第18話 再会

話したかも知れないが智明には幼馴染が居る。

幼き頃のとある日。

智明はその幼馴染の告白を茶化して断った。

そのまま智明の幼馴染は複雑な思いを抱えたまま外国に引っ越して行ったという。

智明は愕然としていた。


俺には智明はその幼馴染の告白を受けなかった事を後悔していると言っていた。

その後に智明は、後悔するかも知れない事は先に先手を打て。後悔するな、をスローガンで生きて行くぐらいに.....反省している、会いたい様だった。

だけど俺にはどうしようも無かったのだ。


だがその智明の幼馴染、井上鞠さんが何故か日本に帰国して居て。

そして今、遊園地に呼び出した智明と再会した。

智明は.....涙を浮かべて井上さんを見ている。

駄目だこりゃ。涙が止まらない、とか呟きながら、だ。

井上さんも涙を浮かべている。


「.....智明。久々だね」


「ごめん。信じられないんだけどマジに鞠なのか?」


「うん。鞠だよ。久しぶりだね。ごめんね。連絡手段が有ったら.....良かったんだけど.....」


「.....」


二人は手を握り合う。

その姿はまるで遠くに行ったロミオとジュリエットの再会の様だった。

俺と七水は顔を見合わせて、微笑みを浮かべる。

それから俺はその後に一歩を踏み出して智明にチョップを打ちかました。

智明は、オイ!?、とか言うけど関係無い。


「お前。こんな美少女の幼馴染が居るなんて羨ましいな」


「いやいや、茶化すなよ。マジに俺、嬉しいんだから」


「ははっ」


智明は涙を拭きながら笑みを浮かべた。

そして、マジに有難うな、と言いながら俺を見てくる。

俺は首を振った。

それから、殆ど何もしてない、と口角を少しだけ上げて答える。

智明は、そんな事ねぇよ、と苦笑した。


「お前はそう言うけど.....お前がやってくれた事。それは世界を確実に変えてるぞ」


「俺は.....何時も人にやっている事だけだ。そんなにデカく無い」


「大博。少なくともお前の人間関係にそれは返ってきているぞ。そんな風に反応するな」


「.....」


そうか.....もな。

思いながら俺は再び少しだけ口角を上げた。

智明は、さて立ち話はこれぐらいにして、と言う。

そして井上さんをゆっくり見る。


「デートの邪魔しちゃ駄目だよな。お前と七水さんの」


「別に邪魔じゃねーよ」


「いや、邪魔している。俺達は俺達なりに遊んで帰るから。な」


「.....智明.....」


何だ?と俺を見てくる、智明。

俺はそんな智明に首を振ってからお礼を言った。

有難うな、と、だ。

目を丸くして俺に苦笑する智明。


「いや、俺こそ何もしてないだろ。兄弟」


「.....いや。お前の存在が有ったから、な」


「水臭えって」


「.....」


全く、この猿は.....。

本気で友人として.....有難いぐらいだ。

思っていると、じゃあ俺達。帰るからな、と俺達に手を振る智明。


井上さんも頭を下げてから智明に付いて行く。

俺は幸せそうなその姿を見ながら手を振る。

そして七水と共に見送った。

七水が俺を見上げる。


「.....良かったですね。先輩」


「.....そうだな。本当に良かった」


「先輩」


「.....何だ。七水」


私、先輩の事、先輩って呼ぶんじゃなくて大博さんって呼んで良いですか。

と言葉を七水は発した。

俺は驚愕に目を丸くする。

どういう事だ?


「.....井上さんを見ていたらそう呼びたくなったんです。.....駄目.....ですか?」


上目遣いで俺を見てくる七水。

俺は溜息を吐きながらも、構わない、と答えた。

好きに呼んでくれ、とも。

七水はパアッと明るくなった。


「.....じゃあ大博さんも私の事、穂高って呼んで下さい」


「嫌だ」


「えぇ!?」


「当たり前だろ。何で後輩をそんな呼び方で呼ばなくちゃいけない。恥ずかしいだろ」


ブーッと頬を膨らませる七水。

俺はその姿にまた溜息を吐きながら.....分かったよ、と額に手を添えた。

そしてボソッと小さな声で呼ぶ。


「.....穂高」


「はーい♪」


「.....お前、意地悪すぎじゃないか?かなり苦しいんだが」


「何も。これって当たり前の事ですよね。成り行きなら」


そして俺の腕に腕を絡ませてくる、七水.....じゃない、穂高。

俺は盛大に何度目かも分からない溜息を吐いた。

穂高はニコニコしながら俺を見てくる。

そして幸せそうにスリスリしてきた。


「デート再開しましょう」


「オイオイ。いきなりだな.....」


「観覧車に乗りたいです」


「観覧車か。じゃあ乗るか.....」


そして穂高は、はい、と笑顔で可愛らしく返事をした。

苦笑する俺。

それからそのまま俺達は観覧車のチケット売り場に向かい。

そして乗った。



「本当に高いですね」


「この街では1番の観覧車らしい」


「そうなんですね。流石は物知りです」


「.....」


子供の様に無邪気にゴンドラの中で下を見下ろす穂高。

俺はその姿を見ながら.....街を一望する。

何を思っているかって?

この街のどっかに親父は居るのかとか考えたりしている。

二度と会いたくない奴だ。


「大博さん。顔がキツイですよ」


「.....ん?.....ああ。すまん」


「それにしてもチケット代、出すのに.....」


「お前は金を持ってないだろ。俺に任せろ。こういうのは彼氏の役割だ」


ムスッとしている穂高。

俺はその顔に少しだけ苦笑いしながら.....穂高の頭に手を添えた。

そして優しく撫でる。

すると.....穂高がその手を握った。


「.....大博さん」


「.....何だ。穂高」


「せっかくここまで来たんですからキスしても良いですか」


「.....は.....?は!?」


勿論、頬にキスですよ。

唇同士は私が根性無しなので。

と、ニシシ、と笑う穂高。

冗談だろ、と思い俺は赤面した。

そして穂高を見る。


「いやいや、私、冗談を言わないです」


「あのな。そういうのは本当に好きな.....」


「私は大博さんが好きです」


「.....あのな.....」


俺は無理だって。

今の俺の心理状態とか考えたら。

言ったが、穂高は首を振ってから立ち上がった。

そして迫って来る。

慌てる俺。


「お前.....!?」


「女子にとっては大切な思い出が欲しいです」


「.....冗談だろ。ふざけ.....」


そして穂高は。

逃げられない俺の頬にキスをした。

それからよく考えたが、この事をする為に観覧車を選んだな!?、と頭で思ってしまった。

コイツ.....マジに小悪魔だな。


「えへへ。ファーストキスです」


「.....お前な.....計画的犯行だろ」


「ですね。あはは」


そして観覧車は一周回った。

それから.....地面に降り立ってから。

俺は穂高を見た。

穂高はニコッとしながら俺を見てくる。

いかん.....。


「あ。大博さん恥じらってる。あはは」


「良い加減にしろお前.....」


「良いじゃないですか。キスぐらい」


「.....心臓が痛いんだが.....」


でもでも、これだけ好きって事を貴方に伝えたかったんです。

と口角を上げて花咲く笑顔を見せる穂高。

俺は.....その姿に目線だけずらした。

幸せになっても良いかな。

そう考える為に、だ。



「ジェットコースターが凄まじかったですね」


「お.....おう」


「もー。大博さん。格好悪いです」


「無理だろお前。ボッチがジェットコースターなんぞ」


キス事件の後にジェットコースターに乗った。

って言うか気分が悪いんだが。

考えながら穂高を見る。

穂高は、あはは、と笑っている。

笑うなよ。


「でもとっても幸せです。私」


「.....そうか。それなら良かったよ」


「.....大博さんは幸せですか?」


「俺は幸せとか分からない。だけどお前と一緒は楽しい」


そうですか。

とっても嬉しい回答です。

とニコッとしながら俺を見てくる。

全くな.....この笑顔にいつも騙される。


「.....そう言えば大博さん。確か.....球技大会の委員になったんですよね?」


「.....そうだが。それがどうした」


せっかくだしお祝い買いましょう。

と直ぐに俺を引き摺ってからグッズ屋に向かう穂高。

祝いなんぞ要らんのだが.....。

考えながらも着いてしまった。


「じゃあ入りま.....あれ?」


「.....え?はーくん?」


「.....お前は何をしているんだ。栗谷」


何故か栗谷御幸が居た。

可愛らしい服装で、で有る。

パンダのぬいぐるみを持っている。

そしてそれを直ぐに隠した。

俺は?を浮かべて見る。


「な、何でこの場所に.....」


「こっちの台詞だ。何をしている」


「.....わ、私?いや.....何でも無い」


「それは無いだろ。お前の隠したものから察するに」


つまりコイツは何かグッズを買いに来たって事か。

思いながら見ていると穂高がニヤニヤした。

そして栗谷を見る。


「栗谷先輩も可愛いですね。あはは」


「からかわないでよ」


「あはは。すいません」


「.....でも何をやっているの?二人で」


そう言えば栗谷に話して無かったか?

このデートの件。

思いながら栗谷に向いた。

すると栗谷は何かを察した様にハッとする。


「まさか.....デート.....ちょ。はーくん?」


「.....そんなに睨むな。これは強制だぞ」


だがそう言っているのに見せ付ける様に俺の腕に絡まって来た穂高。

そしてニヤニヤした。

栗谷は顔を引き攣らせる。

それからジト目になり、俺を見てくる。


「でも.....ふーん。楽しそうだね.....」


「お前、さっきの言葉、聞いてたか?」


「.....ふーんだ」


全くどいつもコイツも.....と思いながら額に手を添える。

それから栗谷に向く。

そのパンダは買うのか、と聞いた。


「え!?か、買わないよ!こ、こんなパンダ!」


「.....嘘吐けお前.....」


「可愛い秘密を知っちゃいました」


「もー!!!!!買わないって!」


真っ赤に赤面して( ;∀;)的な感じで抵抗する。

それから笑いつつ暫く俺達は会話しながら。

別れてからグッズを買い出す。


と言うか栗谷ってパンダが好きなんだな。

初めて知ったな.....。

アイツの誕生日にでも贈ってやるか。

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