第13話 テストの日と来栖仲

俺は輝かない存在だ。

だけどそんな輝かない存在でも。

仲間達は手を差し伸ばしてくれた。

俺の初恋をした相手が.....俺を、頑張ったね、と言い聞かせてくれて。

ただ.....嬉しかった。


ここまで生きて来られて良かったなって。

そう.....思えた気がした。

俺は仲が帰って行ってから思う。

そんな俺だが.....例のバットを見ていた。


「.....もう捨てても良いよな。これ」


思って俺は決別の意味でバットをゴミ箱に捨てた。

新しくなろう俺は.....。

変わる必要も有る気がするのだ。

そう考えながら俺は.....窓から外を見る。


薄暗い世界が広がっている。

母さんは今日も遅いだろうな。

思いながら.....俺はスマホを取り出した。

そこにはメッセージが寄せられている。


(先輩。今日、楽しかったですね)


(はーくん。お疲れ様)


(お疲れ)


この仲間達が居る限りは俺は大丈夫だ。

きっと.....そう思える気がした。

さて、明日は.....テストだな。

思いながら動こうとした時、メッセージが来た。


(先輩。お花見しませんか)


「.....?.....お花見.....」


七水がそう提案してきたのだ。

俺は?を浮かべてメッセージを打つ。

そして送る。

何だってお花見なんだ。


(.....花見する?何処でだ)


(そうですね.....近所の桜公園でやりましょう)


(とは言っても桜は散り始めだろ)


(大丈夫ですよ。だって.....桜見れなくても先輩達と一緒だから楽しいです)


七水はそうメッセージを寄越した。

俺は少しだけ鼻息を出しながら。

分かった、とメッセージを送った。

そして.....俺はスマホを仕舞う。


「.....花見か」


花見と言えば。

母さんと一緒に行ったな。

よく、だ。

最近は忙しいから行ってないけど。

まさかアイツらと一緒になんて.....思わなかったな。


「.....勉強すっか」


そして俺は勉強を始めた。

勉強しかする事無い。

本当に、だ。


そのうち他の趣味も見つけたいもんだな。

思いながら.....勉強をする。

そうしているとスマホが鳴った。


(先輩。いつデートしましょう)


(ついさっき花見って言っただろお前)


(デートしたいです)


(分かった分かった。いつするよ)


そうですね。

今週の日曜日はどうですか?

と俺に文章を打ってくる。

俺は.....その文章を見てから考える。


(分かった。デートは日曜な)


(はい。嬉しいです。楽しみです)


「.....」


付き合ってない人間がデート.....か。

おかしな事が有るもんだな。

考えながら画面を見る。

そして聞いた。


(デートプランは?)


(私が決めて良いですか)


(.....そうか。分かった)


(はい。有難う御座います)


嬉しそうな感じで絵文字混じりで送ってくる。

俺は盛大に溜息を吐きながら.....見つめる。

デートか.....昔の俺だったら有り得ないなマジに。

だって外に出るの嫌いだったから。


「忙しくなりそうだ」


そして俺は勉強をし始める。

それから.....文章を書いたりしていると。

母親が帰って来たので飯を食った。



「今日のテストはどんな感じかな」


「勉強出来たのか。栗谷」


「うん。私、頭だけは.....良いからね」


そんな感じで会話しながら翌日の朝、登校する。

すると横からチャリンチャリンと音がした。

自転車の音だ。

見ると、七水だった。


「おはよう御座います。先輩方」


「.....おう。相変わらずだな」


「ですね」


ニコッとする七水。

相変わらずの可愛い笑みだ。

俺は少しだけ笑みを浮かべて見る。

すると更に声がした。


「ウィース」


「智明」


「何話してんの?」


「勉強の事とテストの事だ」


何だー。

そんな事かよ、と智明は青ざめる。

何だコイツは.....勉強したのか?

考えながら聞く。


「智明。勉強したか」


「え?.....う、うん」


「.....回答が遅い。お前、ラノベ 読んでたな?」


「そ、そんな事は御座いませんよ」


どうかなコイツの事だし。

赤点取るなよと言う。

そんなもん取ったらお前だけ花見会には呼ばない。

と告げた。


「それは無いだろ。親友」


「喧しい。お前は赤点が多すぎるんだよ」


「あはは」


栗谷、笑えないからな。

全科目で赤点4つ以上を毎回は留年も有り得る。

それを智明は既に全てを含めると3回だ。

俺はかなり心配だった。

智明の成績が、だ。


「お前は赤点をもう取れないからな。覚悟して受けろよ」


「う、うす」


「.....本当に大丈夫なんかコイツは.....」


額に手を添えながら。

俺は溜息を吐いた。

そして学校まで来てから.....俺は七水と別れる。

それから下駄箱に行った。


「そういや来栖さんの件だけど」


「.....ああ」


「.....大丈夫か?」


「.....大丈夫だろ。アイツ外に出てたし」


そうか、で、美少女なのか?

と俺に聞いてくるアホ。

俺は、そればっかりか.....、と再び溜息を吐いた。

まあそれはジョークだけど、と言いながら。

真剣な顔になる智明。


「.....良かったな。少しだけでも顔が見れて」


「まあな」


そうしていると声掛けが聞こえた。

栗谷が俺達に向いている。

俺と智明は栗谷を見た。


「智明くん。はーくん。早く上がろう」


「おう」


「そうだな」


そして俺達は階段を登って行こうとした。

明日への道になりそうな階段を、だ。

その際に.....保健室を見た。

そこに.....ん?


「仲?」


「.....あれ。大博」


「どうしたんだ?今日.....登校出来たのか」


「うん。テストを受けに来たの」


そんな会話をしていると。

二人がきょとんとしていた。

おっと.....と思って俺は制服を着ているその少女を二人に紹介する。

手を広げて、だ。


「.....この子が来栖だ。来栖仲、だよ」


「.....え?この子が?例の?」


「マジか」


仲は少しだけ.....体調が悪そうな感じを見せる。

どうやら人にあてられている様だ。

俺は仲に笑みを浮かべる。


「大丈夫。コイツらは.....お前の味方だ」


「.....うん」


そんな会話をしていると。

栗谷と智明が顔を見合わせて頭を下げた。

そして挨拶をする。


「俺は飯島智明っす。宜しく」


「私は栗谷御幸です。宜しくです」


「.....宜しく」


俺の後ろに隠れながらも。

頭を控えめに下げて挨拶をした仲。

俺はそのまま仲を見た。

じゃあ俺達は教室に行くな、と言いながら、だ。


「.....うん。気を付けてね。皆さん」


「.....来栖さんも気を付けて」


「そうだね。栗谷ちゃん。気を付けて」


「じゃあな。仲。また今度」


仲は笑みを浮かべた。

そして俺達は別れてから階段を上がって行く。

その途中でブツブツと栗谷が呟いていた。

羨ましいな.....下の名前で呼び合うって、と、だ。

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