4、球技大会まで

第14話 限界

散々な結果とは言わないがそこそこな結果になった科目も有った。

勉強はしていたんだが.....残念過ぎる。

何の科目かと言うと.....そうだな、物理だ。


難しいよな、あれ。

計算しろだのとか.....無理に決まっている。

勉強しても分からないモノは分からないから。

考えながら俺は額に手を添える。


そして階段を降りて来た。

もう直ぐ放課後になるがその中休みだ。

午前中授業だしな。


智明に、ちょっと行って来る、と話してから。

栗谷にも言って保健室までやって来た。

何の為にと言えば勿論、来栖に会う為だ。


大丈夫だろうかと思ったのだ。

テストもそうだが.....体調とか、が。

そして俺は咳払いをしてノックをする。


コンコン


「はい」


「入っても良いですか」


「どうぞ。良いわよ」


室内に入る。

そこに来栖が勉強道具を片付けながら居た。

俺を見てから目を丸くしている。

保健室の先生が優しく話しかけて来る。

女医さんに見える先生だ。


「どうしたの?」


「あ、いえ。来栖仲さんの様子が気になって。俺、友人なんです」


「あら。そうなの?.....来栖さん。お友達が来てくれたのね」


「はい。私の幼馴染に近いです」


そして俺はニコッとする来栖を見る。

来栖は.....少しだけ疲れた様子だった。

俺はちょっとだけ眉を顰める。

そして来栖を柔和に見る。


「.....身体は大丈夫か」


「.....え?.....あ、うん。大丈夫だよ。比較的にはね」


「そうか。なら良いんだが.....」


思いながら目線をずらす。

そして直ぐに戻してから来栖を再度、見た。

それから思っている事を口にする。

その言葉を、だ。


「来栖。今度.....家に行って良いか。お前の」


「.....え?.....来るの?」


「.....ああ。お前ん家に久々に行ってみたい」


「そう.....うん。良いよ」


ニコッとする来栖。

俺は、そうか、と返事をした。

それから来栖は荷物を持って立ち上がる。


どうやら帰宅するらしい。

そう思った俺は、持つか、と言うが。

大丈夫、と来栖は返事をした。


「.....学校で会えて良かった。嬉しかったよ」


「そうなの?学校で会うって特別かな?」


「ああ。俺にとっては新鮮だよ」


「.....そうなんだね」


ニコニコの笑顔の来栖。

本当に嬉しいんだな、俺に会えて。

そんな感じだ。

その笑顔に惚れそうになる。

だけど.....俺は。


「.....来栖」


「何?大博」


「.....俺、変わったかな」


「.....うん。変わった。良い方にね。.....これからも頑張って。応援してるよ」


そうか、と俺は目を閉じて開ける。

そして来栖に口角を上げた。

それから来栖は俺に、保健室の先生に頭を下げてから。

そのまま挨拶して帰って行った。


「貴方も早く戻りなさい。遅刻するわよ」


「あ、そうですね。戻ります」


そして俺は急いで駆け足で戻った。

テストは終わったし.....次は球技大会か。

それからデート。

さて.....どうなるのやら。

思いながら俺は.....教室に駆け込んだ。



球技大会の件に関して。

放課後になって役割分担が始まった。

俺はテストの疲れで欠伸をしながら外を見る。

そしてクラス委員長の長嶋と担任を見る。

長嶋は俺たちを見ながら黒板にチョークで刻んでいた。


「それじゃ、皆さん。男子女子で班長を決めたいと思います」


「「「「「はい」」」」」


「誰かやってくれる人は居ますか」


その様に委員長が言うと周りの奴らがみんな顔を合わせた。

そして見合ってからザワザワする。

まあ俺は選ばれないだろうしな。

思いながら外を見ていると.....。


「はい。、大博くん.....じゃなくて、波瀬君が良いと思います」


「は!?」


顎から落ちたわ。

何を言ってんだよ栗谷は!?

思いながら俺は栗谷を見る。

ボッチなのを知って言っているのか!?

栗谷を見る。


「私、波瀬君の良い点を幾つも知っています。だから.....良いかなって思いました」


「お.....おい。栗谷.....」


冗談じゃない。

考えながら委員長を見る。

だが委員長は、じゃあ波瀬君で!、とノリノリだった。


いや、ちょ、うっそだろお前。

周りも否定しろよ。

面倒臭がるな!


「まあ波瀬で」


「だな」


「うん」


クソ馬鹿共。

肝心な時に役に立たない。

俺は盛大に溜息を吐きながら.....困惑する。

マジに困るんだが。


「大博が.....クスクス」


智明が爆笑している。

あの野郎....。

俺は直ぐに委員長に提案した。

許さんぞアイツ。


「俺としては飯島が良いと思います」


「なっ!おま!ざけんな!」


「飯島君.....でも.....やっぱり波瀬君が良いと思うな」


「ですよね!委員長様!」


クソッタレめ。

マズイ、このままではマジに俺で決定してしまう。

勘弁してくれ。

思いながら周りを見るが。

周りは、やれ、的な感じになっていた。


「じゃあ異論無しで。有難うね。波瀬君」


「.....うっそだろ.....」


「頑張るんだ。はーくん」


「.....何を.....栗谷.....最悪だ.....」


いやいやこの人ら.....。

どんだけやる気ないんだよこのクラス。

最悪だわ本気で。

俺は盛大にまた溜息を吐きながら。

額に手を添えた。


そしてそのまま球技大会の班長に俺が確定した。

女子の班長は栗谷。

何が起こるのやら考えたくも無い。

そして想像もしたくない。

非常に面倒臭いのだが。


でも.....何だろうな。

こういうのも経験かも知れない。

そう思うと.....多少は身軽な気がしてきた。

俺は.....苦笑しながら.....思う。



夜の事だ。

テストの頑張った事を母さんに知らせた。

それから俺は.....自室に戻る。

そして.....漫画を読んでいた.....その時。

電話が掛かってきた。


「はい?.....もし.....」


『せ、先輩。大変.....大変なの.....』


「.....?.....どうしたんだ!?」


『お父さんが倒れた.....』


最悪の事を聞かされた。

俺はただ.....青ざめるしか無く。

そのまま起き上がって慌てて聞く。

それからどうしたんだ!、と。


「病院にお父さん、搬送されたの.....今、病院です.....」


「なんてこった.....」


俺は慌てて飛び出す。

すると母さんが見開いて俺を見た。

どうしたの?と、だ。

直ぐに俺は答える。


「後輩のお父さんが倒れたって.....だから病院に行って来ます!」


「ちょ、ちょっと待ちなさい!」


「何だよ母さん!」


「大丈夫なの?!」


大丈夫な訳が無いとは思う。

ただアイツは苦しんでいるだろう。

思いながら.....俺は上着を羽織って飛び出した。

このまま.....いや。

これ以上、何か起きなければ良いが.....と思いながら、だ。

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