弁してくれ。冗談でも言うな」


「あはは。大博はやっぱりいい紳士だ」


「.....はぁ.....」


ニヤニヤする仲。

俺は額に手を添えながらため息をもう一度吐く。

そして、何か飲むか、と聞いた。

すると仲は、そうだね、と笑みを浮かべる。

そして飲む姿を見ながら聞いた。


「嫌になって飛び出したって言ったけど.....お前も大変だな」


私は大丈夫だよ。

親父が分かってほしいけどね。

と苦笑いを浮かべる仲。

そうだよな。

上手くいかないよな、世の中。


「まあ落ち着くまで居れば良いんじゃ無いのか」


「本当はそうもいかないけど.....そうさせてもらおうかな」


「ああ。俺とお前の仲だしな」


私の名前だけに?と口角を上げる仲。

名前だけにってのは違うが。

でも確かにな。

俺は苦笑しながら仲を見る。


「正直、子供の時以来だよな。こんなの」


「ああ。お泊り会以来かもね」


「本来ならいけないのかも知れないけど俺は嬉しい。久々で」


「穂高の前では言わないようにね」


分かってる。

穂高にも事情を説明する。

と俺はラインを取り出した。

その事に、宜しく、と笑みを浮かべる仲。

それから外を見た仲を見ながら俺はメッセージを送信した。


「私、嫌だったんだよね。学校行くの」


「.....そうなのか」


「うん。でも君の輝いている姿をあの日、窓から見て.....学校に行こうと思ってね。それで動き出したんだ」


「.....」


俺は目線だけ動かして仲を見る。

仲はニコッとしてこっちに向いている。

流石は俺の惚れていた女だ。

やっぱり可愛いな。


「穂高とは上手くいきそうかい」


「.....お陰様でな。お前らのお陰だ」


「私は何もしてないだろう。盗撮しただけだ」


「ひでぇ言い方だなお前.....」


あはは、と笑顔になる仲。

俺はその姿を見ながらため息を吐く。

それから仲は、何か遊ぼうか、と提案してくる。

何で遊ぶのだ。


「ゲームしたいね」


「.....それじゃあウィーでもするか」


「まだそんな機械が有るとはね。あれは廃盤になったんじゃ?」


「まあそうだけどな。壊れたら終わりだ」


じゃあそれで遊ぼうか。

と太陽の様な笑みを浮かべる仲。

俺は、分かった、と返事しながら準備を始める。

しかし動かすの久々だな。


「彼女にも優しくしてやってよ」


「ああ。分かってるよ」


そして仲とゲームが始まった。

一応.....有名どころのプリンを賭けて、だ。

仲はノリノリだった。

だけど何か.....思うところがある様な顔を若干している。

俺だから気が付いたけど、だ。


「服とかどうする?」


「.....まあ明日になったら考えるさ。今は今だね」


仲は笑みを浮かべる。

相変わらずだな、と思える感じだ。

俺は思いながら少しだけ笑みを浮かべた。

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