第11話 勉強会 3

実は俺は初恋をした事が有る。

その女の子は.....幼稚園の時に知り合った女の子で。

栗谷の前に俺を弱虫だとイジメられている中から助けてくれた女の子だ。

来栖は憧れの存在だった。


言えば.....ヒーローの様な、だ。

ヒーロー像として.....目指せる様な。

そんな存在に見えた。

だけどある日の事。


俺の親父はヒーローに対して.....俺のガキに近付くなと命令して。

そして来栖と俺の縁を一方的に切った。

それから来栖は引っ越して行き。

俺は.....幼稚園以降。

アイツに会えなかった。


その時からかも知れない。

俺はもう二度と。

恋はしないと思ったのは。

俺が近付けば全てが不幸になると、そう思ったのは、だ。

だから俺は心を閉じたのだ。


だけどそれはいけないと言ったのが俺の仲間達だった。

栗谷とか、だ。

俺はその栗谷と智明と七水に笑みを浮かべながら。

過ごしていたのだが.....。

来栖から手紙が来てから.....何だか胸が.....。


「どうしたんですか?先輩」


「.....ん?.....いや。どうもしてないぞ」


「.....でも何だかおかしいよ?はーくん。トイレから戻って来てから」


「お前ら。人が大丈夫って言ってんのに」


でも何だか集中出来てない様子ですよね。

と俺を見てくるみんな。

俺は苦笑しながら、大丈夫だ、と言う。

そして集中した。


果たして俺はどうするべきか。

来栖が.....不登校。

不登校の面は栗谷の兄と重ねてしまうな。

家で大変なのでは無いだろうか。

思いながら数学を解く。


「飽きたな。しかし」


「早いわ。智明。まだ15分しか経ってないじゃ無いか」


「ゲームしようぜ」


「話を聞け」


ゲーム?あ、良いですね。

と笑みを浮かべて手を叩く、七水。

そして、そうだね、と栗谷も賛同する。

俺は溜息を吐いて智明を見る。


「ゲームってのは?」


「簡単。こういう人数の時は王様ゲームだ」


「.....お前、マジで言ってる?」


「王様ゲームはええぞ」


ニカッとする智明。

ええぞ、じゃねーよ。

こういう人数.....だからか。

そうだな.....。

思っていると栗谷が、じゃあ王様ゲームで、と柔和になった。


「栗谷。智明の考える王様ゲームはとんでも無くヤバいぞ」


「失礼だな。大博。大丈夫だって」


「ヤバい.....え?」


本気で身を引いている。

ドン引きしている。

俺は智明を見た。

智明は慌てている。

そんな事無いって!、とだ。


「お前が余計な事を言うからだぞ。大博」


「お前の場合、何をしてくるか分からないからな」


「大丈夫だってばよ!」


「.....だったら良いが」


おう、じゃあ待ってな。

とノート、紙をちぎり出した。

ナンバーと王様を記す様で有る。

俺はその間に.....来栖の事を思った。


「.....まあアイツだしな」


「ん?大博。何か言ったか?」


「何も。大丈夫だ」


よし!出来たぞ!と声を出す智明。

俺は、おう、と返事した。

みんなにちぎった紙を見せる。

手の中に入れた。

そして智明はニカッとした。


「引いてくれ」


「.....誰から引く?」


「じゃあ私いきます」


そして七水が引く。

栗谷が、俺が、智明が。

続々引いてから.....俺達は掛け声を合わせた。

王様だーれだ、と、だ。

静かに智明が手を上げる。


「俺だわ」


「お前かよ.....」


何で智明なんだよ。

思いながら智明を見る。

智明はフッフッフ、とニヤッとした。

そしてこう告げる。

腹黒い感じを見せながら、だ。


「2番が3番の頬にキス」


「ハァ!?ふざけんなよお前!」


誰だよ2番って!

もし七水と栗谷が当たったらどうする気だ!

お前もそうだけど!

思いながら周りを見ていると.....栗谷がボッと赤面した。

そしてか細い腕を上げる。


「.....わ、私.....」


「おう。で、3番は.....」


「.....俺だけど」


「ホホーウ!お前か!」


わざとらしいな此奴。

後でこのクソバカ、殴ろう。

改めて思いながら.....栗谷を見る。


栗谷はあわあわしている。

え、本当に.....と言う感じで、だ。

七水が.....怖いんだが。


「王様の命令.....だよね」


「.....お前さ、無理なら良いんだぞ。このクソバカを殴ればそれで良いし」


「いや!やる!」


「いやいや.....お前。流石に冗談.....」


と思った次の瞬間。

俺の頬に柔らかい感触が有った。

驚愕して見ると。

栗谷がキスをしている。


「ど、どうかな.....」


栗毛色の髪の毛を弄りながら.....栗谷は赤面する。

俺も流石に恥ずかしかった。

ヒャッハー!とか智明が言う。

七水は、眉を顰めて、ムーッ、としていた。


「お前.....マジにやるなよ.....」


「えへへ。好きだから」


「.....ハァ.....」


そんな感じでいると。

じゃあ次だ!と智明はノリノリで言う。

俺はそんな智明に近付く。

そして眉を寄せて威圧した。


「お前.....次にふざけた命令したら殺すぞ」


「お、おう。お前、そんな顔出来るんだな.....」


「だぞ。良いか」


「.....わ、分かった」


そして小声で会話しながら。

次の王様の為に紙を閉じてから。

また智明の手の中でシャッフルした。

それから、王様だーれだ!、と合わせて言うと。


「.....私です」


「.....七水か」


俺は苦笑する。

そして七水は頬を掻いて.....そして、うん、と頷いて宣言した。

俺達に向いて、だ。


「じゃ、じゃあ.....4番が過去に好きだった人を告白」


「ん?4番?」


「.....俺じゃねーか」


また俺かよ。

王様ゲームの人数が足りないと思ったけど.....まさかこんな確率で当たるとは.....思いながら額に手を添える。

それから俺は.....番号を見てからみんなを見る。

みんな興味津々で俺を見ていた。


「.....そんなに見つめても期待するものは何も出ないぞ」


「そうなのか?初恋した事無いのか?」


「.....」


言われて少しだけ赤面した。

先程の来栖の内容が浮かんだせいで、だ。

するといち早く七水と栗谷がピンと反応する。


先輩!?初恋って!?


はーくん!!?


と言いながら俺に詰め寄ってくる。

俺は揺らされながら否定していると。

智明が、何か落ちたぞオイ、と紙をひろ.....あ。


「.....?.....何だこれ。.....ってオイ.....ラブレターじゃねーか?これ」


ワナワナ震える智明。

そして固まる栗谷。

それから.....俺をジト目で見てくる七水。

空気が瞬時に凍った気がした。


「み、みんな。落ち着け」


「.....先輩」


「.....何だ」


「ラブレターって誰からですか。栗谷先輩じゃ無いですよね。明らかに」


俺は冷や汗をかきながら直ぐにバッと飛んでから智明から奪い返そうとした。

のだがそれを栗谷と七水が止める。

それから智明は内容を、ふむふむ、と精査した。

この野郎!!!!!

そして俺を爽やかな笑顔で見てくる智明。


「来栖仲さんとは随分、仲が良いんだな?大博。ハッハッハ。.....シネ」


「.....」


「誰ですか!来栖さんって!初恋相手ですか!?!?!」


「はーくん!!!!!初耳だよ!!!!!何で!!!!!」


俺に詰め寄って来る二人。

あからさまに面倒臭い事になってきた。

俺は再び盛大に溜息を吐きながら.....頭を掻いた。

参ったな.....。

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