第21話 予行練習

会議室で俺が提案しての翌日の話の事だが。

今日は予行練習の日だ。

男子はサッカー。

女子はバレーである。

3時間ほどして終わるが.....。


俺は盛大に溜息を吐きながら.....サッカーに奮闘する。

だけど全くやる気が出ない。

サッカーを考えた馬鹿は死んで下さい。

そんな感じで恨みを入れながら球を目的に走り回る。

嫌でも動かないといけない為に、だ。


そしてそのまま休憩になった。

俺は盛大にゼエゼエ言いながら水道水をがぶ飲みする。

たまらないんだがこの暑さ。

3月なのに全然涼しくないし相当にキツイ。


何度も言うが3月なのに。

思いながらいると誰かが声を掛けてきた。

能天気な感じの智明だ。

俺は眉を顰める。


「よお♪」


「.....何だお前は。暢気そうに俺に声を掛けやがって」


「そんな事無いぜ。ほら。鞠が作ってくれたスポドレ飲むか」


「殺すぞお前。ガチで何やってんだ」


なにやってんだってイチャイチャしてんだよ。

と平然とへの様な目で回答するモジモジしながら回答する智明。

何だろうか、これほど智明を殺したいと思った事は無いんだが.....。

と言うかイチャイチャって何だよ。

いや、俺みたいなのが言える立場じゃ無いんだけど。


「しかしそれはそうとしっかり水分は取った方が良いよな」


「ああ.....まあそうだな確かに」


いきなり話を変えやがったな。

思いながらジト目で智明を見る。

智明は少しだけ慌てながら苦笑いをする。


「そ、それにせよサッカーとか.....勘弁してほしいよなマジに」


「確かにな。.....冗談抜きで死ぬって感じだ。本当に」


だな。あ。そう言えば。

俺の知り合いがなんか栗谷さんが好きだから告白したいとか言っていたから無理だと思うぞと断ったぞ。

と俺に告げてくる智明。

俺は、マジか?、と目をパチクリして聞いた。

智明は頷く。


「ああ。野球部の野郎なんだけどさ。栗谷さんはお前が好きだから無理だと言った」


「そいつはまた.....まあそうなんだけど.....でも断って正解なのかね」


「.....少なくとも好いている人が居るんだからな。だから正解だと思うぞ」


「だと良いけどな」


俺は水にタオルを浸しながら。

額に当てる。

あー.....ひと時の安らぎだ。

これで安らいだらまた地獄か。

最悪だな本当に、と思っていると。


「大博。あれって七水ちゃんじゃないか?」


「あ?」


「.....いや、あの体育館裏の女性と男」


「.....?」


俺は目を細めてここから上の方に見える体育館裏を見た。

そして見ると.....確かに穂高だ。

それから誰だあの男。

思いながら眉を顰める。


「告白か?」


「マジで?」


「本気で?」


そんなザワザワな感じになっていく周りの男子。

どうやら俺と同じで状況に気が付いた様だ。

俺は見つめる。

どうなろうが関係は無いのだが.....気にはなるな。

一応。


「アイツ.....って3年じゃないか?」


「ああ、先輩か.....」


成程な、周りの奴らの情報によると。

あの坊主頭は3年らしい。

と言うかこの時に告白するのか.....。

思いながら見ると。

穂高は頭を下げてから.....それから首を振った。


どうやら失敗したようだな。

まあそれはそうだろうな.....アイツは俺の事を好いているしな。

断るに決まっている。

そう思いながら見ていると。


こっちに穂高が駆け寄って来た。

俺は?を浮かべながら待っていると。

穂高はニコニコしながらやって来てから。

大博さん、と言ってきた。

その言葉に、どうした穂高、と答えていると。


智明たちが固まっている事に気が付いた。

な、な、な。

的な感じで、だ。

何だコイツら?

すると智明が代表して指を震わせながら言葉を発した。


「大博。お前。何時から名前で呼び合う仲に?」


「え?.....あ、えっとな.....」


「大博さんが好きだからです」


バキッと何か音がした。

何を言っている。

と言うか火に油を注ぐな。


いや、火にガソリンか。

俺は盛大に溜息を吐きながら額に手を添える。

男子達が、アイツマジに殺す、という感じになった。


小悪魔すぎるだろ。

と言うか小悪魔の領域を超えている気がする。

そんな穂高はクスクス笑いながら俺に持っている何かを差し出してきた。

俺はそれを受け取る。


「大博さん。これ」


「何だこれは?」


「スポドレです。作りました。愛情たっぷりで」


「.....火に油がどんどん注がれているんだが.....」


穂高は、え?、と反応する。

いや、男子達があのクソ馬鹿、マジコロス。

的な感じの言葉を発しながら血涙を流しているんだが。

俺は困惑しながらも穂高に感謝の気持ちを一応、伝えた。

穂高は少しだけ恥じらいながら、はい、と返事をする。


「羨ましいな。大博。あはは」


「.....何を言うか。お前だって美少女の彼女いるだろ.....」


「ば、馬鹿、おま!バラすなよ!」


青ざめる智明。

男子達の目が智明に向いて変わった。

ははは、ざまあない感じだ。

その様に考えながら、俺はお返しだ、と言う。

そして少しだけ笑みを浮かべた。


「散々やられたからな。お前には」


「くぅ.....覚えてろ.....」


「あはは」


そうしているとチャイムが鳴った。

俺は、あ、と呟く。

これに対して穂高も慌ててから、じゃあ戻りますね。大博さん、と手を振ってニコッとして去って行った。

俺は溜息を吐きながら見送る。


それから智明を見た。

智明は笑みを浮かべている。

戻るか、と言っていた。

だな、と返事する俺。


それから戻ってサッカーに復帰する。

面倒臭い、と思いながら穂高手作りの.....スポドレを見る。

何か紙が挟まっている。

ピンク色の紙が、だ。


(先輩。お父さんの件、一応に解決しそうです。有り難うです。愛してます)


「愛しています.....というかそうなのか.....」


俺はメモ書きに何度目かの笑みを浮かべる。

母さんが頑張ってくれているんだろうな。

思いながら.....よし。

と意を決して顔を上げると。


「大博ー。来いよー。先生がキレてるぞ」


「はいはい。すまん。多少ぐらい良いじゃねーか.....」


先生からアイツを呼べとでも言われたのか。

智明が大声で呼んでいる。

俺は少しだけ溜息を吐きながら行く。

少しだけ.....穂高のお陰で頑張れそうな気がした。

この先も、だ。


とは言え.....まだまだ本番じゃ無いんだよな.....。

本気で嫌だな、マジに。

明日が本番。

何が起こるのか.....と言うかこれ以上何も起こってほしくないんだが。

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