第17話 智明の幼馴染

七水は嬉しそうだった。

その顔からも本当に笑顔が溢れる。

だが本心は心配がいっぱい有るだろう。

七水は.....本当にいい女の子だと思う。


俺には彼女は余りに勿体無い。

だけど七水は言う。

俺が好きだからだから振り向かせます、と、だ。

何でそんなに俺を.....こんな俺を。

好きになってくれるのだろうか。


「それは勿論、先輩が優しいからです。そして.....みんなを助けてくれるヒーローだからです」


「.....それが偽善だとするならどうするんだ?」


「それは無いですよ。先輩は.....そんな人じゃないです。知ってます。有り得ないです」


遊園地にやって来た。

この遊園地はそんなにデカくはないが、デートには最適だろう。

電車に乗ってから二駅先に有る場所だ。

俺は飲み物を飲みながら.....ニコニコしている七水を見る。


「先輩は偽善って言ってますけどそれは偽善じゃ無いんですよ。偽善は本当に悪い人です。先輩はそんな人じゃないです。偽善の皮を仕方なく被っているだけです。中学生から今まで見てきた私が言うんです。大丈夫ですよ」


「.....そうかな」


「はい」


でもそれはそうと美味しいですねこのジュース。

と笑顔を絶やさない七水。

俺はその姿を見ながら周りを見渡す。

すると.....何か周りを見渡しながら地面を見ている女の子が居た。

俺は首を傾げて七水に言う。


「七水。すまん。ちょっと席を外すな」


「え?どうしたんですか?」


「なんか困っている人が居るみたいだから」


「あ、あの人ですね。じゃあ私も行きますよ」


じゃあ手伝ってくれるか。

と俺は七水に笑みを浮かべる。

その言葉にビックリしながら目を丸くした七水。

どうやらそう言われるとは思ってなかったようだ。


「先輩。頼ってくれるんですね」


「.....駄目か?」


「駄目じゃないです。有難うです」


「.....ああ」


そして俺達はゴミ箱に飲み物のケースを捨ててから。

その女性に声を掛けた。

女性は顔を上げる.....って。

何だこの美少女。


「はい?」


「.....あ、いや。.....困っているんじゃないかって思ってな」


その女性の容姿。

先ず煌びやかな艶の有る長い黒髪。

そして顔立ちは外国人の様で凛としている。

相当な美少女で有り。

顔立ちが整いまくっている。

七水に負けず劣らずの美少女にビックリしながら見る。


「あ、すいません。大切な物を失くしてしまって探していました」


「総合センターとかは頼ったのか」


「.....いえ。無いと言われまして.....だから私自身で探そうと思って」


「じゃあ私達も手伝いましょうか。先輩」


え?そんな事をする必要は.....と目を丸くする少女。

俺達は顔を見合わせて頷く。

ここで会ったのも何かの縁ですよ、と七水が言った。

そして俺はその少女に聞く。


「何を失くしたんだ?」


「ロケットペンダントです。私の大切な人の写真が入っています」


「.....そうか。じゃあ七水。あっち探してくれ。俺はこっちを」


「はい。先輩」


それから俺達は別れる。

少女が、本当にすいません、と頭を下げた。

俺は首を振りながら笑みを浮かべる。


「人助けが趣味な感じだから」


「私、井上って言います。井上鞠(いのうえまり)って言います」


「.....井上.....鞠?」


何だかその名前は.....聞き覚えが有るような?

それも身近で聞いたような気がする。

俺は考えたが。

そんな事よりと思ったので動き出す。


「井上さん。具体的に無くなった場所って分かるか?」


「.....そうですね.....もしかしたら観覧車の辺りかも知れないです」


「.....そうなんだな。じゃあ探すか」


「はい」


そして俺は直ぐに観覧車の近くに向かった。

それから観覧車の近くを捜索する。

人が多いな.....。

思いながらも脇の方とか捜索すると。

キラッと光る何かが有った。

俺は手を伸ばして草むらを漁ると。


「!.....あった.....」


そのロケットペンダントはケースが開いていた。

そして中の写真が露になっている。

俺は直ぐに閉じようとした.....際に。

中の写真を見てしまった。


「.....?!」


中の人物の写真に驚愕だった。

何故ならそこに写っていた人物。

それは.....智明。

つまり飯島智明が写っている。

なん.....え?


「ありましたか?」


背後から井上さんの声がして、あ、ああ。、と言いながら。

ロケットペンダントを見せる。

すると目を輝かせて井上さんは喜んだ。

手を叩きながら、だ。


「有難うです!嬉しいです!」


「あ、ああ」


「.....どうしたんですか?」


ロケットペンダントを身に着けている中。

井上さんはクエスチョンマークを浮かべながら俺を見てくる。

どういう事なのか.....と思ったが。

まさかだろ。

いや、そんな事が?


「.....井上さん。偶然中を見てしまった。ごめんな。で、その中に写っている写真なんだけど.....」


「あ、中.....あの男の子ですか?私の幼馴染なんです」


「.....」


「.....今はもう会えない初恋の人です」


こんな偶然が有るのか?

だってそうだろ。

俺の友人だぞそれ、と思いながら顎に手を添えて。

ロケットペンダントが有った、とメッセージを七水に飛ばしてから。

井上さんを見る。


「.....井上さん。それ俺の友人なんだけど」


「.....え?」


「その初恋の男の子はおれの友人だ。智明だろ。飯島智明」


「.....それって本当ですか?」


目を丸くする井上さん。

そして俺の肩を掴んでくる。

本当にですか?と、だ。

俺は頷いた。


「.....俺の友人がアンタの事、気にしていた。ずっと.....後悔に明け暮れていた」


「.....私が振ったからですか?」


「そうだな。でも智明は.....アンタの事、幸せになる様に願っていたぞ」


「.....」


涙が溢れてきた井上さんを見ながら。

俺は笑みを浮かべる。

そんなに私の事.....を。

と嬉しそうに笑みを涙を拭いながら浮かべた。

すると七水がやって来る。


「どうしたんですか?」


「.....七水。凄いぞ」


「え?」


俺は全てを話した。

それから.....七水は驚愕しながら。

目を丸くした。

そして涙を浮かべる七水。

いや、お前まで泣くのかよ。


「.....本当に良かったですね.....井上さん。好きな人と久々に巡り合えそうで」


「.....はい」


「.....」


爺ちゃんと婆ちゃんが井上さんを引き寄せたのだろうか。

赤いお守りのお陰なのだろうか。


思いながら俺は空を見上げながら少しだけ笑みを浮かべた。

それはそうと智明のアホに知らせないといけない。

思ってから俺はスマホを取り出した。

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