6、告白へ

第24話 滝水千歳(たきみずちとせ)

結論から言って俺は球技大会に参加は出来なかった。

だが智明が、みんなが教えてくれたりして。

そしてみんなと遊んだりした。

俺のクラスは球技大会で3位だったという。

まあそんなもんかと思いながら.....俺はみんなが学校に行っている間。


目の前の仏壇を見ていた。

爺ちゃんと婆ちゃんに挨拶をしながら.....俺は馬鹿な事をしてしまったと全部を打ち明けて反省する。

心の底から、だ。

怒り任せでやってしまって.....俺はガキの様な行動をしてしまった。

多くの人を傷付けたのだ。


「.....仮にも自宅待機で良かったかもな。こうやって反省も出来る」


一人しか居ない部屋でそう呟きながら。

手を合わせる。

そして.....少しだけ柔和になりそれから立ち上がった。


もう二度と俺は誰も傷付けたくない。

だからこれで最後だ。

その決意をしながら俺は爺ちゃんと婆ちゃんの遺影を見つめる。

爺ちゃんと婆ちゃんの教えの道徳に反しているしな。


「.....また挨拶します」


そして俺は戸を閉めた。

それから家の中を見渡す。

さてどうしたものか。

その様に考えながら、だ。

暇ではある。


「.....近所の本屋にでも行くか」


そう考えて俺は上着を羽織ってから。

バッグを持った。

そして行動を開始する。


ああ因みに母さんはこの件に関しては、仕方がないわよ、的な感じだった。

優しいもんだな、本当に。

思いながら俺は玄関に鍵を掛けてそのまま家の外に出た。



自宅待機中だからこんな事をしていたらマジに怒られるとは思うけど。

スマホをポチポチ弄るよりかは遥かにマシだろう。

とは言えあくまでに近所で済ませよう。

思いつつ近所に歩き出す。


そして本屋にやって来た。

金ちゃん本屋。

家主は金子要平という爺ちゃんがやっている本屋だ。

その様な名前ながら50年はやっている老舗の本屋である。

たまに行っているから金子さんとは知り合いだ。


ガラッ


「おや。いらっしゃい」


戸を開けると目の前にシャツを着た爺ちゃんが現れた。

この本屋の店主の金子さんだ。

つるつるの頭でシワが良い感じに顔に有りそして何時もの丸眼鏡で俺を見てくる。

御年86歳の爺ちゃん。

俺は笑みを浮かべて聞いた。


「.....爺ちゃん元気?」


「バリバリ元気じゃよ。ところで今日は学校はどうしたんだい?」


「あ?.....ああ。学校が休みでね」


「ほうかほうか。.....今日はまた本を買ってくれるのかい?」


爺ちゃんは柔和に笑みを浮かべながら俺にそう言う。

そうだね、と俺は軽く返事する。

そして本棚を見た。


本棚には無数の本が有る。

因みにラノベも置いて有る。

爺ちゃんはラノベに関してはかなり知識が鈍いようだが。


「ラノベも新しいのが入ったで。買うんやったら買ってくれ」


「.....ああ。新刊が入ったんだな」


「ほうや。新刊だ。でも相変わらずワシには何の事か分からん」


「今度教えてやろうか?爺ちゃん」


ほうやね。

教えてくれたら嬉しいけんね。

と爺ちゃんは腰に手を当てながら笑みを浮かべる。

相変わらずこの爺ちゃんは元気だな。

俺の.....亡くなった祖父に似ているから。


「それにしても.....相変わらずの人の数だな」


「それは気にする事じゃない。大切なのは本を求める心じゃな」


「.....爺ちゃん。売上が大変だろでも」


「気にする事じゃない」


相変わらず能天気な爺ちゃんだな。

思いながら俺は苦笑する。

いつかバイトを頼みたいと思っているんだけどな。

この場所なら.....上手く切り抜けれそうな気がするから。


「最近は鬼〇の刃が人気やね。ワシには分からんけど」


「あれは人気だよな。確かに。読んだけど面白い」


「ほうかほうか。ワシはやはり文学じゃな。それ以外は分からん分からん」


「太宰治が好きなんだっけ」


ほうよ、と答える爺ちゃん。

でも俺は文学は苦手なんだよな。

なんか暗い印象が抜けなくて。

でもそれってただの見た判断だけど。


「でも人には趣味それぞれ。人それぞれじゃからのう」


「確かにな。本を読む奴に悪い奴は居ないよな」


「全てとは限らんがのう」


ハハハと笑って爺ちゃんは本を買い求める人の相手に戻った。

俺はその姿を目線で見送ってから。

目の前の本を見る。

ライトノベルコーナー、だ。


「.....ああ、これ新刊出たんだな」


そうしていると。

横から目線を感じた。

俺はビックリしながら目線を辿る。


そこに何だか目がクリっとした美少女?いや。

同級生の様な子が.....立っていた。

ん?


「失礼ながらもしかして穂高と知り合いかな」


「そう言う貴方は?」


「私の名前は滝水。滝水千歳(たきみずちとせ)と言います。穂高の友人です。貴方はよく見ています。穂高の恋人なんですよね」


「.....いや、うん。それは違うけどな。って言うか何でこの場所に?」


俺は全身を見る。

体付きもかなりふんわりしておりクリクリした目をしている。

そしてゆるふわウェーブだけ?

そんな黒の髪型にそばかす。

それから金子本屋のエプロンって.....あれ?


「高校生じゃないのか?君」


「私は退学した身です」


「.....ああ。それはすまん」


「いえ」


ここのバイトさんなのか?君。

と聞く俺。

すると滝水は、はい、と返事をした。

成程な.....新入りか。

考えつつ滝水を見る。


「私、ラノベが好きです」


「いきなりだな。それは何故?」


「ラノベは面白いです。で、そんな事を考えながら来ていたら貴方が居ました」


「あー.....成程な。それはすまん。仕事中だったろ。ごめんな」


いえいえ。

大丈夫ですよ、と返事をする滝水。

俺は苦笑して返事した。

そうか、と言葉を発する。


「滝水。何かお勧めのラノベとか有るか?知りたいんだが」


「はい。有りますよ。幾らでも聞いて下さい」


「有難うな」


たったそれだけの出会いだったが。

この少女と、丁度俺の知り合いの仲と。

色々な出来事が起こる事になる。

この少女を中心として、だ。

それは.....お互いに不登校児、という点だ。

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