第25話 お家デート

滝水千歳という名の穂高の友人に猛烈に勧められ俺はお勧めとされるラノベを5冊も買ってしまった。

ただでさえお金が無いのだが.....と思いながらも悪い気はしない。

ラノベは読むのが基本的に好きなので、だ。

それに何度も読み返すことが多い。


家に金子の爺ちゃん、滝水と別れてから帰って来て。

そして俺はラノベを早速と読んでみる。

しかしこれはマイナーなのに流石はラノベマニアと言える。

無茶苦茶.....というかかなり面白いじゃないか。

驚愕しながら読み続けていく。


それから集中して読んで1時間ぐらい経った後。

俺は欠伸をしながら伸びをした。

気が付くと既にもう14時になっている。

早いもんだな、何もしないと。

そして.....馬鹿な事をして暇になると。


「.....まあ.....勉強するか」


気を紛らわせたい。

思ってから俺はラノベを置いてから勉強道具を広げた。

そしてそのまま勉強を始める。

今回は数学だ。

分からない事が多いから。


しかしそれはそうとなかなかの集中力で取り組めているんじゃないだろうか。

俺自身がラノベにそれなりに集中出来ているぐらいだから。

その様に思いながら数式を解いていく。

バンバン解ける。


でもそれはそうと何と言うか完璧に勉強は遅れているだろうな.....。

今は休みな訳が無いので、だ。

思いながら俺は眉を顰めそして時間割を見る。

そうしているとスマホが鳴った。


ピコン


「.....?.....穂高?」


(大博さん。どうですか。元気ですか)


とメッセージが絵文字と共に来た。

時間はまだ授業中の時間帯なのだが.....。

駄目だろコイツは。

勉強中に打ってんな.....と思いながら苦笑して返事を打つ。


大丈夫だ、今の所は、と。

そして送信する。

すると数秒してから返事が有った。

早いな打つの。


(それは良かったです。あ、それはそうと仲さんの所にはいつ行きますか?)


とメッセージが送られてきた。

俺はそのメッセージに見開いてから顎に手を添える。

そうだな.....確かに.....行こうと計画していたのにおじゃんになったしな。

俺のせいで、だ。


とにかくも今の俺はまだ自宅待機中だ。

行ったら行ったで仲の親とかに何だかマズイ気がする。

簡単に言って行けるとしても来週かな。

思いつつ返事を書いた。


(来週ぐらいじゃないと動けない気がする。俺今、自宅待機中だから何だか色々と厄介な気がする)


(あ、ですね。.....はい)


(取り合えず来週まで待ってくれ。それから何とかしよう)


(はい。.....大博さんがそう言うなら、です)


俺はその返事を見ながら、有難うな、とメッセージを飛ばす。

そうしているとインターフォンが鳴り響いた。

俺は、すまん、人が来たと穂高にメッセージを送る。

それから立ち上がってドアの窓から外を見ると。


何故かそこに雪道さんが居た。

俺は驚愕してドアを直ぐに開ける。

そして俺は雪道さんを確認した。

雪道さんは複雑な顔で立っている。

俺は少しだけその顔を見ながら眉を顰める。


「その、久しぶりですね。どうしたんですか?」


「ええ。そうね。.....御免なさい。大博くん。私の息子が.....貴方が.....」


「.....」


雪道さんは涙を流して泣き崩れる。

簡単に言えばその事だろうとは思った。

俺は雪道さんの肩に手を触れる。

そして首を振った。


「.....今回の件は俺も悪かったです。全てを傷付けてしまった。俺も反省すべき点が多すぎます。だから.....顔を上げて下さい。悪いのは俺です」


「正直、無い筈の住民票から追跡して追って来るとは思って無かったわ。幸が.....あんなになっているのも知らなかったわ。貴方を傷付けるつもりは無かった。でも.....心から傷付けてしまって.....反省しかない。本当にごめんなさい.....」


「.....俺は大丈夫です。本当に。しかしわざわざ来てくれたんですね」


「当たり前よ。貴方は私の息子に近いのよ。だから居ても立ってもいられなかった.....本当は昨日来たかったのだけど.....色々有って。.....御免なさいね」


俺は柔和な顔で見つめる。

本当に優しい人だ。

思いながら俺はジッと雪道さんを見つめる。

雪道さんは、有難う、と呟きながら声を震わせた。

俺はその様子に表情を変える。


「それはそうと中に入りませんか。立ち話もなんですし」


「この場所でも良いわ。大博くん」


「いえ。少しだけでも話したいですし。如何ですか?」


「.....分かった。そこまで言うならお邪魔しようかしら。お母さんにも言っておいてね。.....御幸の事も話したいし」


はい、と返事しながら俺は招き入れた。

そしてそこで色々聞く。

雪道さんが色々した事、御幸は治ってきた事などを、だ。

家庭環境は少しだけ乱れたそうだが.....。

とにかく今は見守るしか無いわと雪道さんは語った。



そして雪道さんは帰って行った。

俺はその姿を静かに手を振ってから見送って勉強を再開する。

それから.....暫くして少しだけ飽きたので休憩を取った。

それにしても読んでいるラノベが面白いな.....。

そうしていると.....またスマホが鳴った。


ピコン


「.....穂高?」


(大博さん。玄関前に居ます。開けて下さい)


「.....また来たのかアイツ?」


俺は急いで立ち上がってから玄関に向かう。

それから玄関を開けると.....何故か服装を可愛くした穂高が立っている。

少し昔の服装だが全く違和感が無い。


俺に手を振ってニコッとした穂高。

訳も分からず俺は?を浮かべる。

何をやっているんだコイツは?

何故この服装で?


「お前.....どうしたんだ?」


「お金が無いですから.....お母さんの着ていた服で着飾りました。えへへ」


「わざわざそんな事をしなくても良いんだが.....ここに来るだけなのに」


ところがそんな複雑な顔をしていると。

穂高が少しだけ赤面してモジモジしながら言い出した。

とんでもない事を、だ。

それは。


「おうちデートしましょう。大博さん」


「.....は?.....え。マジで言っているのかそれは」


「はい。私は冗談は言わないですよ。貴方には何時でも真剣です」


「.....いや.....うん。わかった.....」


言われるがまま頷く。

いつになく直球だ。

そして穂高によるおうちデートがスタートした。


俺はどうしたら良いのか分からず困惑する。

あくまで俺はボッチなんだが。

思いながら盛大に溜息を吐いた。



「おうちデートの基本ですが.....先ず男性がエスコートするのが基本だと思っていますが.....でも私はそんな事はしません。私自身がエスコートします」


「それはデートと言えるのか?男の俺がサポートしないとマズくないか」


「大博さんは座っていて下さい。おやつ作ります」


「話を聞いているのかお前は」


聞いてますよ。

でもでも私に任せて下さい♪、と言いウインクする穂高。

俺は額に手を添えた。

そして穂高はニコッとしてから、台所借りますね、と何かを取り出しながら向かう。

おいおい何をやっているんだ。


「おい。材料費出すぞ。ただですらお前はお金無いのに。何やってんだ」


「大丈夫です。これも貯金ですから」


「アホ」


そうやって無駄金ばかり使って。

俺は溜息を吐いて台所に立ち上がって行って財布から金を出した。

それからそれを穂高の手に握らす。

穂高は目を丸くしながら俺を見てくる。

俺はそんな穂高の額を指で弾いた。


「痛い!」


「お前は何時も金を出させてばかりだな。俺にも活躍の場をくれよ」


「で、でも先輩。私の趣味費用.....」


「このアホンダラ。それにこれは俺がこうしたいからやっている。趣味は関係無い」


大博さん.....と額を抑えながら俯いてポツリ。

それから赤面した。

だから格好良いんですよ、と聞こえた気がしたが。

小さな声で分からない。

俺は、は?、と聞いたが穂高は、な、何でもありません!、と首を振った。


「.....あのな。小さい声は聞き取れない。聞こえるように言ってくれ」


「言いません。恥ずかしいです」


「え?」


「もー!!!!!良いから座って下さい!」


そして俺は真っ赤の穂高に台所から追い出された。

何だってんだよオイ.....。

と考えながら俺は、やれやれ、と座布団に腰掛ける。

そして穂高を待っていると。

穂高がひょっこりと顔を台所から覗かせた。


「そう言えば苦手な物って有ります?フルーツポンチ作ろうと思います」


「苦手なもの?無いぞ」


「そうですか。じゃあちゅくります.....あ」


「ハハハ。噛んだなお前」


煩いですね.....と恥ずかしそうに俯く穂高。

俺はその姿を見ながら苦笑する。

そして穂高は顔を上げた。

俺を台所から見てくる。


「ところで大博さん。私、何で来たか分かりますか」


「おうちデートをする為だろ?」


「はい。それも有るんですが.....」


「.....?」


私、大博さんをこのままずっと好きで良いのかって悩んでいます。

と穂高は心の底からだろうけど打ち明けた。

悩んでいる様だ。

俺は目をパチクリしてから穂高を見る。

そして聞いた。


「意味が分からないんだが」


「.....私、家が貧乏だし大博さんの横に立って良いのかって悩んでいるんです」


「.....ああ。.....成程な」


はい、と穂高は困惑しながら返答する。

俺は顎に手を添えて立ち上がる。

それから穂高の後ろに立った。

穂高は、な。何ですか?、と驚いている。


「全部お前らしい個性で良いんだ。お前の頑張っている姿は俺を活気立てる。何時も俺を助けてくれる。だから隣に立って良いんだ」


そしてギュッと穂高を抱きしめてみた。

と言うのもライトノベルにこうすると良いと書いてあったので。

そして言ってみると良いと書いてあった。

その為に実行してみたのだ。

だが.....。


「何を.....も、も、大博さん!!!!!は、恥ずかしいですぅ!!!!!」


熱が有るのかと思えるぐらい真っ赤の穂高に思いっきり殴られた。

俺は、お。おう!?、とそのまま食らったまま地面に倒れる。

穂高は、大博さんは愛してますけど恥ずかしいです!、とバッサリ断った。

だ、駄目なのか。

思いながら俺はグタッとした。


「.....でも嬉しいです。ぱわー、がでますよ。あはは」


「そ、そうか。.....しかし殴るなよ」


「大博さんが悪いです。でも.....」


と穂高は倒れている俺に膝を曲げて向いた。

そして反対側に回って俺の頬を持ってから唇に唇を重ねる。

俺は驚愕して見開いた。

な、な、ちょ!?

にしし、と笑顔になる穂高。


「お返しです。大胆な事をしてきた大博さんへ。大胆なファーストキスです」


「.....お、お、お前という.....」


「何ですか?これって全部、大博さんが悪いですよね」


「.....」


起き上がる。

唇に手を添えながら満面の笑顔を見せる穂高。

俺は真っ赤に赤面しながら.....唇に手を添えた。

桃の味がした.....。


「恋人同士じゃないのにお前.....キスなんぞ.....頬ならまだしも」


「関係無いですよ。好きな人だったら私、幾らでも踏み込みます」


「踏み込めますって。いや.....勘弁してくれ.....」


「ん?.....ああ、勘弁しませんよ。だって私ですから」


あはは。

とはにかむ、穂高。

俺は何度目かも分からない溜息を吐いて心臓のバクバクを抑えていた。


これが今、出来る事だ。

最大でも、である。

全くこの女は.....。

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